米AMDは8月3日、Radeon PRO W7600とW7500を発表した。今年4月にはハイエンドのW7900とW7800を発表しており、これに続くミッドレンジ向け製品となる。これについて事前説明会の内容を元にご紹介したい。

マーケット全体としては、W7900とかW7800の様なハイエンドはごく一部にとどまり、一番数量がでるのはミッドレンジ($350~$950)という事になる。今回のW7600とW7500は、まさにこのミッドレンジをターゲットとした製品である(Photo01)。W7500は$429、W7600は$599という価格付けになっており、丁度このミッドレンジの上限と下限に近いところをカバーする格好である。

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    Photo01: ミッドレンジに次ぐサイズなのがエントリ向けで、おそらく次はこのエントリ向け製品が用意されるのではないかと思う。

W7600はフルサイズながら1スロット厚、RDNA 3ベースの32CU構成。メモリが8GBというのがRadeon Proシリーズとしてはやや少なめに感じるが、性能的には悪くない。構成的にはRadeon RX 7600と同じNavi 33である。ただRadeon RX 7600のTBPが165Wなのに対し、Radeon Pro W7600は130Wに収まっている辺りは、動作周波数を下げた形でになっていると思われる。そして同じNavi 33を使いつつ、CU数の削減とおそらくは動作周波数を更に下げる事で、TBPを70Wまで下げたのがRadeon Pro W7500(Photo04)となる。

  • Photo02: W7500の方はTBPが70Wで、これは補助電源無しで駆動できる範囲である。厚みも1slotなので、Slim Desktopなどに利用が容易な構成だ。

  • Photo03: CU数やメモリの容量/帯域などは完全にRadeon RX 7600と同じ。FP32で20TFlopsというところから、Boost Frequencyは最大2440MHz辺りになっていると思われる。

  • Photo04: メモリの速度は11Gbps(W7600は18Gbps)に落とされている(バス幅は128bit)のまま。Boost Frequencyは恐らく1675MHzあたりと想像される。

これと、既存のRadeon Pro W6600との性能を比較したのがこちら(Photo05)。W6600と同程度の性能で良ければW7500が価格と消費電力を下げた形で提供され、逆に同じTBPと価格であれば、W7600が性能をほぼ倍増する格好で投入されている。あとはユーザーのニーズにあわせて選べる、という訳だ。この3製品でのSPECViewPerfの結果がこちら(Photo06)。SPECViewPerfではほぼOpenGLでの描画性能のみが測定されるので、こうなるとGPU本来の性能の殆どは過剰であり、結果はほぼメモリ帯域で決まる事になる。Overallの結果はまぁ妥当、と言える。

  • Photo05: RDNA 2ベースのW7600と比べると、CUあたりの性能が倍増したW7500/W7600では「基本的には」大きく性能が伸びている。

  • Photo06: 実際にはアプリケーションによって使うOpenGLのAPIに多少の違いがあるので、単純にメモリアクセスだけという訳でも無いのだが、大きく見るとほぼメモリ帯域の差として良いかと思う。

では競合製品との差は? ということでNVIDIAのRTX A2000、及びT1000(Photo07)をターゲットに性能比較の結果も示された(Photo08~10)。

  • Photo07: T1000は2021年6月、RTX A2000も2022年4月の発売とどちらもやや古い製品ではあるが、一応どちらも現行製品であり、昨今NVIDIAはもっと上位に注力している関係で、価格帯を考えると妥当な比較とは言える。

  • Photo08: 3D CAD類のベンチマーク。RTX A2000の結果を100%として示している。概ねRTX A2000とW7500が良い勝負で、W7600はRTX A2000を圧倒している。

  • Photo09: エンコード系ベンチマーク。RTX A2000が基準なのは同じく。ここでもW7500がRTX A2000といい勝負(価格を考えれば十分上回っていると言える)だし、W7600は明らかに性能が高い。

  • Photo10: 3D系ベンチマーク。ここではもうT1000が話にならないというか、特にRay Tracingでは専用アクセラレータを持たないT1000が低いのは致し方ないところ。逆にW7500とW7600はA2000と十分競合できる製品になっている。

Radeon Pro W7600及びW7500は今年第3四半期中に発売開始の予定である。