日本将棋連盟は2023年8月3日、『将棋世界2023年9月号』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)を発売した。
渡辺明九段が王位戦を語り尽くす
9月号では現在、棋界最注目の藤井聡太王位VS佐々木大地七段が激突する「伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦七番勝負」の第1局を渡辺明九段の解説でお届けする。藤井聡太をもっともよく知る男が、最高峰の戦いを余すことなく語り尽くした14ページは将棋ファン必見のコンテンツだ。自らも含めて現実を俯瞰する渡辺九段の言葉は重い。
(以下、本誌より抜粋)
僕自身、対藤井戦においては、つい自爆してしまうような負け方もありました。思えば「羽生マジック」も相手の自滅を引き起こすという側面はあったのだと思います。相手をそういうおかしな精神状態に追い込めるのは、羽生九段と藤井王位の2人だけが到達した境地ですね。トッププロでも圧倒的に勝つ人でないと、相手は信用してくれません。僕は最大値が三冠ですけれど、その程度では相手は全然信用してくれない世界なんですよ。
でも、こういうのって負けた側が「それじゃあ、今度当たったら相手を信用しないで指すぞ」と心に決めたとしても、その通り次から盤面のみに集中して戦えるかと言えば、そんな簡単な話じゃないですよね。一局の将棋でも展開によってどう戦うのがベストなのかはそのつど違ってきますし、番勝負だとスコアや流れ次第で考え方は変わるわけですから。
(押沢玲〈伊藤園お~いお茶杯 第64期王位戦七番勝負第1局『心を強く保つ難しさ』〉より)
愛情ゆえの厳しい叱咤 師弟 鈴木大介九段×梶浦宏孝七段
将棋界の師弟関係は、濃密な関係性もあれば、比較的ドライな関係もありさまざまだが、今回の特別企画「師弟」鈴木大介九段×梶浦宏孝七段はとりわけ強い結びつきを持つ。愛情があるからこその厳しい言葉は、心に強く響く。
(以下、本誌より抜粋)
梶浦 結果……、そうですね。ただ技術がないと結果も出ない気がして。鶏が先か卵が先かじゃないですけど、どっちかというと、自分は内容を大事にしてしまいます。
鈴木 大体負けている人って、そう言うんだよ。勝っている人は、勝ってから内容がついてくる。タイトル戦に出ている奴は、すぐにタイトル戦の実力がつくけど、出ていない奴に限って力をつけてからとかって言う。違うんだ。渡辺さんだって、最初に竜王に挑戦したときは、森内さんに実力で足りているとは誰も思わなかった。下馬評なんてひどいものです。でもそれを若さの勢いで覆して、1年、2年と防衛している間にどんどん力をつけていった。出たいじゃなくて、具体的な青写真が描けているのかどうか。聞きたいね、棋士としての最終目標を。
(野澤亘伸〈師弟Vol.11鈴木大介九段×梶浦宏孝七段『棋士人生の青写真を描け』〉より)
藤井聡太を追い詰めた「村田システム」とは何だ?
ネット上で大きな話題を呼んだ第71期王座戦準々決勝、村田顕弘六段VS藤井聡太竜王・名人の戦いは、2つの大きな出来事があった。村田六段が見せた渾身の序盤戦術「村田システム」と終盤で藤井竜王・名人が見せたまるで毒まんじゅうのようなタダ捨ての妙手だ。 9月号はその村田システムを対局者本人である村田六段が読み切り講座で、また「毒まんじゅう」にまつわる話を「教授」こと勝又清和七段が紹介する。
ほかにも村山慈明八段が語る王位戦第2局、第94期ヒューリック杯棋聖戦、大成建設杯第5期清麗戦などのタイトル戦、谷合廣紀四段、脇田菜々子女流初段のインタビュー、先手角交換四間飛車をテーマにした戦術特集など、充実の内容だ。Amazonの販売ページはこちら。『将棋世界2023年9月号』
発売日:2023年8月3日
価格:870円(本体価格791円+税10%)
判型:A5判244ページ
発行:日本将棋連盟