トヨタ自動車の新型「ランドクルーザー“250”」(ランクル250)はパワートレイン(PT)の種類が豊富だ。国・地域によって投入するラインアップは異なり、ランクル初のハイブリッド車(HV)は北米・中国で投入、日本ではガソリンエンジン車とディーゼルターボエンジン車を発売する。ランクルのPT戦略について担当者に聞いた。
ランクルのHV化は「超難題」
ランクル250のパワートレインは全5種類。ランクル初のハイブリッドシステムは2.4Lガソリンターボエンジンと8速ATとの組み合わせで、性能は最高出力330PS、最大トルク630Nmとパワフルだ。
「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」と評されるランクルは、厳しい環境下で長い距離を走ることもある。そういうクルマをハイブリッド化し、なおかつ耐久性を担保するのは、ランクル250発表会でプレゼンを担当したトヨタ 取締役・執行役員 デザイン領域統括部長 Chief Branding OfficerのSimon Humphries(サイモン・ハンフリーズ)さんにいわせると「ハッキリ言って超難題」だったそうだ。
具体的には、何が超難題だったのか。発表会場にいたトヨタのPT担当者による解説は以下の通りだ。
「長距離を走る、悪路を走る、そうした使われ方のランクルをハイブリッドにするには、部品の長距離保証が大事になります。走行中の振動が激しかったり、熱環境が厳しかったりもしますし、そこでハイブリッドを走らせようとすると、電気部品には従来以上に厳しい耐久基準を設けなければなりません」
ランクルで使うハイブリッドシステムには、すでに実績がある。2021年に北米でデビューした現行型「タンドラ」が、エンジンとトランスミッションの組み合わせは異なるがシステム的には同じハイブリッドを搭載しているのだ。タンドラのハイブリッドでは、将来的にランクルに搭載することを見越して耐久基準を設定し、電気部品やユニットの開発を進めたとのこと。このタンドラでハイブリッドの実績を積み、「ランクルに積んでも大丈夫」との判断に至ったそうだ。
各地の事情とPTの関係性
ランクルのHVは北米と中国に投入する。その理由を上記担当者は「これじゃないと、(北米と中国で)250は戦えない」からだとする。戦う相手はライバル車ではなく規制だ。環境規制をクリアするため、両地域にはHVのみを投入することとした。
日本で発売するランクル250のPTは2.8Lディーゼルターボエンジンと2.7Lガソリンエンジンの2種類。これは250の実質的な先代モデルにあたる「ランドクルーザー プラド」と同じラインアップだ。ディーゼルは「ランクルらしい走り」がプラドでも好評だった。2.7Lのガソリン車は、エントリーモデルとして値段が少し安く設定できる。「質実剛健」がコンセプトの250としては、手の届くPTの存在は「外せなかった」という。
48Vのマイルドハイブリッド車(MHEV)を投入する欧州と豪州は、もともとディーゼルエンジンの主戦場。実際、プラドもディーゼルエンジン車しか売っていなかったという。これらの地域も環境規制が厳しく、大きなクルマである250は「なかなかしんどい」ので、この先も継続的に販売していくためには「もう一段、(燃費性能の)高いシステムが必要だった」ことから、MHEVを投入することとした。「日本でもMHEVを売っては?」との問いには、「質実剛健といったときに、MHEVだとどうしても値段が高くなるので、まずはガソリンとディーゼルで行くことにしました」との回答だった。