マネ―スクエアのチーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話しします。今回は、米国の金融政策について解説していただきます。


米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は、インフレの高騰に対して昨年3月から積極的な利上げを続けてきましたが、利上げの打ち止めに近づいているかもしれません。


11回目の利上げで政策金利は5.25-5.50%へ

FRBは7月25-26日に当面の金融政策を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)を開催。そこで2会合ぶりに0.25%の利上げを決定しました。前回6月の会合では、それまで10会合連続で続けてきた利上げを行わず、政策金利を据え置きました。ただし、それは打ち止めではなく、「スキップ(1回飛ばし)」との位置付けだったようです。今回利上げが行われたことで、それが証明されました。

今回の利上げによって、政策金利であるFFレート目標水準は5.25-5.50%となりました。これは2008年リーマンショック直前の水準を上回り、IT株バブルが崩壊した直後の2001年以来の高水準です。

9月以降の利上げの可能性は残る

FOMCの結果は声明文で発表され、多くの場合、そこには大まかに金融政策の先行きを示唆するフォワードガイダンスも示されます。今回のフォワードガイダンスは、「追加的な引き締めが適切になるかもしれない程度を見極めるために、利上げの累積効果、効果発現までのタイムラグ、さらに経済・金融情勢を考慮する」でした。これは前回と同じであり、FOMCのスタンスが利上げ方向にやや傾いていることを示しています。9月あるいはそれ以降に追加利上げの可能性があることを示しています。

金融市場には利上げ打ち止め観測

インフレ率は22年夏をピークに徐々に伸び率が低下してきました。原油などエネルギー価格の下落に起因しており、エネルギーや食料を除くコアインフレは高止まりしていました。しかし、ここ数カ月はコアインフレも鈍化が鮮明になりつつあります。

そうしたことから、金融市場ではFRBの利上げは打ち止めか、あるとしてもあと1回との見方が支配的になっています。OIS(翌日物金利スワップ)というツールを用いて、金融市場が織り込む追加利上げの確率をみると、次回9月のFOMCでは2割程度、その次の11月のFOMCまでをみても、4割程度です。つまり、金融市場が織り込むメインシナリオ(確率5割超)は、今回7月の利上げをもって打ち止めということになります。また、24年春に利下げを開始する確率が5割超織り込まれています。

米国はリセッションを回避できるか

FOMC後の記者会見でパウエル議長は、「スタッフはもはやリセッション(景気後退)を予想していない」と述べました。FOMCの翌日に発表された4-6月期の実質GDP(国内総生産)は前期比年率2.4%の増加となり、市場予想(同1.8%の増加)を上回りました。同時に発表されたその他の経済指標も総じて堅調でした。景気堅調が続けば、インフレ圧力が根強く残り、FRBは想定以上の利上げを迫られるかもしれません。それとも、昨年来の大幅な利上げがタイムラグをもって景気を大きく減速させ、金融市場の観測通りこのまま利上げ打ち止めとなるのか。今後の経済データを注意深く見守る必要がありそうです。