女優の川栄李奈が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、7月30日・8月6日の2週にわたって放送される『ひとりで産むと決めたから』。夜は歌舞伎町、昼はカフェで働き、シングルマザーになる覚悟で出産を決断する女性を追った作品だ。
妊娠・子育てに苦労しながらも、家族を含めなかなか周囲を頼ろうとしない姿に、共感したという川栄。今回の番組を通じて、少しでもその意識が変化する“お母さん”が増えることを願った――。
■周囲は反対も「絶対に産みたい」
今回の主人公・サキさん(30)は、2016年に念願だったカフェを新宿にオープンさせ、雑誌やテレビでも紹介される人気の店になった。しかし、コロナ禍で経営が急激に悪化。店を維持するために、夜は歌舞伎町のキャバクラで働き始めた。妊娠が分かったのは、その直後のことだった。
相手はひと月前に別れた男性で、周囲からも「産まないほうがいい」と出産を反対されるが、サキさんにとって「妊娠」は特別なことだった。実は、23歳の時に子宮頸がんになり、医師から「妊娠は難しい」と言われていたのだ。サキさんは「授かった命を絶対に産みたい」と、ひとりで産むことを決める。
■1回踏み出してみれば、助けを求められる
経済的に厳しい状況に立たされても、決して親に頼ろうとしないサキさん。その背景について父親は、彼女がかつて通った宝塚音楽学校の予備校の学費を払ってもらっていたことに負い目があると推測するが、川栄は「自分のプライドで周りに頼りたくないという気持ちは、私にも共通するようなところがあるので、すごく気持ちが分かりました。“自分が頑張らないと”という気持ちは、世の中のお母さんみんながすごく共感できると思います」と語る。それだけに、ナレーションを読むにあたっては、「“分かる!”という気持ちでした」とのことだ。
ではなぜ、様々な苦労を抱えながら周囲を頼ることができないのか。
「自分が無理をすればできてしまって、逆に“頼っちゃったな…”と思うほうが心労になるんです。家族には頼りますが、それも頼りすぎたと思うと『ああ、また頼んじゃったな…』となってしまうんです」
しかし、「そういう気持ちになるのは良くないというのは分かってるんです。そういう気持ちがあるから、産んだらお仕事を続けるのが難しいのかなといったイメージがあって、“子どもはまだ先かな”となる人が結構多いと思うので、少子化の問題にもつながっているんじゃないかなと思うんです」と、意識を改めることが重要であると指摘。
「もう頼れるものは全部頼って、使えるものを全部使って、本当にみんなで子育てをしていかないと難しいのかなと思います。誰かに頼るというのは、最初は自分のプライドもあって勇気がいることだと思うのですが、1回踏み出してみれば気楽に助けを求められると思うんです。サキさんだけでなく、お母さんたちみんながそれをできるといいなと思います」
■生まれた赤ちゃんが仮死状態…それでも前向きな姿
その思いは、今回の番組を通して改めて強くしたそうで、「テレビで発信してくれることによって、“頼らないで自分で子育てしないと…”という思いを抱えている人が、“私だけじゃないんだ”と気づけると思うので、とても心強いと思います」と、放送されることによる効果にも期待した。
川栄自身は、家族に助けてもらっているのだそう。「子どもが生まれてから、よりお母さんと連絡を取り合うようになりました。今回のナレーションに『赤ちゃんという魔法』という言葉があったのですが、本当にそのとおりだと思います」と、子どもが家族の絆をさらに深めてくれる存在であることを実感した。
後編では、生まれた赤ちゃんが仮死状態でNICU(新生児集中治療室)に入ることになるという衝撃的な展開が予告されているが、「赤ちゃんは、絶対安全に生まれるという保証はないですよね。だから産前産後も本当に不安だし、それがさらに1人という状況なのは、とても不安だったのではないかと思います」と想像。そんな中でも、前向きなサキさんの強さに「本当にすごいなと思います」と驚いていた。
●川栄李奈
1995年生まれ、神奈川県出身。『とと姉ちゃん』『いだてん~東京オリムピック噺~』『青天を衝け』『カムカムエヴリバディ』(NHK)、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ)、『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日)、『知ってるワイフ』『親愛なる僕へ殺意をこめて』(フジテレビ)といったドラマ、『センセイ君主』『泣くな赤鬼』『地獄の花園』といった映画などに出演し、女優として活躍する。9月1日からはドラマ『オレは死んじまったゼ!』(WOWOW)がスタート。