コンパクトで高性能なゲーミングノートをハイレベルで実現しているのが「Razer Blade 14」だ。AMDの最新世代APU(CPUとGPUを合わせたもの)とNVIDIAの同じく最新世代GPUを組み合わせ、ディスプレイは240Hzの高リフレッシュレート。それを1.84kgの軽さにまとめあげている。人気ゲームを中心に性能チェックと薄型だけに冷却力も合わせてテストしたい。
Razerと言えば、マウス、キーボード、ヘッドセットといったゲーミングデバイスで有名だが、薄型で高性能なゲーミングノートの開発にも力を入れている。今回紹介する「Razer Blade 14」は、その中でもっとも携帯性に優れるモデル。持ち運びのしやすさや設置スペースを取りたくないといった人にピッタリと言える。
まずは、AMDの最新世代APU「Ryzen 9 7940HS」から触れていこう。ノートPC向けのRyzen 7000シリーズは、複数世代のアーキテクチャが採用されており、少々ややこしいが末尾2桁の数字で見分けることが可能だ。シリーズ別の内容を簡潔にまとめた。
シリーズ | アーキテクチャ | 最大コア数 | プロセス | GPU |
---|---|---|---|---|
Ryzen 7045 | Zen4 | 16C/32T | 5nm | RDNA2 |
Ryzen 7040 | Zen4 | 8C/16T | 4nm | RDNA3 |
Ryzen 7035 | Zen3+ | 8C/16T | 6nm | RDNA2 |
Ryzen 7030 | Zen3 | 8C/16T | 7nm | Vega |
Ryzen 7020 | Zen2 | 4C/8T | 6nm | Vega |
Ryzen 7040シリーズは、Zen4アーキテクチャのCPUコアとRDNA3アーキテクチャのGPUコアを組み合わせたAPUだ。CPUとGPUともAMD最新世代のアーキテクチャを採用している。末尾には省電力重視の「U」が付いた製品と、薄型&高性能を両立させる「HS」が付いた製品をラインナップしている。
Zen4アーキテクチャは、前世代のZen3アーキテクチャに比べてIPC(クロックあたりの命令実行数)が最大13%アップし、AVX-512命令セットに対応するなど性能面、機能面ともに底上げされている。さらに、Ryzen 7040シリーズは統合GPU性能も高い。Ryzen 9/7では演算ユニットのCU(Compute Unit)を12基搭載する「Radeon 780M」、Ryzen 5ではCPUを8基当隊する「Radeon 760M」を採用。フルHD解像度なら軽めのゲームを快適に遊べるだけの性能を持っている。ただ、Razer Blade 14は外部GPUを搭載しているので、バッテリ駆動時間を少しでも延ばしたいといったシチュエーション以外では統合GPUを使うことはないが……。
Ryzen 7040シリーズはCPU/GPUから独立したAI専用プロセッサの「Ryzen AI」を統合しているのも大きな特徴だ。AMD傘下のXilinxが開発したXDNAアーキテクチャをベースにしたもので、「AIエンジン4基+メモリ1基」で構成されるユニットを5セット搭載しており、それを相互接続することでニューラルネットワーク処理に強い構造にしている。最大4つの異なるニューラルネットワークを同時に実行できるとしており、複数のAIタスクをこなせるのも強みだ。演算性能は最大10TOPSとなっている。現在GPUをAI処理に利用することが多いが、AI専用プロセッサを備えることで、より高速に処理できるというわけだ。
Ryzen AIはWindows Studio Effectsに対応しており、Webカメラの自動フレーミング、アイコンタクト、背景のぼかしなどが利用できる。今後どれだけアプリ側の対応が進むか気になるところだ。
本題に戻ろう。Razer Blade 14に採用されているRyzen 9 7940HSは、「7040HS」シリーズの最上位モデルだ。8コア16スレッドでブーストクロックは最大5.2GHzとノートPC向けとしては非常に高い。2次キャッシュが8MB、3次キャッシュが16MBと大容量だ。TDPはノートPCの熱設計などに合わせ35~54Wと幅を持たせている。
GPUには、NVIDIA最新世代の「GeForce RTX 4070 Laptop GPU」を採用。CUDAコアが4,608基、ブーストクロックが1,230~2,175MHz、メモリがGDDR6 8GB、メモリバス幅が128bit、カード電力が35~115Wだ。Razer Blade 14では、ブーストクロックが1,980MHz、カード電力は標準80W、最大140Wに設定されていた。
APUとGPU以外スペックも紹介しておこう。メモリはDDR5-5600が32GBで最大64GBまで搭載が可能。ゲームプレイで困ることはないだろう。ストレージは1TBのNVMe SSDだ。ディスプレイは14型で解像度は画面比率が19:10のWQXGA(2,560×1,600ドット)と高解像度だ。リフレッシュレートも240Hzと高く、滑らかな描画がが可能だ。また、高い色の表現力を求められるデジタルシネマ向けの「DCI-P3」規格のカバー率100%と高色域なので、映像コンテンツも快適に楽しめる。
無線はIEEE802.11ax/ac/a/b/g/n、いわゆるWi-Fi 6Eに対応し、Bluetooth 5.2もサポート。有線LANは非搭載でOSはWindows 11 Homeだ。
サイズはW310.7×D228×H17.99mmで、重量は1.84kg。高性能なゲーミングノートとしては非常に薄型で軽い。公称バッテリ駆動時間は最大10時間だ。ACアダプタは230WとノートPCとしては大出力だけに大きめだが、筆者の実測で650gとそれほど重たくはなかった。
インタフェースは右側面にHDMI出力、USB 3.2 Gen2、USB4 Typc-C、左側面にUSB 3.2 Gen2、USB4 Typc-C、ヘッドセット端子となっている。
人気ゲーム5本で性能チェック!
