藤井聡太王位に佐々木大地七段が挑戦する伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は、7月25日(火)・26日(水)に北海道小樽市の「料亭湯宿 銀鱗荘」で行われました。対局の結果、角換わり腰掛け銀の熱戦を131手で制した藤井王位がスコアを3勝0敗として防衛まであと1勝としました。
佐々木七段の修正案
藤井王位の開幕2連勝で迎えた第3局は角換わり相腰掛け銀の戦型に。この戦型特有の間合いの計り合いが始まったところで後手の佐々木七段は自陣を右玉に組み替えて専守防衛の態度を明示します。右金の移動を優先したのは細かな工夫で、類似の形から先手に先攻を許すことになった棋聖戦第3局を下敷きにしていることがうかがわれます。
じりじりとした間合いの計り合いが続いたのち、佐々木七段は1筋の歩を突き捨てて本格的な戦いを開始します。ここで封じ手の時刻を迎えて戦いは2日目に突入。盤上は、佐々木七段が先手陣に作った馬に藤井王位が1筋からの逆襲で対抗するという構図で進展します。数手の折衝ののち、藤井王位は後手陣に銀を打ち込んで反撃を開始しました。
絶妙の3手1組で藤井王位が抜け出す
藤井王位はこの応酬で手にした飛車をすぐに敵陣に打ち込んで王手。先手好調に見えるものの実際の形勢は難解で、実戦はここから後手の佐々木七段による猛烈な追い上げを見ることになります。先手陣に打ち込んだ角をすぐに銀と刺し違えたのが「終盤は駒の損得より速度」の格言通りの好手で、藤井玉も四段目におびき出されては安全とは言い切れません。
双方持ち時間が30分を切って指し手のペースが上がるなか、藤井王位は臨機応変の決め手を用意していました。自玉を狙う後手の馬を香捨ての犠打でおびき寄せつつ敵陣深くに金取りの角を打ったのが絶妙の3手1組。素直に応じるとこの馬を素抜く筋があるため単純な金取りが受かりません。SNS上にはこの手を見た棋士たちの感嘆の声が集まりました。
金の入手に成功した藤井王位は的確に後手玉への寄せを開始。終局時刻は19時1分、最後は自玉の詰みを認めた佐々木七段が投了を告げて熱戦に幕が下ろされました。敗れた佐々木七段は「もう少しうまく粘る順を探さなければいけなかった」と振り返りました。注目の第4局は8月15日(火)、16日(水)に佐賀県嬉野市の「和多屋別荘」で行われます。
水留 啓(将棋情報局)
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