大会2日目の撮影の様子は「写真甲子園撮影1日目レポート 写真甲子園はスポーツだった!」でレポートしましたが、ここでは大人が興味ありそうな「監督」の話などをしたいと思います。
写真甲子園で選手3名を引率するのが監督(顧問)。ただし撮影においては、完全に選手が主役。監督が撮影を手伝ったり、直接的な指示をすることは禁止です。さらにいえば、撮影中は選手と別行動でもOKなのです。
だからというわけではありませんが、写真部の顧問ではない先生が監督を務める学校もあります。3年連続5回目の出場となる総合芸術高校(東京)の松本幸枝監督は体育の先生。今年4月に異動してきたばかりで、写真部とは何の関係もないそうです。美術系高校は筆者も講師の経験があるので分かるのですが、夏休みは先生も生徒も校外活動でとても忙しいのです。ただ、専門外の先生や、選手も写真部以外の生徒が貴重な戦力になるのも写真甲子園。3日間タフに行動し、あらゆる能力や実力が問われるので、ムードメーカーやモチベーターの存在が重要になります。暑さで選手たちもバテ気味のなか、松本監督は後ろからいいタイミングで声を掛けていました。さすが体育の先生。
撮影以上にカギとなるのが、公開審査会で発表する8枚を選ぶセレクト会議です。監督の役割が重要になる場面でもあり、今大会は2回行われます。1~2回目の撮影分は7月26日夕方に選び、7月27日午前には公開審査会が行われます。7月27日午後の3~4回目の撮影分は、7月28日の5回目の撮影分と合わせて全撮影終了後に行います。そして最終の公開審査会に臨みます。ちなみに、最終で発表する作品は、1~2回目に撮影した写真が含まれてもOK。慣れた学校になると、複数の審査会を意識して写真を撮り分けたりもします。
1回2時間のセレクト会議は、1時間が経過した時点でテクニカルタイムとして20分間だけ監督が立ち会うことができます。撮影中と違って細かなアドバイスも可能ですが、逆にそれ以外の時間は選手3名で進めなくてはいけません。使えるのはパソコンとプリンター(キヤノン「PIXUS PRO-S1」)、そして2L判の用紙だけ。レタッチやトリミングは禁止で、ひたすら選んで出力するのみです。ここでも、慣れた学校はパソコンであれこれ悩むことをせず、片っ端から印刷(ちなみに用紙は使い放題!)。そのプリントで議論や作業をしています。
貴重なテクニカルタイムでは、どの学校も大量のプリントを机に並べ、先に紹介した総合芸術高校以外は監督のアドバイスを受けていました。この写真を入れた方がいい、こう組んだ方がいいといったアドバイス、ときにはダメ出しをする監督が多いなか、逗子葉山高校(神奈川)の鬼頭志帆監督は「なぜこの写真を選んだのか」など、疑問に感じたことを次々と選手に質問攻め。選手と対話を繰り返すことで、課題や解決策を見出そうとしているように見えました。
かれこれ20年近く写真甲子園を取材してきたなかで、監督が選手に意見を押し付ける学校よりも、監督が選手から何かを引き出そうとする学校の方が、好成績を残しているように思います。また時折ですが、監督のアドバイスをあえて覆して作品を提出してしまうロックな選手たちも現れます。選手たちは、実にいろいろなものと戦っているのです。
ちなみに、応援するのみだった総合芸術高校の松本監督ですが、テクニカルタイム終了後に話を伺うと、撮影中は黙々と撮っている選手たちを見て少し心配になったそう。それがセレクトでは一転楽しそうで、写真のことは分からない監督もうれしくなったそうです。思ったように撮れていたという手応えもあったのでしょうが、それが一目瞭然なのがプリントの良さ。筆者も、写真を教えるときはプリントの重要性を説いていますが、それを実感したシーンでした。
写真甲子園は、今まさに佳境を迎えています。悲喜交々だったセレクトの成果やいかに。