俳優の中村倫也が主演を務めるテレビ朝日系ドラマ『ハヤブサ消防団』(毎週木曜21:00~)が現在放送中だ。今作は山間の小さな集落を舞台に描く戦慄のミステリー。スランプ気味のミステリ作家・三馬太郎が亡き父の故郷、“ハヤブサ地区”に移住し、地元の消防団に加入したことを機に連続放火騒動や住民の不審死などの怪事件に次々遭遇。真相を追ううち、集落の奥底にうごめく巨大な陰謀に突き当たる。現在第2話まで放送され、どこか不気味な本格ミステリー、演技派ぞろいの俳優陣、美しい田園風景が評判を呼び、視聴率や見逃し再生数は上々のスタートダッシュを切っている。
放送開始前に行われた制作発表会見では、中村が岡部たかし、梶原善、橋本じゅん、生瀬勝久ら消防団員を演じるベテラン俳優の“おじさま”たちに軽快なツッコミを入れる仲睦まじい様子も話題に。今回のインタビューでは、そんな会見の裏側や、現場の雰囲気、中村が考える“いい俳優”像について話を聞いた。
■第1話のワンカット4分間長回しの消火シーンに手応え
――まずは、今作の台本を読んだときの印象から教えてください。
『ハヤブサ消防団』というタイトルから、火事が起きて、火を消して、人を助けて、という消防団の活動がメインの作品なのかなと思ったのですが、もちろんその場面がありながらも、集落に大きな謎が隠されたミステリーが軸だというギャップに驚きました。池井戸先生自身も書いているうちに方向性が変わっていって、自分でも意外な作品に仕上がったと仰っているらしいのですが。
――池井戸先生は現場を見学に来られたんですよね。
初めてお会いできました。先生のご実家の岐阜のお話や食べ物のお話をして、仕事のお話は全くしていません(笑)。サインが入った原作本をいただきました。
――田園風景の映像美も今作の見どころです。暑い中でのロケが続いていると思いますが、撮影現場の雰囲気を教えてください。
皆さんとおしゃべりするのが楽しいですね。発見したのは、日陰って涼しいんだなということ。こんなに違うんだなって。
――(笑)。撮影の中で手応えを感じた瞬間を教えてください。
第1話のワンカット4分間長回しで撮った消火シーンはよくできたなと思います。水を汲み上げて、水圧を調整して、ホースから水を出して、という消火の流れを本当に自分たちでやった役者たちって、これまでの作品でもなかなかいないんじゃないかなと思うので、胸を張れる出来栄えになったなと。ただ、自分たちで手応えを感じたというときほど空回りしてしまうものなので、まっさらな気持ちで一つひとつのシーンを積み上げていくようにしています。
――撮影や役作りにおいて、中村さんから提案したことがあればを教えてください。
現場にはヒルがいるので、長ズボンを靴下にインしたいと言いました。衣装部はかっこよく着てもらうのが仕事だから直そうとするのですが、「でも、ヒルがいるんです」「夏の山に入るんだから普通インしない?」と主張して(笑)。ヒルのことばかり提案しています。
■川口春奈にまつわる“事件”「ヒロイン、初日にヒルに噛まれる」
――川口(春奈)さんもヒルに噛まれたとのことですが、そのときは騒ぎになりましたか。
初日だったのですが、そりゃ騒ぎになっていましたよ。なかなかないですもん、「ヒロイン、初日にヒルに噛まれる」って。
――ニュースの見出しみたいですね。
春奈ちゃんは噛まれたこともネタにしてくれていますけどね。
――先日、川口さんにインタビューした際、中村さんの座長ぶりについてお尋ねすると「中村さん自身が気さくで自然体だから、皆が自然体でいられる和やかな現場になっています。私も緊張したりプレッシャーを感じたりせずにお芝居ができて、すごく助かっています」と話しておられました。
いや、もともと春奈ちゃんは緊張するタイプじゃないでしょ(笑)。でも、気を使わせてそんなこと言わせてしまって……。
――いえ、むしろ尊敬しているポイントとして、中村さんの「スタッフさんにもキャストさんにも気を使わせないところ」を挙げていました。
すごい、よく見てくれてる。そうなんですよ!
――(笑)。気を使わせないために心がけていることはありますか。
自分が気を使いすぎないことですね。気にかけるけど、気を使わない。気を使いやすい人って、人が気を使うと察知するじゃないですか。そうすると気を使い返しちゃうので、誰かが気を使わない状態でいることで、気を使う連鎖が止まって風通しが良くなるんじゃないか、皆がより早く心を開ける現場になるんじゃないかという思いがあって。