横浜市電の車両7両(電車6両、貨車1両)などを保存・展示する横浜市電保存館が、2023年8月25日に開館50周年を迎える。これに先立ち、同館の目玉展示のひとつであるジオラマが40年ぶりに全面リニューアルされ、7月19日から公開が始まった。

  • 横浜市電保存館のジオラマがリニューアル。横浜の風景が細かく表現され、その中を鉄道やバスの模型が走り抜ける

リニューアルされた鉄道やバスが走る模型ジオラマは、新設された「ハマジオラマ」というゾーンの中に設置されている。「ハマジオラマ」では、壁面にイラストで表現した年表を掲示し、市電の時代から現代(バス・地下鉄の時代)をつなぐタイムトンネルを設置するなど、横浜市営交通の歴史をアドベンチャー感覚で楽しみながら学べる。

メインコンテンツである模型ジオラマは、今回のリニューアルで模型のゲージをOゲージ(1/43)からHOゲージ(1/87)にスケールダウンした。その代わりに、ジオラマ上の横浜の風景を従来よりも細かく表現し、見応えあるものにしている。また、これまではジオラマをガラス越しでしか観覧できなかったが、今回は近づいて見られるように、背の低い透明の仕切りのみに変更。街や地下を走る電車やバスの走行をさまざまな方向から、臨場感を味わいながら観覧できるようにした。

それでは、リニューアルされた模型ジオラマの特徴や見どころを紹介しよう。

まず、この模型ジオラマは大きく2つのエリアから構成されている。ひとつは横浜駅周辺とみなとみらい、山手の洋館などが建ち並ぶエリア。ランドマークタワー、赤レンガ倉庫、「コスモクロック21」(大観覧車)といった横浜の代表的な建築物のほか、市電車庫や市営バス営業所なども再現されている。もうひとつは新横浜駅を中心とするエリアであり、新横浜公園のスタジアムや新羽(にっぱ)の市営地下鉄車両基地などがある風景の中を新幹線が走り抜ける様子が見られる。

  • 横浜市電保存館の館長を務める北村秀明氏と、模型ジオラマのみなとみらいの街並み

  • 市電が走る横に連節バスが見える。過去と現代の風景が融合している

  • 手前が新羽の車庫と新横浜。奥にみなとみらいの風景が見える

2つ目の特徴として、走行可能な列車が10編成あり、それらを同時に動かせることが挙げられる。具体的には操作用のコントローラーが2カ所にあり、うち1カ所に6編成、もう1カ所に4編成が割り当てられている。友人と一緒に操作すれば、10編成を同時に動かすこともできる。他の施設ではできない体験だろう。

スタッフの操作による「運転ショー」も見逃せない。スクリーンとジオラマを舞台に、映像・照明・音響を駆使した8分弱のストーリーが展開される。リニューアルオープンに先立ち、筆者が見せてもらったのは、「とある家族の一日と市営交通」というストーリー。たとえば、こどもたちが起床する時間に、バスの営業所ではどのようなことが行われているのか、というように、家族の時間と市営交通の時間を同期させながら、市営交通で行われている業務をわかりやすく説明している。

  • 「運転ショー」はスクリーンとジオラマを舞台に展開

  • スクリーンにバスの様子が映ると、ジオラマのバスがライトアップされる(「運転ショー」のワンシーン)

  • 照明で夜の街並みも表現(「運転ショー」のワンシーン)

いまのところ、「運転ショー」のストーリーは、7月19日から公開されている「とある家族の一日と市営交通」の他に、8月公開予定の「横浜を走る鉄道とバス」、9月公開予定の「横浜市営交通の歴史」の3本を用意している。しばらくの間、この3本をローテーションで上映するとのこと。なお、夏休み期間中は30分ごと、通常期は1時間ごとに上映を予定している。

横浜市電保存館では、開館50周年を記念した夏休みイベント等も行うという。イベントの内容や日程は今後、市電保存館のサイトに公開される。チェックして、ぜひ、足を運んでみてほしい。