こんにちは。弁護士の林 孝匡です。宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。

突然ですが、みなさんは有給休暇を取得できていますか? 厚生労働省のデータによると、令和3年の働く人の有給取得率は58.3%です(厚生労働省 令和4年就労条件総合調査の概況より)。年々、上がってきてますが、約4割の人が有給をとれてないとも言えます。

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実は、有給取得を会社が妨害して裁判所が「社員さんに慰謝料50万円払え」と命じたケースなんかもあります。

この記事では、有給をとるための基礎知識をはじめ、ブラック事例などをお届けします。

■どんな場合に有給休暇が発生?

次の2つの条件を満たした場合に有給を取得できます(労働基準法第39条1項)。

・雇い入れの日から6カ月間、継続して勤務していること
・全労働日の8割以上出勤していること

上記条件を満たせば、有無を言わさず有給を取得できます。正社員の場合、最低でも10日の有給休暇が発生します。

■何日とれるの?

有給休暇の日数は、あなたの勤続年数や労働時間などによって変わります。休んでも給料がもらえる狂喜乱舞制度です。次の表を参考にして日数を把握しておきましょう。

  • 年次有給休暇の付与日数 ※厚生労働省 リーフレットシリーズ労基法39条(https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-3.pdf)より

■有給休暇の使い方はあなたの自由

ここでは、"有給とらせてくれないあるある"をお届けします。

上司:「有給とって何するんだ?」
林弁護士:「あなたに関係ないですよね。モルディブに行くのです」

これでOKです。有給をとる理由など、言わなくていいんです。最高裁が次のように言ってるからです。

年次有給休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは使用者の干渉を許さない労働者の自由
(全林野白石営林署事件:最高裁 S48.3.2)

本当に上記回答をする人はいないと思いますが、理由を説明しなくてもいいことを押さえておくと、交渉上有利な立場になるので頭に入れておいてください。

もう1つ、会社の承諾は不要あるあるをお届けします。

部長:「有給とりたい?どうしよっかなぁ~。キミの頑張りを見てから決めるよ」
林弁護士:「部長、冗談は顔だけにしてくださいね」

これでOKです。労働基準法39条の条件を満たしていれば「有給とりますね」でOKです。会社の承諾なんか、いりません。さっきの最高裁が言ってるからです。

会社の承認の観念を容れる余地はない (by 最高裁)

ここまで部長にケンカをうる人もいないと思いますが、部長のザレゴト無視で有給をとれます。取得できないときは、労働局へ申し入れするようにしましょう。

■時期変更を希望されたら…?

基本的に、あなたがとりたいときに取得できるのが有給休暇。ですが、会社が「その時期はちょっと……」と考えたときには、「その日は無理だからこういう時期にしてくれないかな?」とお願いしてくることはあります。これを時季変更権といいます。

【労働基準法 第39条5項】
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる

もし会社から「その日は無理!」と言われたら、こう切り返してみましょう。

あなた:「私が有給をとることで"事業の正常な運営を妨げる"のでしょうか? その日の私の労働が業務の運営にとって不可欠であり、かつ、代替要員を確保するのが困難であることについて詳細な説明をお願いします」

少し極端な言い方ではありますが、とにかく会社が「事業の正常な運営を妨げる」ことを立証するのって結構ハードルが高いんです。不当な時期の変更を求められたら労働局へ申し入れましょう。

■裁判になったケース

▼ 有給を妨害してきたケース

会社が「有給は原則として冠婚葬祭のときだけ認める」という違法なお触れを出した事件です。このお触れのせいで社員は有給を十分にとれず。裁判所は慰謝料50万円を命じました
(出水商事(年休等)事件:東京地裁 H27.2.18)

この会社は、社員が有給をとっていないのに給与明細に【残りの有給日数:ゼロ】と記載したり、なかなかのワンパクっぷりでした。

▼ 有給をとりづらくしていたケース

次は、会社が悪知恵を働かせて"有給をとりづらくするための策を講じていた"事件です。ザックリいうと以下のとおりです。

Xさん:「有給をとりたいのですが」

会社:「うーん、条件を満たしていませんね。次の条文を見てください」

【労働基準法 39条】
使用者は、その雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない

会社:「あなたは【全労働日】の8割以上出勤していないからです」

Xさん:「【全労働日】の8割以上出勤しているはずですが……」

会社:「土日などの休日も【全労働日】に入れて計算しました? ウチの就業規則ではそうなってるんですよ」

裁判所:「どんな計算方法だよ! この就業規則は無効。44万円支払いなさい」

有給をとりづらくするよう就業規則を定めていたんです。あくどいったらありゃしない。

■さいごに

有給をとりにくい方がいれば労働局に申し入れてみましょう(相談無料・解決依頼も無料)。有給は取得条件さえ満たしていればとれる可能性が極めて高いので、労働局の力を借りましょう。

ただ、労働局からの呼び出しを会社が無視することもあります。そんなときは社外の労働組合か弁護士に相談しましょう。

今回は以上です。私は働く方に知恵をお届けしているので「こんな解説をしてほしいな~」があれば伝えてくださいね。また次の記事でお会いしましょう!