標的試料には一般的な砂(粒径:~425μm)、微小ガラスビーズ(粒径:~44μm)、アルミナ粒子(粒径:~40μm)、ガラスビーズ(粒径:~220μm)の4種類を使用。実験はすべて真空下(約500Pa)において実施され、直径1mmのガラス球弾丸を秒速1.2kmで低重力下および1G下で衝突させ、クレーターの形成過程を高速度カメラを用いて観察したとのことだ。

実験の結果、砂やガラスビーズ標的では、重力が小さい方がクレーター直径が明らかに大きくなっていることが判明した一方、微小ガラスビーズやアルミナ標的では、クレーター直径に対する重力の影響があまり見られなかったとする。

  • 高速度カメラで撮影された低重力下でのクレーター画像の一例(矢印はクレーターの縁を示す)。

    高速度カメラで撮影された低重力下でのクレーター画像の一例(矢印はクレーターの縁を示す)。(a)砂標的に形成されたクレーター。(b)ガラスビーズ標的に形成されたクレーター。(c)微小ガラスビーズ標的に形成されたクレーター。(d)アルミナ標的に形成されたクレーター。(出所:立命館大・千葉工大共同プレスリリース)

粒状物質が標的の場合は地球上では“重力に逆らって”クレーターが形成されるのが一般的であり、砂やガラスビーズ標的の実験結果でクレーター直径に重力の影響が見られたのはそのためだという。

それに対し、粒径が細かい微小ガラスビーズとアルミナの標的で重力の影響が小さいのは、粒子層の粘着力が影響しているからだと考えられるとのこと。粒径が小さい粒子層の方が粘着力が強くなることが知られており、これらの標的の低重力下では“粘着力に打ち勝つように”クレーターが形成されたことが、実験結果によって示唆されているとする。研究チームは、乾燥した粒子層においてこのように重力と粘着力の影響が逆転する領域を実験的に観察したのは、今回の研究が初めてだとする。

  • 最終クレーター直径と重力加速度の関係。

    最終クレーター直径と重力加速度の関係。(出所:立命館大・千葉工大共同プレスリリース)

実際の小惑星表面の大部分は粒子層で覆われているが、重力が微小な小惑星表層で形成されるクレーターサイズは、粒子層の粘着力に依存する可能性があるという。今回の研究成果は、地球とは異なる重力下でのクレーター形成メカニズムの理解を進歩させることが期待されるとしている。

また、地球への小天体の衝突を回避する手段として、宇宙機を小天体に衝突させることで小天体の軌道を変化させる方法が近年検討されているが、この点においても重力が衝突現象に与える影響の理解が不可欠だ。加えて、今回の研究は地球とは異なる重力環境下での粒子層の振る舞いにも関わるテーマであり、探査機の着陸ミッションや将来的な宇宙インフラの整備などにおいても知見を与えるような進展を展望しているという。