ビジネスシーンで見聞きする機会の多い「ご回答」ですが、いざ自分が使うとなると、正しい敬語表現はどうすればいいのかなど、自信が無い人も多いでしょう。
本記事では「ご回答」の詳しい意味や正しい敬語表現について分かりやすく解説。回答する人別(相手/自分)の例文と使い方、注意点や「ご返答」「ご解答」との違い、その他の言い換え表現もまとめました。
「ご回答」の意味とは
「ご回答」とは、質問や要求に対して答えること、またはその答えのことを意味する「回答」を丁寧にした言葉です。
「回答」「ご回答」は、あくまでも相手からの問いや要求に対して答える際に使う言葉です。相手側からの問いかけがないときに、自分から何かを言う際に使うことはできません。
また、「ご回答」の「ご」はケースによって尊敬語・謙譲語・丁寧語のいずれにもなり得ます。
「ご回答」は敬語表現?
「ご回答」は敬語であり、誰の行為を主軸にするかによって、尊敬語なのか、謙譲語なのかが変化します。また、ただ丁寧に述べるだけであれば丁寧語にあたります。詳細を見ていきましょう。
目上の相手の行為について述べる場合は尊敬語になる
尊敬語とは、目上の人を敬い相手を立てる気持ちを表す言葉です。そして目上の人の行為を主軸にした文章の場合、「ご回答」は尊敬語になります。
「ご回答」を含む尊敬語の文章として代表的なのは「ご回答くださる」などです。「くださる」は「くれる」の尊敬語です。
相手が自分などに対して回答をする場合に、相手のことを高める意味の表現です。
実際に使用する場合は、「ご回答ください」「ご回答くださいますか」などのように、依頼の形で使うことが多いでしょう。自分の質問や要求に対して、相手に回答してもらいたい場合に利用します。
自分の行為について述べる場合は謙譲語になる
謙譲語とは自分がへりくだることで相手を立て、敬意を表す言葉です。そして自分の行為を主軸にした文章の場合、「ご回答」は謙譲語になります。
「ご回答」を含む謙譲語の文章として代表的なのは「ご回答いたします」などが挙げられます。回答する側である自分をへりくだった表現です。
また「ご回答いただく」もよく使われます。「いただく」は「もらう」の謙譲語です。
前述の「ご回答くださる」と同様に、「ご回答いただく」も相手が自分などに対して回答する場合に使用しますが、回答する側と、回答を受け取る側の、どっちの観点で見ているかが違います。
前述の「ご回答くださる」は回答する側の観点の言葉であり、回答する側である相手を高めているので、尊敬語です。
一方「ご回答いただく」は回答を受け取る側の観点の言葉であり、回答を受け取る自分をへりくだっているので、謙譲語となります。
「回答するのが相手なら尊敬語、回答するのが自分なら謙譲語」という考え方は誤りです。その文章の主軸は誰かで考えないと、尊敬語か謙譲語かを間違えてしまうので気を付けましょう。
なお「ご回答いただく」も実際に使用する場合は、「ご回答いただけますか」などのように、依頼の形で使うことが多いでしょう。相手に回答してもらいたい場合に利用します。
ただ丁寧に述べる場合は丁寧語になる
「回答」という言葉を、ただ丁寧にいう場合の「ご回答」は丁寧語となります。
後ろに続ける言葉が重要
「ご回答」を単体で使うことはほとんどなく、その後に続く言葉がキーになります。
前述のように「ご回答ください」「ご回答いたします」などと続けることで、相手への敬意を正しく示し、自分の意図を伝えることができるのです。
回答するのが相手である場合の「ご回答」の正しい使い方・例文
ここからは相手が答える側のときに「ご回答」を使用する場合について、具体的な例文を交えつつ使い方を解説します。
「◯◯の件につきまして、ご回答くださいますよう、お待ちしております」
この例文は、自分が○○の件について質問したり、要求をしたりしており、それについての回答を求める文章です。
急いでいない場合は特に期限を伝えずに、この例文のように「お待ちしております」とだけ付けることで、相手を急(せ)かさずに回答を求められます。
「◯◯の件につきまして、ご回答の程、よろしくお願いいたします」
この例文も、自分が○○の件について質問したり、要求をしたりしており、相手に対してその回答を求める例文です。
「~の程(ほど)」は、言い回しに柔らかさを持たせる効果がある言葉です。直前の名詞である「回答」が断定的、強制的ではなくなり、丁寧な印象になります。
特に目上の人に対して丁寧に接したいときに使える、便利な表現です。
「今週中にご回答いただければ幸いです」
「もらう」の謙譲語である「いただく」を使った例文です。こちらも目上の人に対して、回答するように求めています。
