かつてファミリーカーといえば普通車のセダンやミニバンが主流だったが、現在は軽自動車をファーストカーに選ぶ人たちも増えている。国内の新車販売台数で約4割を占めるまでに拡大した軽自動車市場だが、その中で人気のジャンルがホンダ「N-BOX」を筆頭とするスーパーハイトワゴンだ。

軽自動車を主業とするダイハツ、スズキはもちろん、合弁会社を立ち上げた日産・三菱も「ルークス」と「デリカミニ」で参戦して激化する「スーパーハイトワゴン戦国時代」だが、ライバルたちは王者「N-BOX」にどれだけ迫れただろうか?今回も全軽自協(一般社団法人 全国軽自動車協会連合会)が発表した2023年6月の新車販売における人気車種トップ15を紹介する。

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2023年6月軽自動車人気車種ランキング

順位 ブランド通称名 ブランド名 販売台数
1 ホンダ N-BOX 16,040
2 ダイハツ タント 14,572
3 ダイハツ ムーヴ 11,017
4 スズキ スペーシア 9,040
5 スズキ ハスラー 6,877
6 スズキ アルト 6,036
7 スズキ ワゴンR 5,519
8 ダイハツ ミラ 5,323
9 日産 デイズ 4,013
10 スズキ ジムニー 3,956
11 三菱 デリカミニ/eK 3,270
12 日産 ルークス 3,239
13 日産 サクラ 3,236
14 ホンダ N-WGN 2,041
15 ホンダ N-ONE 1,770

※通称名についてはメーカーごとに同一車名のものを合算して集計(アルト、ワゴンR、ミラ、ムーヴ、eK、ピクシスなど)
※eKにeKクロス EVは合算せず

1位:ホンダ「N-BOX」

2011年12月の登場以来、圧倒的な人気を誇るスーパーハイトワゴンがホンダ「N-BOX」。最大の特徴は特許技術「センタータンクレイアウト」により、軽規格の小さな車体に広大な室内空間を実現していることだ。これは大きくて重い燃料タンクを前席下に設置して後席と荷室を低床化するというアイデアだが、低重心化されたことで車高の高いスーパーハイトワゴンの走行安定性を向上させるメリットも生み出している。

そのほか、ホンダらしいパワフルな走りと省燃費を両立する「i-VTEC」と「ターボ」エンジン、総合自動車メーカーとしてのノウハウを活かした高い質感と運転のしやすさ、先進の安全運転支援システム「Honda SENSING」の全車装備など、小さな車体にホンダの技術が惜しみなく投入されている。2022年は年間を通して普通車もあわせて日本で一番売れたが、その勢いは衰えることなく2023年上半期もNo.1を獲得した。

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2位:ダイハツ「タント」

  • ダイハツ「タント」

    ダイハツ「タント」

スーパーハイトワゴンの基準である1,700mmほどの車高に後席スライドドアというパッケージを最初に確立したのがダイハツ「タント」。最大の特徴は助手席側の前・後席間のピラーをドアに内蔵して巨大な開口部を実現した「ミラクルオープンドア」だ。これにロングスライドシート機構を組み合わせ、乗員の乗り降りや室内のウォークスルー、大きな荷物の積み込みなど、ライバルにはないユーティリティ性能を実現している。

大きな仕掛けを持つボディは重量の増加や操安性が心配だが、現行の4代目では親会社であるトヨタ「TNGA」のダイハツ版「DNGA」を真っ先に導入して車体性能が引き上げられた。バリエーションはファミリー層向けのフレンドリーなエクステリアを持つ“無印”「タント」と、大型グリルやメッキパーツを装備した「タントカスタム」のほか、流行のSUVスタイルに仕立てた「タント ファンクロス」も2022年10月に投入された。

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3位:ダイハツ「ムーヴ」

「ムーヴ」はダイハツの中では1995年からの長い歴史を持つモデルで、1,600mm程度の車高とリアに一般的なヒンジ型ドアを採用したトールワゴン。110万円台という買いやすい価格もあわせて、誰にでも扱いやすいスタンダードな軽規格の乗用車として展開してきたが、残念ながら現行の6代目は2023年6月下旬に生産が終了した。

