キヤノンの新コンセプトのVlogカメラをZ世代に売り込むにはどうすればよいか――。プロのマーケティング担当者でも頭を悩ませるこのテーマに現役の中学生や高校生が挑戦する「探究ラボ キヤノン“PowerShot V10”プロジェクト」、7月22日に最終選考会が開かれました。各チームの最終プレゼンや審査を経て1位に輝いたのは、1台のPowerShot V10を友だちで共有してみんなが撮影した日常を楽しみ合う“交換日記”的な使い方のアイデアでした。

  • 1台のPowerShot V10を友だちと共有して交換日記的に使うアイデアを提案して見事に1位に輝いた、富士見中学校高等学校 F4チームのみなさん

2カ月間で煮詰めたアイデアを各チームが発表

今回のプロジェクトは、キヤノンが6月22日に発売したVlogカメラ「PowerShot V10」をZ世代の若者に売り込むためのマーケティングプランを中学生や高校生がチームを組んで考え、そのマーケティングプランを体現するVlog作品をPowerShot V10で撮影して制作する、という内容です。

  • 縦型ボディ&カメラ単体で自立するスタンドの内蔵が特徴の「PowerShot V10」。キヤノンオンラインショップでの販売価格は59,950円

5月下旬にスタートしたプロジェクト、約2カ月の期間を経て、各チームの作品を発表する最終選考会を7月22日に実施。選考会に臨んだのは、逗子開成中学校・高等学校(神奈川県逗子市)、田園調布学園中等部・高等部(東京都世田谷区)、富士見中学校高等学校(東京都練馬区)の3校です。各チームとも、独自性のあるアイデアを盛り込んだマーケティングプランを発表しました。

  • 品川のキヤノンマーケティングジャパン本社に各チームが集まり、プロのマーケティング担当者を前にまとめたアイデアを発表した

逗子開成中学校・高等学校 Z1チーム
PowerShot V10は面倒な編集なしでハイクオリティな動画が撮れる点や、コンパクトなので旅行にも持ち出しやすい点など、Z世代が気になりそうな部分をアピール。さらに、インフルエンサーによる発信でPowerShot V10に対する憧れを生み出し、購買に結びつけられるとした。
  • 逗子開成中学校・高等学校 Z1チーム

田園調布学園中等部・高等部 D1チーム
女子高校生の約8割がオタクで、“オタ活”をする際に動画や写真を撮る機会があることに着目。内蔵スタンドでカメラが自立すること、カメラがコンパクトなので撮影していることを周囲に気づかせずに済むこと、画質や音質がよいことなど、オタ活での撮影にはスマホよりもPowerShot V10が向くことをアピールする。
  • 田園調布学園中等部・高等部 D1チーム

田園調布学園中等部・高等部 D2チーム
テーマを「犬と私の日常」に設定。愛犬の成長や思い出を記録として残したい、愛犬のかわいい瞬間を残したい、というニーズに応えられるカメラとしてPowerShot V10を訴求する。カメラを持たずに愛犬と遊んでいる様子を撮影できることや、床に寝ている犬の様子をローアングルで撮影できるなど、内蔵スタンドの存在を中心にアピールする。
  • 田園調布学園中等部・高等部 D2チーム

田園調布学園中等部・高等部 D3チーム
高校生の小遣いでPowerShot V10を買うのは難しい、中学高校はスマホ禁止の学校が多く授業や部活で撮影する手段がない、という課題に着目。学校がPowerShot V10を購入して生徒に貸し出すことで、授業のグループ発表や学校行事などを手軽に映像として残せ、学校生活の多くで便利に活用できるほか、クリエイティビティの養成にもつながるとアピール。
  • 田園調布学園中等部・高等部 D3チーム

田園調布学園中等部・高等部 D4チーム
オンラインを利用したリモート授業に着目した。現在使っているカメラは画角が狭く、黒板の一部しか映らないので、先生は書く領域を気にしなければならない。PowerShot V10なら黒板すべてが映るので、先生の手間が軽減できる。PowerShot V10はマイクの性能もよいので、先生の声や生徒の発言も聞きやすい。これらの点を訴求する。
  • 田園調布学園中等部・高等部 D4チーム

田園調布学園中等部・高等部 D5チーム
「デート中にスマホを触られるのはいや!」「相手がスマホを使っていると、自分といてもつまらないのかな…と思ってしまう」という女子高校生の声を受け、デートの時にPowerShot V10を持って行くことを提案。画角が広いレンズで、ツーショット写真もスマホより撮りやすいことをアピールする。
  • 田園調布学園中等部・高等部 D5チーム

富士見中学校高等学校 F1チーム
老若男女を問わず日常生活で何かとストレスを抱える現在、「画質や音質がよいPowerShot V10で撮影するとストレスが発散できる」をテーマに展開。PowerShot V10で撮影した動画に限定した動画投稿サイトを開設し、撮影した動画を投稿できる仕組みも整える。投稿を見た人がPowerShot V10に興味を持ち、購買につながれば、さらに多くの人にストレス解消の輪が広がる…という好循環を狙う。
  • 富士見中学校高等学校 F1チーム

富士見中学校高等学校 F2チーム
「青春動画コンテスト」を提案。校内ではスマホの利用が禁止されているうえ、大きなカメラを向けられると変に意識して自然体でいられない…という高校生の悩みを受け、片手に収まるサイズ感のPowerShot V10を用いた動画コンテストを実施する。高校生は友だちとの自撮りが何より好きなので、自撮りがきれいに手軽にできるPowerShot V10はうってつけ。コンテストの動画を学校のホームページに掲載できれば、学校生活のひとときが家族に共有できるだけでなく、学校の受験を志望する児童にも学校の楽しさをアピールできる。
  • 富士見中学校高等学校 F2チーム

