レンズメーカーであるタムロンが8月5日、さいたま市の鉄道博物館にて「鉄道博物館ナイトミュージアム撮影会&鉄道撮影マナー講座」をJR東日本の協力のもと開催しました。このイベントは、一般客のいなくなった閉館後の博物館でじっくりと撮影を楽しんでもらうとともに、鉄道撮影のマナーについて鉄道写真家とJR東日本の担当者がレクチャーするというもの。参加者数313名と大規模なイベントとなりました。ここでは、その様子と、イベントを企画したタムロン担当者のインタビューを紹介します。
鉄道ファンだけでなく、カップルや女性1人の参加者も
博物館への入場は17時30分。事前に受け付けを済ませた参加者が入館していきます。取材前、参加者のほとんどは男性で30代から50代ぐらいまでのバリバリの鉄道ファンで占めているのでは…と想像していましたが、実際そのような参加者はいるものの、恋人同士と思われるカップルや小学生ほどの子どもを連れた家族、お一人さまの女性など思いのほか多く、昨今の鉄道ブームを知らしめるものでした。
会場内に入ると、すぐにタムロンのレンズ貸し出しコーナーがあり、一眼レフ用およびミラーレス用のレンズを試すことができました。受付をしていた係員に聞いたところ、一眼レフ用のレンズを借りる参加者が思いのほか多く、一眼レフの根強い人気を改めて知ったとのこと。実際、一眼レフ用の貸し出し用レンズはほとんど出払っていましたし、博物館内で撮影を楽しんでいる参加者のカメラを拝見すると一眼レフが半数以上を占めているように思えました。
鉄道撮影マナー講座は、入場者を事前に3チームに分け順番に開催。会場は、博物館2階のスペースが使われました。講義を行うのは、泣く子も黙る鉄道写真の第一人者、広田尚敬氏と、実物から模型まで鉄道全般を撮影領域とする金盛正樹氏。1回目と3回目の講義は広田氏、2回目の講義は金盛氏が担当しました。
広田氏の講義では、自身が撮影した動画をもとに話は進められ、「マナーを守って撮っていれば、周りの皆さんがやさしい表情になる」と解説。また、金盛氏の講義では「安全な場所で撮っても迫力ある鉄道写真は撮れる」「みんなと違う写真を撮ってみる」「列車から離れた場所で空間を活かした撮影を楽しむ」など、安全な鉄道写真撮影のための提案がなされました。
また、いずれの回も鉄道写真家の講義のあとは、JR東日本の担当者より、鉄道写真を撮るときに留意してほしいことなどをメインにレクチャーが開催されました。講座の時間は、予定では各10分となっていましたが、広田氏および金盛氏の熱の入った講義などで、3回の講座とも予定時刻を過ぎての終了でした。
2時間ほどの「鉄道博物館ナイトミュージアム撮影会&鉄道撮影マナー講座」でしたが、博物館の入館料も含め参加費が無料ということもあり、満足度の高いイベントであったように思えます。
昨今、鉄道ファンのルールやマナーを無視した行為が何かと問題になっており、世間的に鉄道ファンに対するまなざしも厳しくなってきています。そのような折にこのようなイベントの開催は、とても意義のあるものに思えます。同社は社会貢献活動に積極的で、さいたま市の本社には自社社員のみならず近隣の住民も使える保育所も設置しており、今回のイベントもそのような一環と見ることができます。今後も定期的に、また日本全国で継続的に開催してほしく思えます。
鉄道撮影のマナーをより多くの人に広めたい
今回の「鉄道博物館ナイトミュージアム撮影会&鉄道撮影マナー講座」開催にあたり、企画を主催したタムロンの齋藤久美子氏に、講座開催の意図や今後の展開などを聞きました。
――まずは、このイベントの趣旨を教えてください。
齋藤さん:タムロンとして、鉄道写真コンテストを2008年から行っています。今年で16回目を迎えることができました。昨今、メディアで鉄道撮影のマナーに関するネガティブな情報が報じられることが多くなってきています。ほとんどの方はまじめにマナーを守って写真撮られていると思いますが、一方でそのような悲しい報道もありますので、鉄道にまつわる写真コンテストを開催し、さらに鉄道写真を撮るための交換レンズの開発および販売を行っている私どもとしては、そのようなことをしっかりと受け止め、先頭に立ってマナーの啓蒙をしていくべきではないかと考え、今回のイベントを企画しました。
――このイベントは今回が初めてですか?
齋藤さん:はい、今回が初めてとなります。これまで「マナーを守って撮影を楽しみましょう」というPRは鉄道写真コンテストを始めたときから広田尚敬先生監修のもと行ってきてはいますが、ホームページ上だけではなかなか見ていただける機会は多くはありませんでした。今回イベントをやることで、より皆さんの意識を鉄道撮影のマナーに向けていただき、またそのような情報に接していただける可能性が増えるかなと思い企画しました。
――鉄道愛好家のほかに、家族連れの参加者も多数見受けられました。
齋藤さん:今回、夏休み真っ盛りの8月に開催しましたが、季節的に撮影に出向かれることが多く、またイベント列車なども多数企画されますので、このタイミングでやることになり、結果家族連れの参加者も増えたのだと思います。今後、撮影を楽しんでいくであろう子どもも、小さいうちからこのような情報に接すれば、次世代育成ではないですけれども、いい機会ではないかと思います。家族連れも恋人同士でもウエルカムです。
――今回、鉄道博物館で開催した理由はありますか。
齋藤さん:鉄道写真コンテスト自体も地域貢献を目的に開催しているところがあり、タムロンの本社所在地と同じさいたま市にある鉄道博物館で開催することになりました。それと夏ですので、暑い外よりもエアコンの効いた屋内が適しており、さらにセミナーの施設も整っていることも大きいですね。参加者に関しては、当然のことながら関東圏からが多いのですが、それ以外の全国各地からお越しいただき感謝しております。
――今回の開催にあたりご苦労はありましたか?
齋藤さん:私どもは写真の交換レンズを販売しておりますので、新製品が出た時の体験会とか、そういった撮影イベントは数多くやっております。しかしながら、ここまで大規模の自社で企画したイベントというのは、実はそう多くはありません。参加される方の安全に配慮しながらも、それに勝るぐらいワクワクしながらイベントの準備をいたしました。
――最後に、今後このイベントを継続してやっていく予定はありますか。また、全国的に展開していく考えはありますか。
齋藤さん:現時点では、このようなイベントを今後継続的にやるかどうかというのは、まだ明確にはなってはいません。ですが、規模の大小は別にして、鉄道撮影のマナーに関する発信は引き続き行っていきたいと思います、また、全国開催に関しましては今後検討を行い、皆さんに知っていただく機会を少しでも多く作っていければと考えていますので、楽しみにしていてください。