2023年7月23日、韓国・ソウルで開催されたタクティカルFPSゲーム『VALORANT』の国際大会「VALORANT Champions Tour 2023 Pacific Last Chance Qualifier」(以下、VCT Pacific LCQ)にて、日本のプロゲーミングチーム「ZETA DIVISION」(以下、ZETA)が優勝し、年間最大の世界大会「VALORANT Champions 2023」の出場権を勝ち取りました。

LCQは、世界大会への最後の出場権をかけ、各インターナショナルリーグで行われる予選大会です。Pacificリーグの「VCT Pacific LCQ」には、日本の「ZETA」と「DetonatioN FocusMe」(以下、DFM)を含む7チームが出場し、最後の出場権1枠をかけて戦いました。記事では、「DFM」と「ZETA」が出場した、計4試合の模様をレポートします。

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    「VCT Pacific LCQ」トーナメント最終結果

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    「VCT Pacific LCQ」に出場した7チーム

「DFM」初戦敗退、勝利叶わぬまま今シーズン終了へ

「VCT Pacific LCQ」は、Pacificリーグのリーグプレイ期間の順位に応じて、トーナメントのスタート位置が決まります。リーグプレイで10位だった「DFM」は、1度負けたら敗退となるシングルエリミネーションのMATCH1からスタートしました。

「DFM」はリーグプレイにおいて、ロール変更の試行錯誤が続くなど、チームづくりの課題を残したまま0勝で敗退。「VCT Pacific LCQ」に向けてチームを立て直すため、新たに『Counter-Strike』のレジェンドプレイヤーであるXrayN(レイ)タクティカルコーチを迎えています。

MATCH1では、タイの「Talon Esports」と対戦。リーグプレイから2ヶ月の準備期間を経て、いかにチームを改善できたかに注目が集まりました。しかし、「DFM」は2マップ続けて5-7での折り返しから、後半の攻めで差を広げられる展開で敗北。Anthem選手がクラッチで何度もチームを救うなど、見せ場をつくりましたが、勝利につなげることはできませんでした。

これにより「DFM」は、勝ち星をあげられないまま今シーズンが終了。試合後のインタビューに登場したReita選手は、「日本の1枠をもらって挑戦させていただいているにもかかわらず、1勝もできずに帰ってしまうことが本当に申し訳ない」と悔しさをにじませました。

■試合結果
DFM [0-2] Talon Esports
1マップ:7-13(フラクチャー)
2マップ:8-13(アセント)

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    悲願の勝利を目指し、「VCT Pacific LCQ」に出場した「DFM」

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    見事なクラッチで何度もチームを救い、活躍を見せたAnthem選手

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    2マップ目では、Anthem選手がショックボルトでの鮮やかな1vs2クラッチを披露

40ラウンドの激闘を制し、「ZETA」Dep選手が最多キル更新

リーグプレイで4位だった「ZETA」は、ダブルエリミネーションで行われる3回戦からのシード権が与えられました。3連勝すれば「VCT Pacific LCQ」の優勝が決まる、有利な位置からのスタートです。

最初の対戦相手は、インドネシアの「Rex Regum Qeon」。「ZETA」は1マップ目のヘイヴンで2-13と大差で敗れ、不安なスタートを切ります。しかし、2マップ目のスプリットで徐々にペースをつかんだ「ZETA」は、前半で巻き返して7-5での折り返しへ。後半の攻めでは、相手にリードを譲ることなく、13-8で勝利しました。

3マップ目のアセントでは、「ZETA」が8-4とリードして折り返します。ところが、後半で相手にラウンドを連取され、接戦の展開に。12-12の同点に並び、オーバータイムに突入しました。オーバータイムでは、お互いに攻めを取り合うラウンドが続き、「ZETA」は6連続のマッチポイントを取られながらも食らいつきます。

そして、ついに37ラウンド目で「ZETA」がマッチポイントを奪取。計40ラウンドにわたる激闘の末、21-19で手に汗握る戦いを制しました。これにより「ZETA」はマップカウント2-1で勝利を獲得し、アッパーブラケットファイナルへと駒を進めました。

なお、3マップ目ではDep選手が42キルを達成。LAN環境で行われた国際大会における、最多キル記録を更新しました。このマップでDep選手は、長らく試合で見せていなかったソーヴァをピックしています。デュエリストではなく、索敵スキルでのサポートをメインとするソーヴァで最多キル記録を更新したことも、話題を呼びました。

■試合結果
ZETA [2-1] Rex Regum Qeon
1マップ:2-13(ヘイヴン)
2マップ:13-8(スプリット)
3マップ:21-19(アセント)

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    「VCT Pacific LCQ」では、XQQコーチに代わってJUNiORコーチが登場

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    40ラウンドにわたる激闘の末、最後はDep選手が1vs2を制して勝利を決めた

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    Dep選手がソーヴァで42キルを獲得し、国際大会の最多キル記録を更新

“Lazチェンバー”復活、あの頃の「ZETA」が帰ってきた

アッパーブラケットファイナルでの戦いは、リーグプレイで5位を獲得し、「ZETA」と同じく3回戦からスタートしたフィリピンの「Team Secret」との対戦になりました。この試合で、冒頭からファンを驚かせたのは、「ZETA」のエージェント構成。なかでも、Laz選手が公式大会で約1年ぶりにチェンバーをピックしたことが、注目を集めました。

