日産自動車・横浜工場のエンジン生産数が累計4,000万基を突破した。同社が世界で初めて量産にこぎつけた「VCターボエンジン」など、今も最先端かつ高難度なエンジンを作り続けている横浜工場だが、クルマの電動化が進んでいきそうなこの先はどうなっていくのか。工場見学に参加して聞いてきた。

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    日産の横浜工場に潜入!

電動化で横浜工場の役割が変わる?

横浜工場(神奈川県横浜市神奈川区)は日産創業の地に建つ同社の生産拠点だ。創業から2年後の1935年にはエンジンの生産を開始し、その後は日産が乗用車に初めて搭載したターボエンジン「L20ETエンジン」(1979年)やV型6気筒の「VGエンジン」(1983年)など、同社の歴史に残る数々のエンジンを生産してきた。現在は「GT-R」が搭載する「VR38DETTエンジン」(2007年~、熟練の職人が手で組み上げる)や可変圧縮機構採用の「VCターボエンジン」などを生産中だ。

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    横浜工場の敷地面積は約54万m2(鶴見区の敷地も合算)。従業員数は約3,200人だ。生産技術開発の部門も入っているのが横浜工場の特徴で、従業員の中で製造に携わっているのは2,200人(67%)、生産技術開発に携わっているのは1,000人(29%、このうち新技術、新工法、新材料開発を担当している技術開発職が200人)という内訳になっている

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    日本初の自動車一貫生産工場として操業を開始した横浜工場だが、神奈川県の座間や追浜にも車両工場が立ち上がったことを受け、1965年には車両の一貫生産を終了し、パワートレインの専門工場となった。現在はエンジン、モーター、サスペンションユニットを生産している

エンジンの累計生産数は1976年に1,000万台、1986年に2,000万台、1997年に3,000万台を突破。日産の創業90周年に当たる今年の6月に4,000万台に到達した。

ほぼ10年刻みで1,000万台ずつ累計生産数を増やしてきた横浜工場だが、3,000万台突破から4,000万台到達までには26年ほどかかっている。その理由は、1990年代終盤からグローバル化が進展し、横浜工場の役割が変わったから。近年は新機種の量産化など、グローバルマザー工場としての役割を果たしながら進化を続けているという。

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    累計生産4,000万基目は、現行型「エクストレイル」のe-POWERに使うVCターボエンジン「KR15DDT型」だった

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    「VCターボエンジン」は圧縮比を運転中に変えられる日産いわく「夢のエンジン」だ。圧縮比は上げると熱効率が高まるが、上げすぎると温度が高くなりすぎて異常燃焼につながり、最悪の場合はエンジンの損傷につながる。日産は「マルチリンク式可変圧縮比機構」という技術を導入し、世界で初めてVCターボエンジンの量産を実現した

クルマの電動化の進展により、横浜工場の役割は今後も変わっていきそうだ。

2010年の電気自動車(EV)「リーフ」発売以降、横浜工場では駆動用モーターの生産を続けている。現在は小型車「ノート」やミニバン「セレナ」などが搭載する日産独自のハイブリッドシステム「e-POWER」で使うモーターも生産中。モーターの累計生産台数は2023年5月で167万台に到達した。2022年度における生産実績はエンジンが32.9万台、モーターが21.4万台なので、横浜工場の生産数の約4割が今やモーターということになる。

同工場では現在、「全固体電池」のパイロットライン設置に向けた準備が進んでいる。日産は2028年度までに自社開発の全固体電池を搭載したEVを市場投入するとの目標を掲げており、パイロットラインは2024年までに設置する予定。そのための準備は「計画通り」(横浜工場工場長の和田民世さん)に進んでいるとのことだ。

横浜工場の今後はどうなるのか。工場長の和田さんは「エンジンをはじめ、既存の電動車用部品やサスペンションの量産は持続しながら、並行して、新たな電動化戦略を支える事業所として、技術開発機能を有した量産技術開発工場への転換を一層加速していきます」とする。具体的には「電動化で必須となる軽量化に向けたアルミ車体鋳物やサスペンションの開発、高効率化やコスト最適化を図るためのモーターや磁石などの量産技術開発、カーボンニュートラルへの貢献に向けた発電ユニットの技術開発」などを目指し、「横浜工場の持つ多種多様なコンピテンシーをフルに活用していく計画」だという。