第82期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、2回戦の永瀬拓矢王座-佐藤天彦九段戦が7月27日(木)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、横歩取りの将棋を93手で制した永瀬王座が今期A級での初勝利を挙げました。
青野流の最新研究
先手となった永瀬王座が飛車先の歩を突いて対局が始まります。後手の佐藤九段が角道を開けたのち、本局の戦型は横歩取りに落ち着きました。永瀬王座が近年流行の青野流を選択したのに呼応して佐藤九段は自玉を中原囲いに収めます。続いて2筋に歩を打ったのは佐藤九段用意の一手。先手の飛車を不安定な位置にとどめる意味合いです。
盤上は佐藤九段と豊島将之九段との間で指された今年3月の実戦例と同一の手順をたどりますが、永瀬王座が27手目に9筋の歩を突いたことで本局はすべての前例を離れます。絶えず大駒による大技に警戒を求められる展開を前にして両対局者とも長考合戦が続くなか、手番を得た永瀬王座がさらに9筋の歩を突っかけたことで本格的に戦端が開かれました。
永瀬王座が体力勝ちで1勝目
後手の桂頭に着目したこの端攻めが鋭く、局面は永瀬王座が先手番の利をうまく具体化したまま終盤戦へ。盤面左方で行われた飛車角総交換ののち王手銀取りの飛車打ちで駒損を回復したのは後手の佐藤九段にとっての好材料に思われましたが、永瀬王座はここから的確な反撃を用意していました。後手陣に飛車を打ち込んで王手したのがその手始めです。
自玉を守るためやむを得ず銀を打った佐藤九段に対し、永瀬王座はじっとこの竜を敵陣から引き上げてギアを落とします。後手の持ち駒が乏しいのに着目して持ち駒の差という「体力勝負」に持ち込んだこの大局観がよく、形勢は永瀬王座がリードを広げることに。永瀬王座の駒台には桂香合わせて4枚がひしめいています。
終局時刻は23時33分、この桂香を後手の中原囲いめがけて直撃させた永瀬王座が佐藤玉を寄せきって今期順位戦での初勝利を挙げました。勝った永瀬王座、敗れた佐藤九段ともに1勝1敗となっています。3回戦では永瀬王座は斎藤慎太郎八段と、佐藤九段は中村太地八段と顔を合わせます。
水留 啓(将棋情報局)
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