期限を設けたい場合は、例文のように明確に期限を伝えましょう。もし期限が短めの場合などは、「お忙しいところ誠に恐縮ですが」などのクッション言葉を文頭に付けるといいでしょう。
「◯◯の件につきまして、ご回答ありがとうございます」
この例文は、回答をもらった後に、回答してくれたことに対して感謝を伝える際に使います。
「ご回答くださりありがとうございます」「ご回答いただきありがとうございます」と表現することも多いです。
回答するのが自分である場合の「ご回答」の正しい使い方・例文
ここからは自分が答える側のときに「ご回答」を使用する場合について、具体的な例文を交えつつ使い方を解説します。
「その件につきましては、私からご回答いたします」
この例文では、相手から質問や要求があった件について、自分が回答するということを伝えています。
「ご回答します」という形もよく使われます。
「現在の進捗状況についてご回答申し上げます」
「ご~申し上げる」という謙譲表現を使うことにより、回答という行為の向かう対象である相手を、結果的に敬う表現になります。
メールの最初や、会議などで話し始める前にこう宣言することで、相手はこれから何の話をされるのかが分かるため、その後の話が頭に入ってきやすいでしょう。
「ご回答」の間違いやすい使い方や注意点
ここでは「ご回答」を含む文章として、注意が必要な表現を紹介します。
「ご回答させていただきます」
「ご回答させていただきます」という使い方は、言葉としては間違いとは言い切れません。しかし、やや回りくどい印象を持たれる恐れがある表現です。
そもそも「させていただく」とは、自分が行うことに対し「相手の許可を得て行う」「その行いによって自分に恩恵がある」という場合に使える言葉です。
自分が回答することに相手の許可が必要でない、あるいは自分が回答することによる利益は自分には無いということであれば、「ご回答させていただく」を使うことは本来間違っているのです。
「ご回答を差し上げます」
「ご回答を差し上げる」という表現は、「差し上げる」という言葉が謙譲語ではあるものの、「与える」「やる」という意味であるため、相手に「上から目線の表現だ」と捉えられる可能性があります。特に取引先など、目上の人に使うと失礼に当たる恐れがあるため注意が必要です。
無難に「ご回答いたします」などと伝えるのがおすすめです。
「ご回答」「ご返答」「ご解答」の違い
「ご回答」に似た言葉として、「ご返答」や「ご解答」という言葉があります。「ご回答」「ご返答」「ご解答」には、どのような違いがあるのでしょうか。それぞれの意味を把握し、正しく使い分けましょう。
「ご回答」と「ご返答」の違い
「返答(へんとう)」には、問いかけに答えるという意味があります。
質問や要求に対して答えることを意味する「ご回答」は、やや込み入った内容の問いに対する答えとして多く使われるのに対して、「ご返答」は比較的シンプルな受け答えに多く用いられます。
また「ご回答」の方が「ご返答」よりもよりかしこまった印象、オフィシャルな印象があります。
「ご回答」と「ご解答」の違い
「解答(かいとう)」は、問題を解いて答えを出すことや、その答え、という意味です。
返事を求める「ご回答」とは意味が異なり、「ご解答」は返答を求める際には使いません。
「ご回答」と「ご解答」は同じ読み方であるため、漢字を間違えたりどちらを使うか迷ったりすることもあるでしょう。返答を求めているか否かが、違いのポイントです。
「ご回答」の類語・言い換え表現
前述の「ご返答」「ご解答」の他にも、「ご回答」の類語は存在します。それぞれの意味を例文と合わせてご紹介しますので、併せて覚えておきましょう。
お返事
「お返事」とは、呼びかけに対して答えることを意味する「返事」に、「お」をつけて丁寧にした言葉です。
例文は以下の通りです。
- 先日お伺いしました件について、お返事をいただけましたら幸いです。
なお「返事」には、返答の手紙という意味もあります。
ご返信
「ご返信」とは、返事の手紙やメールを送ることを意味する「返信」という言葉に、「ご」をつけた丁寧表現です。したがって返事をもらう際ならどんなときでも使用できるわけではなく、口頭の返事には使用できません。
例文は以下の通りです。
- 会議の日程について、ご都合の良い日をご返信いただけますと幸いです。
- ご返信いただきありがとうございます。
「ご回答」の意味や使い方を覚えておこう
質問や要求に対して答えること、またはその答えのことを指す丁寧な言葉である「ご回答」。
後に続ける言葉によって、さまざまな表現ができます。「ご回答」の意味や使い方を覚えて、正しく使いましょう。