そこで研究チームは今回、熱帯熱マラリア原虫の遺伝子改変を行い、蛍光タンパク質のGFP、およびルシフェラーゼのNanoLucを同時に発現させる方法を開発したという。

まず研究室において、熱帯熱マラリア原虫の生活環を再現し、赤内期、ガメトサイト期、オーシスト期、スポロゾイト期、肝内期におけるGFPの発現が確認された。研究チームはこの結果について、GFP蛍光シグナルの顕微鏡観察により原虫の形態や数の観察が容易に行えることを示すとする。

  • さまざまなステージの熱帯熱マラリア原虫におけるGFP発現。

    さまざまなステージの熱帯熱マラリア原虫におけるGFP発現。(出所:長崎大Webサイト)

続いて、GFPと同時に発現するNanoLucのシグナルを用いて、抗マラリア薬の評価を実施。赤内期の原虫を抗マラリア化合物が添加されたプレートに播種し、NanoLucのシグナルを検出することで、ある化合物の増殖阻害活性を決定することが可能だという。その結果、化合物の濃度が高くなるにつれて、原虫の増殖阻害の度合いも上昇していることが確認されたとのことだ。

  • NanoLuc発現原虫を使った赤内期原虫に対する抗マラリア薬評価。

    NanoLuc発現原虫を使った赤内期原虫に対する抗マラリア薬評価。(出所:長崎大Webサイト)

また、このアッセイ系をガメトサイト期や肝内期にも適用し、NanoLucシグナルを検出することで、赤内期のみならずガメトサイト期、肝内期での抗マラリア活性も評価できることが示された。この一連の実験により、NanoLuc発現原虫を用いて複数ステージでの抗マラリア化合物の評価が可能であることが示唆されたとしている。

研究チームは今回の結果から、高感度なNanoLucをヒトと蚊という2つの宿主内で発現する新しいレポーター熱帯熱マラリア原虫が創出され、新たな創薬プラットフォームとして構築されたとする。そして、複数のステージで発現するGFPやNanoLucのシグナルを利用することにより、創薬研究のみならずマラリア原虫そのものの基礎研究も大幅に推進することが期待されるとしている。

研究チームは今後、NanoLuc発現原虫を用いた複数のステージの原虫の薬効評価を通して、新たな抗マラリア薬開発へと展開するという。なお、今回の研究で開発されたレポーターマラリア原虫は、リクエストに応じてアカデミアや創薬研究者への分与や共同研究が可能だとしている。