「ZETA」が世界大会で3位に上りつめた、2022年の「VCT Masters Reykjavík」では、Laz選手のチェンバーが抜群のパフォーマンスを誇っていました。しかし、その後チェンバーがバランス調整により弱体化された影響で、プロシーンではほとんど採用されない期間が続きます。Laz選手も同様にピックすることはなくなっていました。

そうしたなか、この試合では昨年ぶりにLaz選手のチェンバーが大活躍。さらに、TENNN選手のレイズ、Dep選手のネオンによる2デュエリスト構成も相まって、2マップを通してスピード感あるアグレッシブな戦いぶりを見せます。勢いに乗った「ZETA」は、優勢を保ったままストレート勝利を獲得。これにより、グランドファイナル進出を決めました。

Pacificリーグでの「ZETA」は、丁寧で慎重なプレイスタイルを見せていましたが、この試合では各選手が得意とするエージェントで、いきいきとしたプレイを披露しました。かつての「VCT Masters Reykjavík」でのプレイを彷彿とさせる勢いがあり、まさにファンが待ち望んでいた「ZETA」の姿だといえるでしょう。

試合後、グローバル配信のインタビューに登場したLaz選手は、「強いZETAが帰ってきたのではないかと思います」とコメント。チェンバーを使ったLaz選手自身のパフォーマンスについても、「今年で一番良かった」と振り返り、評価としては「ミスもあったので、10段階の7~8くらい。2の伸びしろがあると信じています」と答え、続く試合への期待を残しました。

■試合結果
ZETA [2-0] Team Secret
1マップ:13-9(ロータス)
2マップ:13-7(フラクチャー)

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    1マップ目の冒頭で、かなりアグレッシブな「ZETA」のエージェント構成が明らかになった

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    Laz選手がたった2発のヘッドハンターで、ラウンドの圧倒的な有利をつくる場面も

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    持ち前のフィジカルを最大限に活かし、チェンバーで見事な活躍を見せたLaz選手

グランドファイナルを3-1で制し、「ZETA」が優勝に輝く!

グランドファイナルでの対戦相手は、ロワーブラケットファイナルで韓国の「Gen.G Esports」を下した「Team Secret」となり、再戦が決定しました。グランドファイナルは、3マップ先取のBo5。アッパーブラケットからグランドファイナルに進出した「ZETA」には、2つのマップをBANするアドバンテージが与えられます。

この日も前回の対戦と同じく、各選手の得意なエージェントを中心とする構成をぶつけた「ZETA」。過去の試合ですでに見せている、かつ尖ったエージェント構成で、強みを押し付ける戦いができるかが見どころになりました。

1マップ目のフラクチャーでは、いきなりオーバータイムにもつれ込む熱戦となりますが、「ZETA」がこれを14-12で制します。2マップ目のアセントは、「Team Secret」がPacificリーグにおいて7試合を戦い、勝率100%を誇るマップ。6-6の同点で折り返しを迎えますが、「ZETA」は後半で差をつけられ、9-13で敗れました。

3マップ目のスプリットでは、前半から「ZETA」が大きくリードする展開で、危なげなく13-7での勝利を獲得。先に優勝への王手をかけた「ZETA」は、4マップ目のロータスでも、圧倒的な展開を見せ、13-6での勝利を手にします。これにより「ZETA」は、マップカウント3-1で優勝に輝き、「VALORANT Champions 2023」への出場権をもぎ取りました。

Pacificリーグで「VCT Masters Tokyo」への出場権を逃した「ZETA」は、プレイオフの内容などから、今回の「VCT Pacific LCQ」に向けた前評判で、あまり高く評価されているとはいえませんでした。しかし、各選手の強みを活かしたエージェント構成に振り切ったことで、チーム全員がすばらしいパフォーマンスを発揮し、見事に悔しさを晴らす結果を勝ち取りました。

■試合結果
ZETA [3-1] Team Secret
1マップ:14-12(フラクチャー)
2マップ:9-13(アセント)
3マップ:13-7(スプリット)
4マップ:13-6(ロータス)

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    3マップ目は前半10-2と大差で折り返し、以降4マップ目まで「ZETA」が終始リードを握った

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    「ZETA」が優勝を決めた瞬間、ステージには「WELCOME TO CHAMPIONS」と映し出された

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    悔しさを晴らし、「VALORANT Champions 2023」への出場権を手にした「ZETA」

「VALORANT Champions 2023」出場16チームが決定

各インターナショナルリーグにおけるLCQの日程がすべて終了し、「VALORANT Champions 2023」に出場する全16チームが、下記の通りに決定しました。なお、「VCT Masters Tokyo」で優勝した「Fnatic」が属するEMEAリーグには、LCQで得られる出場権が1枠追加されており、合わせて5チームが出場します。

アメリカ・ロサンゼルスにて開催される「VALORANT Champions 2023」は、日本時間の8月7日よりスタート。「ZETA」はグループCに振り分けられ、初戦は国際大会2連覇中の王者「Fnatic」との試合に決定しました。昨年に続き、再び世界での戦いに挑む「ZETA」をぜひ応援しましょう!

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    「VALORANT Champions 2023」グループ振り分け結果

・Americasリーグ
Evil Geniuses
NRG
LOUD
KRÜ Esports(LCQ)

・EMEAリーグ
Fnatic
Team Liquid
FUT Esports
Giants(LCQ)
Natus Vincere(LCQ)

・Pacificリーグ
Paper Rex
DRX
T1
ZETA DIVISION(LCQ)

・中国
EDward Gaming
Bilibili Gaming
FunPlus Phoenix