里見香奈清麗に西山朋佳女流三冠が挑戦する大成建設杯第5期清麗戦五番勝負は、第3局が8月8日(火)に大阪府大阪市の「センタラグランドホテル大阪」で行われました。対局の結果、対抗形のねじり合いを89手で制した里見清麗がスコアを2勝1敗として防衛にあと1勝としました。

相振り飛車を回避

ともに1勝1敗で迎えた本局は先手の里見清麗が中央の歩を突いて始まります。得意の中飛車に構えたのは予想された出だしながら、後手が四間飛車から左桂を早めに跳ねたのを見て飛車を2筋に戻したのが臨機応変の趣向。駒組みをめぐる駆け引きのすえ、盤上は西山女流三冠の四間飛車に里見清麗が居飛車の急戦形で対抗する構図に落ち着きました。

居飛車に戻した里見清麗は、2筋からの角頭攻めを見せて後手の攻めを急かします。これを受けた西山女流三冠も左桂を交換して強気に応戦し、戦いはここから激しさを増すことになりました。飛車取りに銀を立たれた局面で、後手の西山女流三冠は6分の少考で飛車交換を決断します。

里見清麗が盤上制圧

手番を握った先手の里見清麗は持ち駒の飛車を竜に、自陣の角を馬にすることに成功。局面が落ち着けばこの大駒の働きで盤面全体を制圧できると見る大局観がよく、形勢の針はここから徐々に先手の方に傾き始めました。綾を求める西山女流三冠は8筋に桂を打って先手の舟囲いに狙いをつけますが、里見清麗の対応は冷静でした。

持ち駒を使って後手の桂跳ねを防ぐ手も考えられたところ、じっと6筋の歩を突いたのが里見清麗の受けの好手。自玉の可動域を広げながら盤上右方にいる馬の利きを自陣に通す一石二鳥の手になっています。終局時刻は15時52分、最後は攻防ともに見込みなしと認めた西山女流三冠が駒を投じて熱戦に幕が下ろされました。

勝った里見清麗は2勝1敗として防衛に向け前進。注目の第4局は8月23日(水)に関西将棋会館で行われます。

  • 里見清麗は局後、「竜と馬ができたところでは指しやすいと思った」と中盤戦を振り返った(写真は第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第7局のもの 提供:日本将棋連盟)

    里見清麗は局後、「竜と馬ができたところでは指しやすいと思った」と中盤戦を振り返った(写真は第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第7局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)