日本HP60周年として日本でグレーターアジアのイベントを開催
2023年8月2日~3日の期間中、HPはグレーターアジア(中国とインドを除くアジア太平洋地域)におけるプライベートイベント「Future Ready, Better Together 2023」を開催しました。「Empowering a Future Ready Greater Asia with HP」をテーマに掲げており、ここではプレス向けに公開された2日の基調講演、QAセッション、展示から抜粋してお届けします。
冒頭あいさつを行った日本HP 代表取締役 社長執行役員の岡戸伸樹氏は、「HPは1963年にアジア地域の事業を日本で開始し、60周年という節目のタイミングでアジア地域の戦略を発表できるイベントを日本で開催できたのはうれしい」と開催の経緯を説明。
「この3年間で東京23区における在宅勤務者は17.8%から51.6%に増加しており、日本においてもハイブリッドワークが定着しており、エンドポイントセキュリティがより需要視される。またサステナビリティに対する関心の高まりや、生成AIの登場による新たな変化によって、日本HPに対する期待値も変化している事を肌で感じている」と挨拶しました。
続いてグレーターアジア地域担当マネージング・ディレクターのビネイ・アワスティ氏が登壇。Future Ready戦略は顧客を中心とした「ポートフォリオ」「オペレーション」「お客様とパートナー」という3つの柱に沿ったさまざまな取り組みで、日常生活に直接影響を与える体験を通じてエンドユーザーの期待を超えることへの施策を集約したものだと紹介。
グレーターアジア地域は今後の世界の伸びの50%をけん引し、地域も経済も多様でチャンスが大きいと言います。具体的にはアセアン6カ国で過去3年にインターネットユーザーが1億人も増加し、韓国はeコマースで世界4位、フィリピンにはアメリカやヨーロッパ向けの多数のコールセンターがある事を紹介。このグレーターアジア地域に対し今後3年間で10億ドル以上の投資を行います。
3年前のHPと異なる点として、HyperXとpoly、Teradiciの買収によってポートフォリオが充実したと説明。「エンドツーエンドでハイブリッドワークに対して最高のものが提供できるようになり、これができるのはHPだけである」と語りました。
チーフ・コマーシャル・オフィサーのデイブ・マコーリー氏はハイブリッド、セキュリティ、サステナビリティ、サプライチェーン、AIという5つのマクロトレンドを挙げ、HPとパートナーは、これらの分野において成長することができると説明しました。
「(HP製品のもう1つの柱である)プリンタもセキュリティ対応を行っている」と語っていました。ハイブリッドワークに関してはどこでもオフィス同様の働き方ができる製品を提供。
サステナビリティに関してはテクノロジー以上の需要があり、数年前は差別化要因だったが、現在は必須なものとしてとらえ深くコミット。HPとしては(温室効果ガスの排出が正味ゼロとなる)ネットゼロを2040年までに達成する目標を掲げていると紹介。
最後にサプライチェーンに関しても言及。コロナ禍やウクライナ問題で今まで行ってきたことが適用しないことを多くの人が理解し、サプライチェーンにおけるレジリエントやアジャイルの重要性を指摘しました。
続いて登壇したパーソナルシステムズ事業担当プレジデントのアレックス・チョウ氏は、「AIがすべてを変えた」と変化の速さを説明。一例としてNetflixが100万ユーザーを獲得するのに3年以上かかったのに対し、ChatGPTはわずか5日で達成したことについて言及しました。
パソコンによって生活が豊かになり、仕事、学習の中心にあり、HPは毎分1000台以上のPCを出荷することで人々が働き、学び、つながり、よりよく生きるための貢献を行っていると説明。
HPは人々のためにイノベーションを続けてエクスペリエンスやソリューション、サービスを届けていき、デザイン、サステナビリティで業界をリードしているといいます。
プリント担当シニアバイスプレジデント兼チーフ・オペレーティング・オフィサーのジョージ・ブラッシャー氏は、「プリンター業界にとって長い3年だった」と振り返りました。コロナ渦で在宅勤務が増えた結果、ホームプリンティングも増え、オールインワン製品でタンク市場(注:大容量インクタンクを備えたことで、印刷コストを下げた製品)にも参入しました。
レーザープリンタ市場においては新しいトナーを採用したTerraJetを紹介しました。カートリッジサイズを30%小型化し、パッケージも本体サイズも小さくすることでカーボンフットプリントを削減。
このクラスで最も高速プリントでエネルギー消費も少なく、オフィス向けの製品では80%のパーツが5分以内に交換可能とメンテナンス性にも配慮。さらに、セキュリティの観点でも大きな進捗があると言います。
ワークフォース・ソリューションズ担当プレジデントのデイブ・シュル氏は「ハイブリッドワークの浸透によってセキュリティの複雑性が増した」と指摘。
