みんなが大好きな温泉。日本にはたくさんの温泉施設や旅館がありますよね。筆者も温泉好きで、北海道の積丹「海が見える温泉」や長野県の山中へ「歩いていく温泉」など特徴ある場所へ行ったことがあります。
先日、ある温泉旅館からリニューアルオープンの案内が。そのキービジュアルがこちら。
人類を拒絶する山中だろ、これ(笑)。こんな場所に温泉旅館? と皆さん思いますよね? 筆者も同じ思いでした。念のため、この「猿投温泉(さなげ) 癒しの宿 金泉閣」、地図でも見たところ、やっぱり「だいぶ緑色」……。
ジブリパークの近所
位置するのは愛知県豊田市。トヨタ自動車の本社がある企業城下町として知られていますね。JR名古屋駅から車で40分程度、公共交通機関だと、地下鉄東山線の「藤が丘駅」から巡回バスで約50分の場所です。
ちなみにジブリパークから車で約15分なので、遊んだその足で向かって温泉で癒やされるということもできますよ。こう聞くとハードルが下がりませんか?
「温泉に入らないオジサンは、ただのオジサンだ」
とChatGPTが作成してくれました。嘘です。自分で考えました。
天然ラドン温泉が特徴
元々別の会社が運営していた本施設を豊田温泉開発が事業を引き継ぎ、施設をリニューアル。7月21日より開業しています。
総支配人を務める村上知隆さんは「猿投温泉は100%天然のラドン温泉が特徴です。日本全国でも7%しか湧き出ていない珍しい温泉水で、基本は無味無臭。飲泉許可を受けているので、そのまま飲むことができます」と説明してくれました。
ラドン泉に含まれる自然放射線による療養効果「ホルミシス効果」は、新陳代謝を促進し、免疫力や治癒力を高め、老化や生活習慣病の予防に役立つそうです。
それもあり、1階の「温泉ドリンクスパ」にはコーヒーやお茶、そして温泉水が自由に飲めます。筆者も早速飲んでみましたが、水道水との違いがまったく分かりませんでした。
温泉水と聞くと、少し酸っぱいイメージがありますが、ここの温泉水はぜんぜん違いますね。ちなみに猿投温泉としての施設は2ケ所しかなく、だいぶ貴重なようです。
料理にも温泉水を使い、飲み水も当然温泉水。シャワーなどから出る水のみ異なるという徹底ぶり。
「温泉が枯れたら飲み水が無いです笑」と村上さんが冗談めかすほど、ここは温泉水だらけの異空間でした。
なお、日常的に薬を服用したり、温泉水が体に合わなかったりする人にはミネラルウォーターが用意されています。
貸し切りの露天風呂から大浴場まで
もちろん飲む以外にも、入浴する形での温泉も十分に堪能できます。まずはリニューアルで新設された屋上の3つの個室露天風呂です。
筆者の写真では「雰囲気の良さ」が伝わらないので、プロの写真を拝借します。
ジェミニ(美泡壺湯)、シリウス(大型丸形)、アルタイル(角型寝湯付)と名付けられた各露天風呂は宿泊者15時半~翌日10時20分まで好きな時間に50分間貸し切りできます。
「露天風呂で一番のお勧めはジェミニです。広々とした開放感が一番あること、浴槽の下からエアーによる細かい気泡で『より肌に温泉水が入る』感覚を得られると思います」(村上さん)
しかも宿泊者は無料で1回利用できます! 部屋にあるテレビモニターで簡単に予約できるのもポイントでしょう。2回目からは3,000円を予定しているそうですよ。
また利用人数は4人を想定していますが、小さい子どもの場合は5人など柔軟に対応するとのこと。
そして大浴場展望風呂として、石を基調とした「せいじゃくの湯」、木を基調とする「こもれびの湯」があり、時間帯で男女が入れ替わるので、筆者のような温泉好きはチェックイン日、翌日の朝と違う大浴場を楽しめます。
なお、大浴場は以前の設備から壁を変えたり、アメニティグッズを一新したりするなどの改装はしていますが、そのまま利用しているところもあると言います。
温泉水のロウリュで"ととのう"
今回、最近のサウナブームを受けてか、それぞれの大浴場に3~4人用の個室サウナ室も新設されていました。
サウナストーン(香花石)に水をかけて蒸気を発生させる「ロウリュ」をセルフで行えるで、ラドン温泉だからこそできるラドンロウリュで"ととのえる"ことが!
