主要18作がそろった2023年夏ドラマ。今回もドラマ解説者の木村隆志が、主要新作の初回放送をウォッチし、俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコでオススメ作品を探っていく。

別記事(『VIVANT』『ハヤブサ』『最高の教師』…各局の強みを生かした大勝負 2023年夏ドラマ18作の傾向&オススメ5作)において2023年夏ドラマの主な傾向を【[1]各局のストロングポイントを生かした大勝負 [2]徹底した配信対策と成果】の2つと分析。

おすすめドラマとして、『VIVANT』(TBS 日曜21時)、『ハヤブサ消防団』(テレビ朝日 木曜21時)、『ばらかもん』(フジテレビ 水曜22時)、『初恋、ざらり』(テレビ東京 金曜24時12分)、『彼女たちの犯罪』(読売テレビ・日本テレビ 木曜23時59分) の5作を選んだ。

本記事では、それらを含む全作品のショートレビューと、目安の採点(3点満点)を挙げていく。


『真夏のシンデレラ』 月曜21時~ フジ系

出演者:森七菜、間宮祥太朗、神尾楓珠ほか
寸評:月9の恋愛モノは『海月姫』以来5年ぶりで、しかも海辺の群像劇。刑事や医療らの手堅いジャンルばかりだっただけに意義深い。近年は恋のライバルや三角関係の描写が避けられていただけにバチバチのバトルは新鮮な感あり。質うんぬんより夏らしさを追求した貴重な作品。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

  • 森七菜


『転職の魔王様』 月曜22時~ カンテレ・フジ系

出演者:成田凌、小芝風花、石田ゆり子ほか
寸評:各話の物語は丁寧につむがれ、登場人物の設定もリアリティは上々。ただ、ショック療法を貫く主人公のやり方は、ミッション成功続きでも共感を得るのは難しいか。転職というテーマは夏より春か秋向けの感がある。小芝の成長物語をもっとフィーチャーしたいところ。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

  • 成田凌


『シッコウ』 火曜21時~ テレ朝系

出演者:伊藤沙莉、中島健人、織田裕二ほか
寸評:執行官はありそうでなかった分野であり「公務員なのに出来高制」などの現実にリアルとドラマ性を感じさせられる。織田の助演とコミカルな演技はひさびさで40代以上には惹かれるポイントか。各話の物語に起伏が少なく、スケールや爽快感の点で物足りなさがある。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

  • 伊藤沙莉 撮影:宮田浩史


『18/40 ~ふたりなら夢も恋も~』 火曜22時~ TBS系

出演者:福原遥、深田恭子、安田顕ほか
寸評:大学生の妊娠と夢の実現、アラフォーの恋と仕事。テーマが混在しすぎた結果、記号的に描かれるばかりで心理描写のパートが少なく、視聴者の感情移入は今一歩。「女性の絆」というテーマはいいが、年の差が大きすぎるのか、芝居の問題か、心と距離の縮まりを感じづらい。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆】

  • 左から福原遥、深田恭子


『ウソ婚』 火曜23時~ カンテレ・フジ系

出演者:菊池風磨、長濱ねる、渡辺翔太ほか
寸評:火曜23時枠の第2弾は、視聴者層を選びそうな男女アイドル俳優のラブコメ。固定ファン層を狙うのはいいが、枠の印象が決まる時期だけに、キュンなどの軽い演出に頼らず、心理描写をしっかり描きたい。当作に限らずドラマの作り手たちが「ウソの結婚」に頼りすぎか。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆】

  • 長濱ねる 撮影:蔦野裕


『こっち向いてよ向井くん』 水曜22時~ 日テレ系

出演者:赤楚衛二、生田絵梨花、波瑠ほか
寸評:終盤の“女性目線での答え合わせ”は、ハマる人には深く刺さりそう。しかし、恋愛ベタな主人公へのダメ出しが一面的で「彼のようなアプローチが好きな女性もいる」というフェアな描き方が見られない。恋愛ノウハウという点でもネットで見られるものが多く目新しさはなし。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

  • 赤楚衛二