KDDIは7月18日、衛星ブロードバンド「Starlink」を活用した各種サービスの最新状況を公表した。直近のニュースとしては、沖縄県での法人・自治体向けサービス提供、東海大学の海洋調査研修船への導入、「山小屋Wi-Fi」の本格提供開始などが予定されている。

  • 衛星インターネットイメージ

    衛星インターネットイメージ

KDDIは2021年9月にスペースXと業務提携を行い、同社の運営するStarlinkをau基地局のバックホールとして活用するほか、山間部などでも都市部と同様の高速通信を行える環境の構築を進めてきた。2022年10月からは「認定Starlinkインテグレーター」として、法人・自治体向けのサービスやStarlinkによるauエリア構築ソリューションを提供し、建設現場や屋外施設の遠隔監視、災害対策などに利用を広げている。

KDDIによると、Starlinkを活用した各種サービスの現在の展開状況は以下のようなもの。なおStarlinkをバックホール回線として利用するau基地局は、2023年度内に5G対応基地局の運用を開始する予定。

場所 活用方法 展開状況
海上 Wi-Fi 東海大学 望星丸から搭載開始(後述)
山小屋 長野県/富山県から開始し、今後全国100カ所での提供を目指す(後述)
音楽フェス FUJI ROCK FESTIVAL '23、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2023などの音楽フェスで提供予定
島しょ部 au通信網 静岡県初島で提供中
山間部 富山県剣岳、岩手県早池峰山、富山県薬師岳などで提供予定
観光地 和歌山県向平キャンプ村、福井県九頭竜湖、和歌山県やどり玉川峡温泉などで提供予定
沖縄県 Wi-Fi/au通信網 法人・自治体のお客さま向けに提供開始

上記のうち、沖縄県でのサービス展開は、法人・自治体向けの「Starlink Business」において、Starlink衛星同士が通信をすることで地上局から離れた場所でのエリア化を実現する「衛星間通信」により、沖縄県を対応エリアとして追加するもの。これにより、同サービスは日本全国で利用できるようになる。

「山小屋Wi-Fi」を8月2日より本格提供開始

先の表にある「山小屋」でのサービスは、Starlinkをバックホール回線として利用するWi-Fiサービス「山小屋Wi-Fi」として提供される。

  • 山小屋Wi-Fiロゴ

    山小屋Wi-Fi

このサービスは光ファイバー回線の敷設が不要というStarlink活用の利点を活かすことで、これまで通信環境の整備が困難だった山小屋で安定した通信を行えるというもの。山小屋の管理者にとっては宿泊予約の受付やキャッシュレス決済の導入といったデジタル活用による業務効率化が可能となり、登山客にとっては安否連絡や気象情報の確認、SNS投稿などがスムーズに行えるというメリットがある。

「山小屋Wi-Fi」は5月29日より長野県白馬村の八方池山荘において先行提供を行っている。先行提供期間中は24時間あたり780円で提供してきたが、8月2日からの本格提供開始以降は、24時間あたり600円、2時間あたり300円という2プランでの提供となる。au携帯電話/スマートフォンの利用者はサービスを無料で利用可能。

本格提供開始時点での利用可能エリアは下記のとおり。なお一部山小屋では準備が整い次第の提供開始となり、今後も順次拡大予定。先の表にもあるとおり、将来的には日本百名山を中心として全国で約100カ所の導入を目指しているという。

  • 長野県:白馬村八方池山荘、白馬岳頂上宿舎、天狗山荘、冷泉小屋、塩見小屋、仙丈小屋、北沢峠こもれび山荘、西駒山荘、蓼科山荘
  • 富山県:真砂沢ロッジ、剱澤小屋
  • 剱岳 真砂沢ロッジに設置したStarlinkアンテナ

    剱岳 真砂沢ロッジに設置したStarlinkアンテナ

  • 利用可能エリアの山小屋

    利用可能エリアの山小屋

東海大学望星丸への海上利用向け通信サービス搭載

先の表にある「海上」での展開は、「Starlink Business」の海上利用向け通信サービスを、東海大学の海洋調査研修船「望星丸」に搭載するというもの。2023年7月下旬より同船において、海上における通信品質の確認や、安全な航海に必要な海洋気象情報のリアルタイムでの取得や陸上との双方向オンライン授業などさまざまな用途について試験を行うという。

  • 望星丸

    東海大学の海洋調査研修船「望星丸」

「Starlink Business」の導入により航海中にダウンロード速度最大220Mbpsの通信が利用できるようになるため、気象庁から提供される海洋気象情報や海上保安庁から提供される水路通報・航行警報などが収集できるようになる。また、調査研究を行うために乗船する学生は、船上からオンライン授業に参加したり、調査結果を活用したミーティングの開催などが可能となる。さらに、災害時の医療サポートにおいて、オンアイン診察/画像データによる診断などへの活用の可能性も期待される。