「立つ瀬がない」という慣用句は、日常会話やビジネスシーンで頻繁に使うような表現ではないため、意味を知らないという方も多いかもしれません。
本記事では「立つ瀬がない」の意味や正しい使い方・例文を紹介します。また、類語・言い換え表現や英語表現についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
「立つ瀬がない」の意味とは?
まず、「立つ瀬」という言葉を辞書で引くと、以下のように説明されています。
たつ‐せ【立つ瀬】
(多く打消を伴って)自分の立場。面目。
『広辞苑 第七版』
つまり、これに打消しの「ない」を伴った「立つ瀬がない」は、自分の立場がない・面目ないという意味になります。顔向けできない・地位や名誉が失われてしまう、といった状況を言い表す慣用句です。
「立つ瀬がない」の使い方と例文
「立つ瀬がない」という言葉は、他者あるいは自分の行動や言葉によって立場や面目を失ってしまう恐れがある状況を言い表したいときに使うことができます。
実際にどのような使い方をするのか、例文とともに見ていきましょう。
ビジネスシーンで使う場合
ビジネスシーンでは、誰かの行動によって自分の立場が危ぶまれてしまう状況になることも少なくありません。自分の立場を守るためには、「これでは私の立場がない」「面目がつぶれてしまう」と主張する必要があります。
しかし、立場や面目という言葉を使って主張すると、「体裁や世間体を気にしすぎている人」という印象を与えてしまう可能性があることから、言いづらいと感じる方もいるでしょう。このようなとき、代わりに「立つ瀬がない」を用いて表現すると、直接的な言葉を使わずに伝えることができます。
【例文】
・営業部の意見を聞かずに企画を進められてしまうと立つ瀬がない
・新しいシステムを導入する前に相談してくれないと私の立つ瀬がない
・ここでプロジェクトを中断させられてしまうと立つ瀬がありません
・今の状況で担当を変えられてしまうと私の立つ瀬がありません
もちろん自分の状況だけでなく、下記のように他人の状況を言い表す際にも「立つ瀬がない」という言葉を使えます。
【例文】
・当初の計画通りにやってもらえないと彼女の立つ瀬がないね
・あんな言われ方をすると彼も立つ瀬がないと言っていた
目上の人に使える?
「立つ瀬がない」は目上の人に使ってはいけない言葉というわけではないものの、自分の立場や面目を守るための主張をする際は、少し慎重に言葉を選んだ方がいいかもしれません。例えば上司や取引先などに対してストレートに伝えてしまうと、場合によっては不快に思われる可能性があります。
状況にもよりますが、別の言い方で間接的に伝えることが可能なのであれば、まずはその方法を試してみるといいでしょう。間接的に表現したことで意図が伝わらなかったり、あるいははっきりと言うべき状況・毅然とした態度を取るべき状況だったりする場合は、立つ瀬がないを使って伝えても問題ありません。
なお、「立つ瀬がない」を目上の人に使う場合は「立つ瀬がありません」などと敬語表現に変えるのを忘れないようにしてください。
「立つ瀬がない」の類語・言い換え表現
ここでは、「立つ瀬がない」と似たような意味を持つ類語や言い換え表現を紹介します。相手や状況に応じて言葉を使い分けられるよう、あわせて確認しておきましょう。
面目を失う
名誉を傷つけられる
『広辞苑 第七版』
「面目を失う」は、名誉を傷つけられたり立場がなくなったりすることを表す言葉です。「立つ瀬がない」の言い換え表現として使うことができます。読み方は「めんぼくをうしなう」です。
【例文】
・この条件をのんでしまうと面目を失うことになる
・計画を中止されると面目を失ってしまう
面子が潰れる
「面子」とは体面や面目がなくなることを表す言葉です。こちらも「立つ瀬がない」の言い換え表現として使えますが、やや棘のあるニュアンスになるので、使う相手や場面に注意しましょう。なお、「めんし」や「めんこ」ではなく「めんつ」と読みます。
【例文】
・先輩の面子を潰さないように気を付けます
・ここで私が上司の面子を潰すわけにはいかない
立場がない
先述した通り「立つ瀬がない」は、立場がないという意味になるので、このままこの言葉を使うこともできます。慣用句は相手が意味を知らず、伝えたいことが伝わらない可能性もあるので、上手く使い分けましょう。
【例文】
・そんなに謝られてしまうと私の立場がない
・部下に頭を下げさせるようでは私の立場がない
「立つ瀬がない」の英語表現
「立つ瀬がない」を英語で表現したい場合は、「面目ない」「面目を失う」を意味する「lose face」などの表現が使えます。直訳すると「顔を失う」になるため、日本語と表現が似ていて覚えやすいでしょう。
【例文】
I lost face when the project was cancelled.
計画が中止になって私は面目を失った
「立つ瀬がない」を正しく使おう
「立つ瀬がない」の意味や使い方・例文、類語・言い換え表現などを紹介してきました。
「立つ瀬がない」は、自分の立場がない・面目ないという意味の言葉で、他者の行動によって立場や面目を失う恐れがある状況を言い表したいときなどに使えます。
ただし、場合によっては不快な印象を与える可能性もあるので、相手や状況に注意して使うようにしましょう。