筆者はサウナーではないですが、サウナがあれば「必ず入る」のがオジサンのお約束? 当然のように体験してきました。
ラドン温泉水のロウリュでととのえ、火照った体に温泉水を叩きこむ。
さらに、備え付けの「羽生結弦選手も愛用する化粧水」を仕上げに叩き込み、「だいぶ」ととのった気がしますね。ここでもう一度。
「ととのわないオジサンは、ただのオジサンだ」
ジブリさん、ごめんなさい、ごめんなさい。
特別感のある部屋が用意
施設自体は2006年に誕生。トヨタやその関連企業による団体利用など、50歳以上の豊田の人には認知されていたという猿投温泉ですが、若い世代には知らない人もいたと村上さん。
どうも、以前の運営企業は大々的な広報活動できていなかったようです。実際、名古屋出身で今年40歳の村上さんも、それまでは猿投温泉を知らなかったそうで、知る人ぞ知る存在だったのでしょう。
「ジブリパークができ、県外から来て家族で利用される方もいるでしょうが、私たちとしては『親孝行の一環で両親にプレゼント』『夫婦やカップルが記念日のお祝い』などで利用してもらうことをイメージしています」と村上さんは本施設の狙いを明かします。
「しあわせ隠れ里」というリニューアルのコンセプト、新しくできた客室にも反映されています。半露天風呂付きスイートが1室、「千」「城」「楽」の部屋ごとに趣が異なる3つのラグジュアリールーム、そしてデラックスルームが5室用意されていました。
3つのラグジュアリールームはかなりエッジの効いた部屋ですね。決して何かを「匂わせる」ことはありません。はい。
若い人はラグジュアリールーム、落ち着いた部屋がいい人はデラックスルームを好むのでは? と村上さんは。たしかに、前者は利用人数が3名ということもあり、女子会などで使われるケースもありそうです。
なお、筆者はデラックスルームをテレワークしながら使いましたが、これもありでした。山中ということで、集中して作業するには最適でしょう。
幻の米を味わう
最後に食事です。すべて温泉水を使って調理され、豊田市の地元の食材などを使った献立が夕食・朝食とも用意されています。なおメニューはコース料理が一つだけという潔さ。
普段の食生活から貧乏舌の筆者では、複雑な味が分からず、うまくそのおいしさを表現できません……。ただ、一品一品が手の込んだ料理だとは分かりました。
唯一分かったのが豊田産のお米「みねあさひ」。粘り気が強く非常に食べ応えがありました。
生産が限られ、市場の流通量も少ない幻のお米となり、玄米で購入したものを精米して納品してもらうという非常に手間のかかるものみたいです。
温泉に入り、温泉水と食事で体をリフレッシュさせる。温泉好き以外の人も満足できる体験になりそうです。
ちなみに日帰りで楽しみたい場合は、宿の向かいに位置する日帰り温泉施設「金泉の湯」があります。こちらも近所に住むのであろう常連さんを中心に朝から賑わっていましたよ。
こちらは「岩風呂」となるので、宿とはまた印象が異なりますが、お湯は同じです。
利用者は1容器で5lまで温泉水を持ち帰りできるので、多くの人が汲んで持ち帰りしていたのが、強く印象に残りました。
そして、もう一つだけ。個人的には地元の養蜂家と契約して作っている「生はちみつ」が気になりました。
猿投温泉の敷地内に蜂の巣箱を設置して作るそうで、ここに自生するさまざまな花の蜜がはちみつ作りに最適で、3~4月に限られた量のみ生産できる品です。
「はちみつって、こんなに甘いんだ」と当たり前のことに気付かされる、ごまかしのない自然な味わいでした。
●information
猿投温泉 癒しの宿 金泉閣
客室タイプ:
・スイート(半露天風呂) 1室
・ラグジュアリー 3室 「千」「城」「楽」
・デラックス 5室
・スタンダート1室 (リノベーション)
・カジュアル 4室 (ツインベッド、50型インフォメーションTV)
アクセス:「名古屋駅」から高速道路利用で約40 分、地下鉄東山線「藤が丘
駅」から無料巡回バスで約50分、ジブリパークから車で約15分、事前予約6
名まで豊田市駅より送迎あり
宿泊料金:リニューアルプラン 1泊2名(2食付き) 1室 平日 2万1,560円~※豊田市宿泊施設に適用される「とよた宿割」で更にお得(上記料金より30%OFF+クーポン券付き)