KDDI/沖縄セルラーは7月31日、7月3日より新たな5G周波数である2.3GHz帯の運用を開始したことを発表した。1つの周波数帯を複数の事業者が使い分ける「ダイナミック周波数共用」を運用する国内初の事例となる。2026年度末までに全国で8,300局超の基地局を設置する予定としている。
2.3GHz帯は、放送事業者がスポーツイベントなどの取材現場から映像・音声を伝送する際に利用されている周波数帯。その利用の性質上、利用される時間や場所が一定ではないことから、電波の有効活用の観点から、2.3GHz帯をより柔軟に共用する手法が議論されてきた。KDDIとKDDI総合研究所は、2019年から1つの周波数帯を複数の事業者が場所や時間帯などによって使い分けるダイナミック周波数共用の技術開発を行い、放送事業者と携帯電話事業者がこの周波数帯を効率的に共用することが可能であることを示した。これを受けて、2022年5月にKDDI/沖縄セルラーは総務省から2.3GHz帯の割り当てを受けている。
2.3GHz帯におけるダイナミック周波数共用の仕組みは、以下のようなもの。
まず、優先して2.3GHz帯を利用できる一次利用者(=放送事業者)が、電波を利用する時間や場所などの情報をデータベースに登録する。そのデータベースに基づき、ダイナミック周波数共用の判定システムが地理的条件などを踏まえて電波干渉の有無を自動で計算し、二次利用者であるKDDIと沖縄セルラーが基地局からの電波発射/停止を制御する。基地局から2.3GHz帯の電波が停止されても、ほかの周波数帯と組み合わせてキャリアアグリゲーションで利用するため、ユーザーは継続して通信が可能だという。
従来の周波数共用においては、利用する時間や場所を事前に決めて運用する必要があったため、双方の事業者がともに電波を利用しない時間・場所が生まれることもあった。ダイナミック周波数共用では複数の利用者も利用時間・場所を全体管理することで、この周波数帯の電波を柔軟かつ効率的に共用することを可能としている。
ダイナミック周波数共用の運用にあたっては、ダイナミック周波数共用を実際に運用する上での課題について、放送事業者との間で議論を重ね、ルールを整理してきたという。また、24時間/365日の運用を行う一般的な携帯電話基地局に対し、ダイナミック周波数共用のためには高い頻度で電波の発射と停止を繰り返す必要がある。こういった従来にはなかった運用を実現するため、ダイナミック周波数共用の判定システムによる電波干渉有無の情報を基に利用者に影響が出ない形で電波発射と停止を自動で行う、2.3GHz帯基地局自動制御システムを開発・導入している。これにより、高い頻度で発生する電波発射・停止を確実に実施するとともに、作業時間の短縮・作業負荷の低減により効率的な運用が可能になったという。