富士見中学校高等学校 F3チーム
「スタンプラリー」をキーワードに訴求。Vlog動画を作ってみたいと考える高校生に、企業や自治体が購入したPowerShot V10を貸与し、企業や自治体が指定したアクティビティや観光地をスタンプラリー的に体験しながら動画を撮影。その動画をSNSに投稿すれば、アクティビティや観光地、PowerShot V10自体のPR活動につなげられる。不慣れな観光地に1人で撮影に行く場合、スマホは地図アプリやブラウザーでの調べ物に使うのに専念でき、PowerShot V10で撮影できるメリットがある。
  • 富士見中学校高等学校 F3チーム

富士見中学校高等学校 F4チーム
PowerShot V10を何人かの仲良しグループで共有して使い、大切な友人の楽しい思い出を見せ合う交換日記のように使う「コミュニケーションカメラ」としての提案をした。自分のところにPowerShot V10が回ってきた時に1人で友だちの日常を見るだけでなく、学校など友人と一緒にいる時に1台のカメラを囲んで思い出を語りながら再生を楽しむ“Face to Faceの温かさ”も得られるとした。スマホでもシェア機能を使えばできるが、共有する写真や相手を選ばなければならないのが面倒だし、“1つのカメラにみんなの思い出を詰め込む”という点に青春の価値があるとアピールする。
  • 富士見中学校高等学校 F4チーム

  • PowerShot V10を交換日記のように使うアイデアを提案

  • 撮影した動画や写真をみんなで見ながら盛り上がる、という提案が面白い

各チームのプレゼンや審査を経て、1~3位と審査員特別賞が発表されました。1位は「富士見中学校高等学校 F4チーム」、2位は「田園調布学園中等部・高等部 D3チーム」、3位は「富士見中学校高等学校 F3チーム」、審査員特別賞は「富士見中学校高等学校 F1チーム」が選ばれ、各校にはPowerShot V10やPowerShot Zoomなどが贈られました。

  • 入賞チームには、PowerShot V10などの賞品が贈られた

見事に1位を獲得した富士見中学校高等学校 F4チームについて、キヤノンマーケティングジャパン カメラマーケティング部の阿部俊介氏は「撮影した写真や動画をリアルで集まって見る、という発想がよかった。コミュニケーションの手段がオンライン中心になるなか、オフラインならではの価値を提案してくれたのは素晴らしい」と評価。キヤノン イメージコミュニケーション本部の早川香奈子氏は「オンラインで画像を共有するよりカメラを共有する方が早い、という考え方がよい。カメラを割り勘で購入する、という発想も新鮮だった」とコメントしました。

  • キヤノンマーケティングジャパン カメラマーケティング部の阿部俊介氏(左)と、キヤノン イメージコミュニケーション本部の早川香奈子氏(右)

結果発表を受け、キヤノンマーケティングジャパン コンスーマビジネスユニット カメラ統括本部長の吉田雅彦氏は「我々のPowerShot V10に正面から向き合ってもらい、とてもうれしく感じます。提案してもらったアイデアは、Z世代ならではの考えや視点にあふれていて、どれも興味深く拝見しました。多くの学びが得られ、貴重な体験となったならばうれしく思います」とコメントしました。

  • キヤノンマーケティングジャパン コンスーマビジネスユニット カメラ統括本部長の吉田雅彦氏

プロジェクトで自分の成長につながった

優勝した富士見中学校高等学校F4チームのみなさんに、今回のプロジェクトに参加しての感想を寄せてもらいました。

「マーケティングの専門家のみなさんにいただいた中間発表でのフィードバックがとてもためになったと感じます。フィードバックをもらって内容をブラッシュアップしていくにつれ、自分自身も成長していくのを体感できました」「これまでは諦めやすい性格だったのですが、今回はいいものに仕上げるべくチームでいろいろ話し合ったりいろんなものを撮影したりして、諦めずに挑戦できる自分になったと感じます」「私は人と協力して何かをやるのが苦手だったのですが、今回のプロジェクトはみんなで協力しなきゃいけないと思って、チームワークで進められました」など、自分の成長につながったというコメントが多く寄せられました。

最終発表では、交換日記をイメージした動画を披露したF4チーム。動画を作るにあたってこだわったポイントを尋ねたところ、「PowerShot V10は多くの機能や特徴があるので、撮影アングルや画角を変えたり、カラーフィルターを変えてみたりと、まずはいろんな撮影を試してみました。動画は、PowerShot V10を使って楽しんでいる様子が同世代の人に伝われば興味を示してくれると思ったので、みんなが楽しそうにしている日常を撮りました。編集や文字載せも最小限にして、ありのままをストレートに表現しています」と回答。PowerShot V10をしっかり研究し尽くしたうえで、等身大の高校生の様子を表現していました。

富士見中学校高等学校の杉原誠先生は「学外に出て多くの人と関わる今回のプロジェクトに参加できるチャンスをもらえたことが一番大きいと思っていて、まずはそれに感謝したいと思います。審査員の方々からのコメントも、しっかり分析をしながらもポジティブにまとめていただき、大いに参考になりました。2カ月間頑張った彼女たちの経験は代えがたいもので、今後につなげていってほしいなと思います」と振り返りました。