第82期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、2回戦の菅井竜也八段-中村太地八段戦が7月20日(木)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、178手の大熱戦を終盤の逆転で制した菅井八段が開幕2連勝を飾りました。
三間飛車の相穴熊
開幕戦を中飛車で勝利していた菅井八段は後手番で迎えた本局で三間飛車を採用。細かい駆け引きを経て角道を閉じたのち自玉を穴熊の堅陣に組み上げます。これを受けて先手の中村八段も居飛車穴熊に組みますが、端歩突きに手をかけているため囲いの完成が遅れているのがややネックです。この隙に菅井八段は3筋の歩を交換して戦いに備えます。
菅井八段は手に乗って5筋でも歩交換を果たします。この直後、手順に9筋と6筋の歩も突っかけたのは振り飛車党らしい軽い手作り。これに対し素直に応じては不満と見た先手の中村八段が力強い飛車ぶつけで応じたことで、局面は一気に終盤戦に突入しました。形勢は互角で、双方の玉頭に当たる端での勢力争いが争点です。
中村八段がリード奪う
夕食休憩後もジリジリとしたねじり合いが続くなか、手番を握った中村八段は後手の竜に狙いを定めつつ徐々に形勢の針を引き寄せます。ペタペタと自陣に歩を打ち付けたのが平凡ながらうまい受けで、こうなってみると後手の菅井八段は居飛車穴熊に近寄ることができません。守りを万全にした中村八段は満を持して寄せに向かいます。
この戦型特有の金銀のはがし合いが続いたのち、局面は中村八段優勢のまま最終盤を迎えます。一方で守勢の時間が続く後手の菅井八段も持ち味の手筋と早指しを駆使して決め手を与えません。終局間近と思われた局面で、秒読みに追われる中村八段が飛車を下ろして後手玉に詰めろをかけた手が逆転のきっかけになりました。
最終盤の逆転で菅井八段が連勝
感想戦では中村八段の方からタタキの歩を打つ手が検討されました。対局中は後手玉に詰めろがかかるかどうかわからずこれを見送った中村八段ですが、実戦は菅井八段が底歩を打って穴熊を修復した手が好手で、急に後手玉が見えなくなっています。終局時刻は23時56分、自玉の受けなしを認めた中村八段が投了を告げて菅井八段の勝利が決まりました。
勝った菅井八段は2勝0敗、敗れた中村八段は0勝2敗となっています。3回戦では菅井八段―稲葉陽八段戦、中村八段-佐藤天彦九段戦が予定されています。
水留 啓(将棋情報局)
この記事へのコメント、ご感想を、ぜひお聞かせください⇒コメント欄