熱中症対策をする上で欠かせないのが"水分補給"です。凍らせたペットボトルや、マイボトルにお茶などを入れて持ち歩く方も多いですよね。

今回は医師の甲斐沼孟先生に、「熱中症対策としての水分補給」を教えていただきました。熱中症対策に適した水分量、飲用タイミング、水分温度などをまとめていますので、参考にしてみてください。

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■「冷えた飲み物」と「常温の飲み物」熱中症対策に適しているのはどっち?

水分補給をするときは、飲み物の温度にも気をつける必要があります。

夏の暑い時期やスポーツなどで体温が上昇しているときは冷たい飲み物が欲しくなりますが、冷たい飲み物をたくさん摂取すると、必要以上に身体を冷やして自律神経が乱れて心身の不調をきたしやすくなりますし、胃腸にも一定の負担を与えてしまいます。

熱中症などで体をすぐに冷やしたい場合には冷たい飲み物が適していますが、常温水の方が体への吸収が良好であり、日常の小まめに行う水分補給は体温に近い常温の飲み物を飲むことが推奨されています。

■熱中症対策の水分補給は「どのような飲み物」が適切?

<日常的な水分補給には麦茶やイオン水を>

水分補給として飲み物を選ぶ場合は、アルコールやカフェインといった成分が含まれていない麦茶やイオン水などの飲料が適しています。

コーヒーや紅茶、緑茶といった飲み物に含有されているカフェイン成分には利尿作用があり、尿として水分が排出されやすくなります。過剰な摂取をしないように十分注意しましょう。

また、アルコール飲料を摂取することで、水分補給もできていると考える人もいるようですが、間違いです。アルコールを飲むと、摂取した水分量以上に尿として水分が排出されますし、アルコールを分解する際にも水分を失うため、身体の中の脱水状態をさらに進行させて悪化する恐れがあります。アルコールを飲む場合は通常より多めに水分を摂取するように心がけましょう。

<運動時は経口補水液がおすすめ>

麦茶は普段の水分補給には適していますが塩分がほとんど含まれず、運動して汗を大量にかくような状況においては、塩分が不足する可能性も考えられます。

夏場など暑い時期に運動をして体温が上昇している場合は、水分だけでなく塩分も失われています。短時間で多量の汗をかいた場合は、塩分を含む電解質バランスが整っている経口補水液を飲むのが好ましいと考えられています。

日本スポーツ協会では熱中症予防の水分補給として、0.1~0.2%の食塩(ナトリウム40~80mg/100ml )と糖質を含んだ飲料を推奨しています。特に、1時間以上続けて運動をする時は4~8%の糖質を含んだものを摂取して、血中のナトリウム濃度をやや高く維持することが必要です。

糖を含んだ飲料が推奨される理由としては、腸管での水分吸収を促進することが考えられていて、主要な糖であるブドウ糖は、腸管内でナトリウムが同時にあると速やかに吸収されますし、それらに引っ張られて自然と水分も吸収されることになります。

ただし、市販のスポーツドリンクを水分補給代わりにする場合は糖分も多く含まれます。ある程度の塩分を補給することはできますが、カロリーオーバーにならないように飲みすぎには注意しましょう。

自分で調製するには1リットルの水、ティースプーン半分の食塩(2g)と角砂糖を好みに応じて溶解して作製することも可能です。

■水分補給のタイミングや、適切な摂取量は?

日常におけるおすすめの水分摂取の適切なタイミングとして、起床時、就寝前、運動中やその前後、入浴前後、飲酒時などが挙げられます。

<起床時の水分補給>

人間は就寝中にも呼吸や皮膚からたくさんの水分を失っています。起床時にコップ一杯の水を飲むだけでも、寝ている間に失った水分を補給することができるので、毎朝の習慣として取り組んでみましょう。

<就寝前の水分補給>

就寝中の脱水状態を予防するためには、就寝前の水分補給もおすすめですが、就寝直前に大量の水分を摂取すると夜間の尿意で睡眠の質が悪化することも懸念されます。飲む量はコップ1杯程度を目安にしておきましょう。

<運動時の水分補給>

実際に行う運動の種類や強度などにもよりますが、運動中は汗などで通常よりも体内の水分を失う量が多くなりますので、およそ15~30分に一度、200~250mL程度を目安に水分補給することを心がけましょう。

<入浴時の水分補給>

入浴中に失われる水分量は約800mLといわれており、入浴時間やお湯の設定温度によってはさらに多くの水分が失われることも考えられます。半身浴やサウナなどを含めて入浴時の前後では、意識的にしっかりと水分を補給することが重要です。

<ダイエット中の水分補給>

ダイエット中は、より水分補給を意識する必要があります。

ダイエットのために運動をしていると、普段より汗をかきやすくなり水分や塩分を失いがちですし、食事制限をしていればさらに食事で摂れるはずの水分量も減ることで熱中症の発症リスクも高まります。ダイエットしている際にも無理な食事制限はせずに、バランスのよい食事と水分を摂取しましょう。

監修ドクター: 甲斐沼 孟(かいぬま まさや)先生

TOTO関西支社健康管理室産業医。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医/大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 /国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 /大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 / 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長


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