日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント’23』(毎週日曜24:55~)では、「被爆体験伝承者」の現状を追った『伝承の期限 消えゆく被爆者の声』(広島テレビ制作)が、きょう6日に放送される。
高齢の被爆者に代わって証言活動をする「被爆体験伝承者」。広島市が養成しているこの事業は、2年間の研修を経て「伝承者」として認められる。しかし、被爆者の老いは待ってくれない。大学生が伝承を志していた被爆者は研修半ばで急逝し、語り継ぐことはかなわなかった。今年、子や孫が被爆体験を語り継ぐ「家族伝承者」の活動も始まった。残された時間はそう長くはない。父から子へ、伝承の期限は迫っている。
井上つぐみさんは、広島大学医学部の4年生。被爆者医療に携わりたいと医学部へ進学し、原爆孤児の体験を語る川本省三さんの被爆体験の伝承も志す。しかし、原稿も完成間際だった今年6月、川本さんが急逝。伝承者になることができなかった。「こんなに急だとは思わなかった…」と、自分の甘さを実感し後悔が残った。川本さん亡き後、どうしたら彼の人生を伝えられるのか。彼女がとった行動は、川本さんの人生を自分の足でたどること、そして川本さんと近い経験を持つ内藤慎吾さんの伝承者を目指すことだった。
細川洋さんは、被爆者の父を持つ。昨年3月に高校の校長を退職。戻ってきた実家には、原爆で亡くなった叔母・森脇瑤子さんの遺品が多く残っていた。父や叔母の体験を語り継ぎたいと家族伝承者の制度を広島市に要望。今年ついに実現し、1期目の研修中だ。しかし、父に残された時間は長くない。1期生として家族伝承者になるまでの道のりを追う。
細川浩史さん(95)は、細川洋さんの父で、瑤子さんの兄。17歳の時爆心地から1.3キロの場所で被爆した。20年以上にわたり語り部として活動を続けてきたが、昨年8月に心臓弁膜症を患い、介護施設へ入院。そんな折、息子の洋さんから伝承の申し出を受けた。
ナレーションは、アニメ映画『この世界の片隅に』にも出演した声優の潘めぐみが担当する。