各地で猛暑日を記録する中、高まるのが熱中症リスクです。人間はもちろん、実は犬や猫などのペットも熱中症に注意が必要です。そこで今回はペットの熱中症対策や、かかってしまったときの応急処置などを日本気象協会が推進する「熱中症ゼロへ」プロジェクトの担当者が解説します。
■犬や猫も熱中症に注意が必要!
ペットの熱中症は、高温多湿な環境に長時間さらされることで体温が上昇し、高体温および脱水によって起こる病気です。また、体温を発散する機能が低下している場合や、過度な運動によっても起こりうるものです。
猫にもまれに見られますが、圧倒的に多いのは犬! 種類別に見ると、犬ではフレンチ・ブルドッグ、パグ、シーズーなど、猫ではペルシャ、エキゾチックショートヘア、ヒマラヤンなどの短頭種は特に熱中症に陥りやすい種です。また、肥満である場合には犬猫ともに注意が必要となります。
そのほか呼吸状態の悪化を招きやすく、体温上昇に直結し、かつ脱水状態を引き起こすような病気を患っている場合も、熱中症に注意が必要です。例えば、循環器疾患(心臓弁膜症など)、慢性呼吸器疾患、内分泌疾患(副腎皮質機能亢進症など)、脳神経系疾患(原因は様々ですがけいれん発作を伴う病気、四肢麻ひを伴う病気)、腎疾患(慢性腎臓病など)などが該当します。
さらに、昨今では高温環境ではないにもかかわらず熱中症を引き起こすことがあります。それが、認知機能不全症候群に陥っている高齢動物です。認知機能不全症候群の動物(主に犬)は、水を飲む場所が認識できない、家具の隙間など閉所から脱出できない、あるいは長時間ほえ続ける等の症状が見られます。これらの場合、体温上昇と併せて脱水症状を引き起こしやすく、熱中症の状態に陥ってしまうこともあるので非常に注意が必要です。
また、熱中症の初期症状としては、パンティング(ハアハアと激しい呼吸)、よだれ、粘膜(歯肉や舌、結膜など)の充血やうっ血、頻脈などが見られます。さらに重篤化した場合は、虚脱(ぐったりとして意識がない)、おう吐下痢、ふるえ、意識消失、けいれん発作、ARDS(急性呼吸促迫症候群)などを生じる場合も。飼い主が注意深く観察するようにしましょう。
愛犬の約4分の1が熱中症経験あり
「熱中症ゼロへ」プロジェクトにて、2019年7月に全国の犬の飼い主(20歳以上)325名を対象に実施したインターネット調査では、愛犬が熱中症にかかったことがあるかを調査。すると、24.3%が「ある」と回答しました。約4人に1人の愛犬がかかる熱中症。その予防・対策についてみていきましょう。
■ペットの熱中症予防・対策
はじめに、ペットを高温の環境に置かないことが最大の予防となります。また、犬や猫がいつでも自由に水が飲めるようにしておきましょう。
・屋内でのポイント
風通しを良くしておくことや、ペットが自由に居場所を選択できるようにしておくことが大切です。暑い時期の室温は26℃以下で維持するようにしましょう。
・屋外でのポイント
暑い季節の外出時刻には注意が必要です。気温も大切ですが、地面から近いところを歩く犬は気温以上に高温の環境下にさらされているということを忘れてはなりません。朝夕涼しく感じても、お散歩の際にはアスファルトをさわって確かめてみましょう。
暑い時期に外出しなければならない場合には、こまめな給水を心がけ、ときには体表に水道水をかけ流し、さらに風を送るなどの気化熱を利用した簡易的な体幹冷却法(※)を取り入れることも良いでしょう。
※体幹冷却法:頚部(喉から首にかけて)から体幹(胸そして内腿を含めたおなか全域)に水道水をかけたり、水分を多く含んだタオルをかけてうちわであおいだりなどをする方法
・車内でのポイント
外気温が25℃を超えるような環境下において、締め切った車の中に置くことは避けましょう。なお、活動的な犬や興奮しやすい犬の場合には、さらに低い気温でも熱中症のリスクがあるので注意が必要です。
■応急処置のポイント
熱中症に対する治療の遅延は死に至るため、熱中症が疑われたら早急に治療をすることが大切です(症状の出現から90分以内)。全身に"常温の水道水"をかけて冷却したり、水道水でぬらしたタオルなどで包んだりするなど、涼しい場所で風を送り体幹冷却に努め、直ちに動物病院を受診してください。
ただし応急処置の際に、早く体温を下げようとして冷水や氷、アイスバッグを用いて急激に冷却すると、末しょう血管が収縮し、温度の高い血液が各臓器に循環してしまいます。そうなると熱が発散しにくくなり、深部体温が下がらずに高体温による各臓器への障害が促進されて逆効果となるため、気をつけるようにしましょう。