「遜色ない」はよく見聞きする言葉ですが、使い方によっては失礼になることもあるので注意が必要です。

本記事では「遜色ない」の詳しい意味や例文、褒め言葉として使っても失礼ではないのかや、目上の人に使用可能かなどを紹介。言い換え表現や対義語もまとめました。

  • 遜色ないとは

    「遜色ない」の意味や使い方のポイントと例文、類語や対義語も紹介します

「遜色ない」の意味や読み方とは

「遜色ない」とは、「何かと比較してそれが劣っていない様子」「見劣りしない」「負けていない」ということを表します。

つまり、さまざまな物事と比較して、同じ程度であることや対抗できる能力・機能がある様を意味します。

この言葉を構成している「遜色」という語句が「劣っていること」を表す語であるため、それに否定の語である「ない」を付けることで、「劣っていない」というポジティブな意味になっています。

負けていてもおかしくないのに、比べると同等程度のレベルだという意味で、肯定的に使われます。

「遜色ない」は「そんしょくない」と読みます。

「遜色」の語源・成り立ち

「遜色(そんしょく)」という単語を構成している「遜」という文字は、「劣る、引けを取る」「へりくだる」などの意味を持ちます。そのため、自分のことをへりくだり控えめに言い表すときに使う単語である「謙遜(けんそん)」にも使われています。

また「色」という文字には、「いろどり」という意味の他、「様子」「顔かたち」などの意味があります。

そのため「遜色」は「劣っている様子が分かる」、つまり「何かに対して劣っている」という意味になったといわれています。

「遜色ない」のビジネスシーンでの使い方のポイント・注意点

  • 「遜色ない」のビジネスシーンでの使い方・注意点

「遜色ない」はビジネスシーンでもよく使われます。ここでは、具体的な使い方のポイントを見ていきましょう。

「遜色ない」は褒め言葉として使える?

「遜色ない」は、「見劣りする」「劣っている」を表す「遜色」を「ない」で打ち消している言葉であるため、ポジティブな意味を持つ単語です。そのため、褒め言葉として用いることができます。

ただし「遜色ない」という言い回しは、「明らかに格上のものと比べて、負けていてもおかしくないのに負けていない」というニュアンスの表現になるため、誰の目から見ても評価の高いものと比較して用いることで、その物事を褒められるのです。

明らかに格下のものと比べて「遜色ない」とすると失礼に

前述のように「遜色ない」を使うときは、比較する相手が明らかに格上であることを前提として、「明らかに格上のものと比べても劣っていない」ということを表します。

よって、誰が見ても格下であると思われるものと比較して「遜色ない」と表現すると、失礼に当たることもあります。

例えば「この店のラーメンは、カップラーメンと比べても遜色ないですね」という表現は、避けた方がいいでしょう。

考え方にもよりますが、インスタント食品が飲食店の食べ物より「明らかに格上」とは言い難いため、褒めるつもりであった飲食店に対して、失礼に当たります。

目上の人に伝えるときの敬語表現は「遜色ありません」など

「遜色ない」は目上の人に対しても使える言葉ですが、その場合は敬語表現にして使います。

「遜色ない」の敬語表現にするには、「ない」の部分を敬語に変えて使用します。丁寧語の「遜色ありません」や「遜色ございません」、謙譲語の「遜色ないと存じます」などがあります。

なお「遜色ない」はあくまで「劣ってはいない」「負けてはいない」という意味であり、「勝っている」という意味ではありません。そのため、人によっては気分を害す可能性もあるので、留意しましょう。