ここからは性能チェックに移ろう。まずは、PCの基本性能を測定する「PCMark 10」、CGレンダリングでCPUパワーを測定する「CINEBENCH R23」、ストレージの速度を測る「CrystalDiskMark」の結果から見ていこう。
PCMark 10は、Web会議/Webブラウザ/アプリ起動の「Essentials」で4,100以上、表計算/文書作成の「Productivity」で4,500以上、写真や映像編集の「Digital Content Creation」で3,450以上が快適度の目安となっている。すべて2倍以上のスコアを記録、とくにDigital Content Creationは優秀で、クリエイティブ用途にも十分使えることが分かる。
CINEBENCH R23は、マルチコアについてはノートPC向けの8コア16スレッドCPUとして妥当なスコアだ。電力供給や放熱に限界があるノートPCでは全コアをフルに動かし続けるのはなかなか厳しく、スコアは伸びにくい。一方で、1コアだけなら余裕でフルに動かせることもあってシングルコアは最新世代アーキテクチャの性能が存分に発揮されており、高スコアとなっている。
ストレージ性能はシーケンシャルリードが6,656.94MB/s、シーケンシャルライトが4939.49MB/sとNVMe SSDとしてトップクラスではないが、十分高速な部類だ。ゲームプレイにおいて不満が出ることはないだろう。
ここからは、実ゲームでのテストに移ろう。ここでは軽~中量級ゲームとして「レインボーシックス シージ」、「Apex Legends」、「ストリートファイター6」を用意した。レインボーシックス シージはゲーム内のベンチマーク機能を利用した。Apex Legendsはトレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレート、ストリートファイター6はCPU同士の対戦を実行した際のフレームレートをそれぞれ「CapFrameX」で測定している。
レインボーシックス シージはWUXGA(1,920×1,200ドット)なら、最高画質設定でも240Hzのリフレッシュレートを活かし切れる平均フレームレートを出せる。WQXGA(2,560×1,600ドット)でも平均157fpsと高フレームレートだ。Apex LegendsでもWUXGAなら、平均237.2fpsと高リフレッシュレートをほぼ活かせる。WQXGAでも平均178.7fpsと快適なプレイが可能だ。
ストリートファイター6は最大120fpsまで設定できるが、対戦時は最大60fpsまで。解像度がフルHDとWQHDになっているのは、画面比率が16:10の解像度が選択できなかったため。どちらもほぼ平均60fpsに到達できており、最高画質&WQHD解像度でも余裕でプレイが可能だ。
続いて、GeForce RTX 40シリーズだけで使える描画負荷軽減技術の「DLSS 3」対応タイトルから「ディアブロIV」と「サイバーパンク2077」を試してみよう。ディアブロIVはキヨヴァシャド周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定、サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を利用した。
ディアブロIVは、それほど描画負荷が重いゲームではないので、DLSSを使わなくてもWQXGAで平均106.1fpsと十分快適だ。DLSSをパフォーマンス設定(フレーム生成も有効)にすることで、約1.5倍ほどフレームレートを向上できる。ディアブロIVは今後レイトレーシングへの対応を予定しており、それが実装されたときにDLSS 3が活躍するだろう。レイトレーシングを使えば、描画負荷はかなり高まると予想されるからだ。
DLSS 3の威力がよく分かるのはサイバーパンク2077だ。レイトレーシング有効時は描画負荷が非常に重いゲームだけに、RTX 4070でもWQXGAでは平均15.8fpsしか出ない。しかし、DLSSをフレーム生成を有効にしてパフォーマンス設定にすれば、平均85.5fpsと約5.4倍もフレームレートが向上。WUXGAでも約3.7倍も向上する。
もう一つ、ハイスペックな環境だけにOSB StudioでYouTubeにライブ配信しながらのゲームプレイが可能なのかも試しておきたい。ゲームはApex Legendsで、テスト条件は上記のベンチマークと同様。YouTubeにはフルHD解像度、60fps、ビットレートはCBRの8Mbpsでエンコーダーは「NVIDIA NVENC H.264」に設定して実行した。
配信していない状態に対して、配信しながらのゲームプレイでもフレームレートの低下は約8%で済んでいる。フルHDなら多くのゲームで配信にチャレンジできるだけの性能を備えていると言ってよいだろう。
薄型ボディでも冷却力はしっかりと確保
最後にCPU(Ryzen 9 7940HS)とGPU(GeForce RTX 4070 Laptop GPU)の温度とクロックの推移をチェックしよう。サイバーパンク2077を10分間プレイした際の温度と動作クロックの推移を「HWiNFO Pro」で測定している。室温は25度だ。
CPUは82℃前後、GPUは73℃前後で推移とハイスペックかつ薄型ボディであることを考えると驚くほど冷えている。動作音も強烈にうるさいというほどではなく、ゲーミングノートとしては小さい部類。底面にある2基の超薄型ファンは効率的に動作しているようだ。
クロックについては、CPUは一瞬5GHz超えを記録しているが、おおむね4.8GHz前後で推移した。GPUは2GHz前後で推移した。ブーストクロックが1,980MHz設定なので、順当なところだろう。
Ryzen 9 7940HS+RTX 4070+240Hz液晶というハイスペックな組み合わせで17.99mmの薄さと1.84kgの軽さを実現。冷却力も十分あり、持ち運べるまたは設置スペースを取らない高性能ゲーミングノートを求めている人には最適と言える。価格は高いが、すべてがハイレベルにまとまっており、それだけの価値がある1台だ。