HPはバリューマネジメントオフィスという考え方で事業上の課題やワークフローや生産性を測定することで企業にバリューを提供する。そのためにテレメトリーを活用して、問題が顕在化する前に解決することにも取り組んでいる」と紹介しました。
ESGレポートグローバル責任者のリン・ローはサステナブルインパクトについて語りました。「気候変動は大きな投資リスクとなっており、会社も行動しなければならない時期に来ている」と説明。
5000名の親に対する調査では91%が気候変動に関心を持っており、53%が気候変動の影響を考えて多くの子どもを持つか考えるという結果を紹介しました。これらの方々は気候変動に関してアクションを起こしている企業を選び、気候変動に関してのクイックな対応としてサステナブルな製品を使う事を挙げています。HPはサステナブルにフォーカスしたAmplifyというパートナープログラムを用意しています。
また、HPは気候変動だけでなく人権と平等な教育も柱にしています。アジアは世界人口の半分を占めており、ここでの活動が重要であるといくつかの事例を紹介しました。
Project STOPという活動によって、オーストラリアで22,500ヘクタールもの森林を復元したほか、まだ人類の40%がインターネットにアクセスできないため、農村や遠隔地、女性に対して接続できるテクノロジーを提供しています。
日本ではKidsdoorと提携してeSportsセンターを開設、人を呼び込み表現のスキルを向上させる試みをしていると紹介していました。
パーソナルシステムズ・デザインおよびサステナビリティ担当シニアバイスプレジデントのステイシー・ウルフ氏は、サステナビリティのためのデザインは目標というよりもパッションになっていると説明し、指標としてのEPEAT GOLDが競合他社の2倍になっていると紹介しました。
素材のリサイクルという観点でいうと規模が重要で、リサイクルプラスチックに関しては2019年から開始し、現在は年間44.3Mキロ、いわゆるザトウクジラ1429頭分にまで成長。プラスチックが悪ではなく、責任ある形で循環型に使っていく事が重要だと言います。同様にマグネシウム、アルミニウム、鉄も再利用。
また、新ノートPC「HP14 Eco edition」も紹介。これは環境配慮を重視した地域向けに開発した製品で、再生アルミ、再生プラスチックを製品全体の25%で使用。また使用済の調理油を原料としたプラスチックを7.5%ボトムカバーに使用。さらに修理しやすい“サービサブル”な設計で長持ちすると紹介しました。
興味深かったのはその後のQAセッションで、サステナビリティだからと言ってコストが高くならないよう配慮しているとの事。量を多く使う事でサプライヤーと協力しコストを抑えていると言います。この辺こそまさに、「Better Together」といえる部分かもしれません。
一例として、オーシャンバウンドプラスチックの利用は現在は300以上の製品に展開していると紹介。また、リサイクル素材かわからないようにして、構造、依存性、寿命を犠牲にしていないと回答していました。
また、リユースのしやすさは修理のしやすいサービサブルなデザインが重要であり、循環性の高さは特にEU圏で重要視されているといいます。コンセプトモデルとして、「forever PC」というものがあり、マザーボードを変える、HDD/SSDを交換する、キーボードを変えるとすべてがツールレスでサービサブルになっていることを強調していました。
顔料多めな濃いトナー「TerraJet Technology」で印刷効率を引き上げるHP
基調講演とその後のQAセッションののちに、展示エリアの説明がありました。プリンタ分野ではレーザープリンタで面白い説明があり、(基調講演で触れていた)TerraJet Technologyという新型のトナーは、従来よりも多くの顔料を入れることでより少ないトナー量で従来同等の出力とより実物に近い色彩が得られます。
トナーカートリッジも小さくなるのでプラスチック量が減る、カートリッジが小さい分梱包材も減る、プリンタ本体も小さくなるということで、トナーのイノベーションによって環境負荷を減らすという試みです。
また、カートリッジにはより安全になったICチップを埋め込んだことによって、セキュリティを強化しているというのもポイントに挙げていました。
リサイクル素材に関しては元となる素材から加工途中、最終製品にする展示を行っていました。展示されていたのはポピュラーなフェルト、アルミニウムに加え、数年前から各社が利用を開始している「オーシャンバウンドプラスチック」。
変わり種として紹介されたサステナブル素材が、「コーヒー粉」と「調理廃油」です。どちらも本来ならば捨てられるものであり、環境的にはよろしくありませんが、前者はプラスチックの中に少量入れ、後者は精製したのちにバイオプラスチックを作って利用します。
ESGに対してはグレーターアジアの地図に具体例を入れたパネルを展示。日本では江戸川区にeSportsコーナーを設置することで、興味を示しやすいゲームで人を集めつつ、チームプレイのゲームによってコミュニケーション力を育むという取り組みが紹介されていました。