「映画館で感動のあまり声を出さずに号泣した」この文章に違和感がある人はいますか?
実は、日常でもよく使われる「号泣」という言葉は「静かに号泣する」という文章では使えません。
今回は正しい「号泣」の意味と使い方、類義語や例文を紹介します。違和感に気づけなかった人や号泣の正しい意味を知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
「号泣」の意味は? 正しい意味と誤用
「号泣」というと、とにかく激しく涙を流しているイメージを持つ人が多いでしょう。実はこのイメージは間違いです。
ただ泣いているだけでは「号泣」とはいいません。ここでは、正しい「号泣」の意味を紹介します。
「号泣」の正しい意味
映画館などで感動する映画を観たときに「号泣した」と表現をする人も多いのではないでしょうか?
「号泣」の正しい意味は「大きな声をあげて泣くこと」「泣き叫ぶ」ことです。声を出さずに激しく泣くことを、本来「号泣」とはいいません。
よって、「映画館で号泣した」という表現は誤りです。映画館で泣くときは、周りに気を使って声を出さずに涙だけを流す場合がほとんどなので、本来の「大きな声で泣くこと」という意味とは異なります。
「号泣」はなぜ誤用されるようになったのか?
平成22年度に文化庁が行った「国語に関する世論調査」では、「号泣」という言葉の意味を「大きな声をあげて泣く」「泣き叫ぶ」ではなく「激しく泣く」という意味で使用する人が48.3%もいることが判明しました。
なぜ多くの人が間違った意味で使用しているのか、明確な理由はわかっていません。
しかしテレビの番組や週刊誌などで、大声で泣いているだけでなく声を出さずに激しく泣いている人に対しても「号泣している」と表現したことが「号泣」=「声を出しているかは関係なくとにかく激しく泣く」という意味で認識されるようになったのではないかと考えられています。
参照 : 文化庁「国語に関する世論調査」
「号泣」の漢字の由来
「号泣」の「号」という漢字の意味をご存じでしょうか?
「号」という字は「大きな声をあげる」の意味があります。
そのため「大きな声をあげる」という意味の「号」と「泣く」で、大きな声をあげて泣く「号泣」という意味の言葉として使われています。
「号泣」と「大泣き」の違いは?
「号泣」と似ている言葉として、「大泣き」が挙げられます。先述した通り、「号泣」の本来の意味は「大声で泣くこと」「泣き叫ぶこと」です。
一方で、「大泣き」は「激しく泣くこと」という意味でも「大きな声で泣くこと」という意味でも使用されます。つまり、「大泣き」は「号泣」と同じ意味で使用することもでき、「映画館で声を殺して大泣きした」ということもできます。
「号泣」の使い方・例文
ここからは、具体的な「号泣」の例文と使い方を簡単に解説します。
「彼女は親友の訃報を聞き号泣した」
「号泣」は「声をあげて激しく泣くこと」を意味します。そのためこの例文では、「悲しさのあまり声を出して激しく泣いた」という意味で使用されています。
「自宅で映画を観て号泣した」
「映画で何らかの感情を動かされ、思わず声を出して泣いた」という意味になります。
「合格の文字をみて思わず号泣した」
「合格したことが嬉しく、声を出して泣いた」という意味です。
「彼氏と別れて親友の前で号泣した」
この場合「彼氏と別れた悲しみから、思わず声を出して泣いてしまった」という意味です。
「号泣」の類語・言い換え表現
「号泣」には他にも、似た意味の言葉である類義語がいくつか存在します。「号泣」の類義語を紹介します。
「嗚咽」「むせび泣く」
「嗚咽(おえつ)」と「むせび泣く」は、どちらも「激しく泣くこと」を意味します。ニュアンスとしては、どちらも声を出して泣くというよりも、息や声を詰まらせながら泣くことを意味します。
特に「むせび泣く」は、息が詰まるほど激しく泣く場合や声をぐっと飲み込むようにして泣く場合にも使用されます。
「泣き崩れる」
「泣き崩れる」は、「激しく泣く」という意味で使われます。「激しく泣くあまり立っていることができず、崩れ落ちること」を意味します。
「感涙にむせぶ」
「感涙(かんるい)にむせぶ」は、感謝の思いが込み上げたり感激したりする場面で、息を詰まらせながら泣くことを意味します。そのため悲しくて泣くという意味では使わない言葉です。
「号泣」の本来の意味は「大声で泣く」
「号泣」は、声をあげて泣くことを意味しているため、声を出さずに激しく泣いている場合は本来「号泣」といいません。
「静かに号泣する」という使い方をしている人もいますが、本来の意味を考えると「静かに大泣きする」と言い換えた方が無難です。