まだ新型の7代目「ムーヴ」発表されていないが、宿命のライバルであるスズキ「ワゴンR」や三強スーパーハイトワゴンの一角「スペーシア」をしのぐほどの人気は、派生モデル「ムーヴ キャンバス」の存在が大きい。レトロなデザインに後席スライドドアは本家「ムーヴ」のスタイルとは大きく異なるが、女性ユーザーを中心に大ヒットした。現行の2代目ではDNGAが導入され、ユーザーからの要望も高かったターボ仕様も加えられた。

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4位:スズキ「スペーシア」

スーパーハイトワゴンの激戦区にスズキが投入しているのが「スペーシア」。因縁のライバルは長きにわたって2位の座を争ってきたダイハツ「タント」だが、2022年5月にはホンダ「N-BOX」からトップの座を奪っている。軽自動車を長年作ってきたメーカーだけに使い勝手のよさや快適性をしっかり考えられているが、ライバルと異なる最大の特徴はモーターアシストの「マイルドハイブリッド」を全車に採用してパワー・省燃費・静粛性を実現していることだ。

また、スズキには「ジムニー」や「ハスラー」という人気の軽SUVモデルをラインアップしていたこともあり、アウトドアブームには素早く反応して2018年12月にはSUV版の「スペーシア ギア」をリリースし、2022年8月には車中泊も想定した「スペーシア ベース」も追加した。「スペーシア ベース」は軽貨物自動車なので軽乗用車にはカウントされないが、6月は930台を販売している。

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5位:スズキ「ハスラー」

スズキの小型SUVとして根強い人気を持つモデルが「ハスラー」。同じスズキの「ジムニー」に似ているが、悪路を走破するためのラダーフレームやFRレイアウトの縦置きエンジンを持つ「ジムニー」に対し、「ハスラー」はFFのハイトワゴン「ワゴンR」のコンポーネントを用いており、若者のアウトドアを意識したデザインと高いユーティリティ性能を備えている。

オフロード競技にも耐えられる「ジムニー」ほどの走破性能はないものの、メインは街乗りで、休日にキャンプやアウトドアスポーツをするような一般ユーザーの場合、室内も広くて豊富な収納アイテムを持つ「ハスラー」の方が使い勝手はよいだろう。初代の登場は2014年だが、現行の2代目もレトロで愛らしい外観を受け継いでいる。

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アウトドア人気で三菱「デリカミニ」は好調。6月末で生産が終了したダイハツ「ムーヴ」はどうなる?

近年のアウトドア人気はスーパーハイトワゴンにも影響し、スズキは「スペーシア ギア」や「スペーシア ベース」を、ダイハツも「タント ファンクロス」をリリースしたが、ここ最近のニューモデルで話題となっていたのは5月24日に発売された三菱の軽SUV「デリカミニ」だ。

「デリカミニ」は実質的には「eKクロススペース」のビッグマイナーチェンジモデルだが、車名も外観も無機質で機械的だった先代に対し、愛嬌のあるフロントマスクや「デリカ」という伝統的で分かりやすい名称を用いたことが成功につながったようだ。6月は惜しくもトップ10は逃したが、三菱としては過去の軽自動車におけるシェアや生産・販売体制を考えれば大成功といえるだろう。

そのほか、人気モデルの中で気になるのは、トップ5の常連だったダイハツのハイトワゴン「ムーヴ」が6月末で生産を終了してしまったことだ。現在は「ムーヴ キャンバス」という派生モデルが大ヒットしているが、ダイハツは長い歴史を持つ「ムーヴ」というブランドを大事にしてきたため、そのまま消滅するとは思えない。

ダイハツは2023年秋に軽のハイブリッドモデルを投入すると明言しており、これが新型の「ムーヴ」になると噂されている。そのときはDNGA導入でデザインを含めたすべてが刷新されるはずだが、ベーシックにこだわった「ムーヴ」が後席ヒンジドアを廃止し、「ムーヴ キャンバス」やスーパーハイトワゴンでは標準装備のスライドドアを採用するかにも注目したい。