「遜色ない」の例文

  • 「遜色ない」の例文

「遜色ない」の例文を見ていきましょう。

  • 彼女の実力は、プロと比べても遜色ない
  • 他社と比べてマイナーな会社の製品ではあるが、他社の最新モデルと比べても何の遜色もない

このように、「遜色ない」は文末で使用することが多いでしょう。強調の意味を込めて使うときには「何の遜色もない」などと表現します。

また、「遜色ない」は他の優れたものとの比較で使う言葉であるため、多くの場合「◯◯と比べて」という言い回しと併用します。

  • 弱冠15歳の作品にも関わらず、その道30年の達人と比べても遜色ない出来栄えだ

このように、「遜色ない」を名詞の前につけて使う場合もあります。「遜色ない出来栄え」「遜色ない出来」「遜色ない品質」など、さまざまな名詞の前に使用できます。

「遜色ない」の類語・言い換え表現

  • 「遜色ない」の類義語

「遜色ない」にはさまざまな類語があります。それぞれの意味や使い方も確認しておきましょう。

引けを取らない

「引けを取らない(ひけをとらない)」も「遜色ない」と同様、「引けを取る」という語を打ち消して成立している語です。

「引けを取る」は、「相手よりも劣っている」「負けている」ことを意味する慣用句です。それを打ち消している「引けを取らない」は、「比べる相手に劣っていない」ことを意味します。

「彼の実力は、プロと比べても引けを取らない」のように使用します。

匹敵する

「匹敵(ひってき)」とは、「能力や価値などが同レベルであること」「釣り合うこと」「対等の相手」などを意味します。

「もはや彼の実力は、プロに匹敵する」のように使用します。

負けず劣らず

「負けず劣らず」は「互いに優劣がつきにくい状態」を表す言葉で、2つが同レベル、つまり互角であることを意味する言葉です。

「負けず劣らず」はゲームや試合、競争の場面で、両者の実力が拮抗(きっこう)しており、なかなか勝負がつかないようなときに多く使われます。

大差ない

「大差(たいさ)ない」の意味は、字のごとく「程度に大きな差がない」「異なる点が分からない」です。つまり両者が同等に見える場合に使われる言葉です。

「遜色ない」も、「対象と比較して劣っていない(が優れてもいない)」ことを意味する言葉であるため、「対象と比べて同程度である」ことを意味する「大差ない」は類語と言えるでしょう。

「機能面において、A社の製品にもB社の製品にも大差はない」などの形で使用します。

「遜色ない」の対義語

  • 「遜色ない」の反対語

次に「遜色ない」と反対の意味を持つ言葉も紹介します。

「遜色ない」は、本来「遜色」という語句を打ち消すことで成立している言葉であることは、先ほども述べました。そのため、「遜色がある」と表すと対義語になるのですが、これは現在ではあまり聞かない表現です。

そこでここでは、一般的によく使用される対義語を挙げ、意味などを説明します。

引けを取る

類語で紹介した「引けを取らない」の元の形である「引けを取る」は、「遜色ない」の対義語だと言えます。「引けを取る」は、前述のように「何かと比べて負けている」「劣っている」ことを表す言葉です。

「引け」は、「弱みを感じること」「物事に後れをとること」などを表します。

「昔はライバル同士だったが、私はいつの間にか、彼にすっかり引けを取ってしまった」などの形で使用します。

見劣りする

「見劣りする」は、「他のものと比べて劣っているように見えること」や「予想していたよりも劣っているように見えること」を表す言葉です。

「一流のブランド品に比べると、やはり見劣りする」のように使用します。

敵わない

「敵わない(かなわない)」は、「対抗できない」「勝てる見込みがない」という意味を持つ語句です。

「英語の実力では、彼にはとても敵わない」のような形で使用します。

「遜色ない」の意味や使い方などを覚えておこう

「遜色ない」は「格上のものと比較しても劣っていない」ことを意味する言葉です。

褒め言葉としても使用できますが、明らかに格下のものと比べて「遜色ない」と言ってしまうと失礼になりますので注意しましょう。また、あくまで負けていないだけで、勝っているという意味ではないので、使用シーンや人によっては機嫌を損ねる可能性もあります。

意味や類語、対義語などをしっかり押さえながら、場面や相手に合わせて上手に使いましょう。