現在テレビ朝日系で好評放送中の特撮テレビドラマ『王様戦隊キングオージャー』は、長い歴史を誇るスーパー戦隊シリーズでも初の試みとなる「ヒーローそれぞれが一国の王様」という基本設定のもと、チキューを狙う地帝国バグナラクの猛攻に立ち向かう王様たちと、彼らをとりまく個性豊かなキャラクターたちがおりなす雄大かつスリリングなストーリー展開が大きな魅力となっている。

  • 『王様戦隊キングオージャー』でラクレス・ハスティーを演じる矢野聖人

    矢野聖人(やの・まさと) 1991年生まれ、東京都出身。高校在学中からモデル活動を行い、2010年にホリプロ創業50周年記念事業・蜷川幸雄演出の舞台「身毒丸」主演オーディションでグランプリを受賞し、俳優としてデビュー。テレビドラマ『GOLD』『リーガル・ハイ』『GTO』『ラジエーションハウス』『特捜9Season5』、映画『ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでいる。』(主演)『引っ越し大名』『鳩の撃退法』『劇場版ラジエーションハウス』、舞台『身毒丸』『ヘンリー四世』『ロミオとジュリエット』など、幅広いジャンルで活躍中。YouTubeで配信中のスピンオフドラマ『王様戦隊キングオージャー ラクレス王の秘密』(全3話)では主演を務める。 撮影:蔦野裕

本作の主人公のひとり、クワガタオージャー/ギラ(演:酒井大成)は、守護神が宿る最強国「シュゴッダム」の王ラクレス・ハスティーの実弟なのだが、民の幸福よりも自身の野望を優先させるラクレスに反発したため「反逆者」と呼ばれ、国を追われる身となった。

ここでは、本作のストーリー上で重要な存在となるラクレス・ハスティーを演じる矢野聖人にインタビューを敢行。数々のテレビドラマ、映画、舞台で活躍し、確かな実績を持つ矢野によって生命を吹き込まれたラクレスは、単純な「悪」ではない深淵な魅力を備えたキャラクターとして、注目を集めている。矢野にとって初挑戦となる「特撮ヒーロー」ジャンルに飛び込んだ感想や、役柄にかける思い、そしてラクレスおよび『キングオージャー』の愛すべきキャラクターたちを熱く応援するファンたちへの感謝の思いを語ってくれた。

――『王様戦隊キングオージャー』が放送を開始してから、もう4か月になります。放送後、SNSでファンのみなさんが感想を書かれているのがもはや日曜朝の定番になりつつあるようですが、矢野さんはそのような反響をリアルタイムで受け止めていたりするでしょうか。

もちろん、毎週みなさんから寄せられる番組の感想は興味深く読ませていただいています。驚いたのは『王様戦隊キングオージャー』の反響の大きさです。今まで僕がやってきたどのドラマや映画より、一番すごいかもしれません。日曜日になると『キングオージャー』関連のワードがトレンドに入っていて、こんなにも注目されているのか……という気持ちでした。

――視聴者の方からもらった言葉で、特に心に残ったものはありますか。

つい最近いただいたコメントで、「矢野さんがラクレス役をやってくれてよかった」というものがありました。やっぱり、そんな風に言ってもらえたら嬉しいですよね。カッコいいですねとか、いいキャラだねと言われるのもいいんですけれど、俳優としては「役を演じる意味」を常に考えているものですから、役柄に合っていると言われるのがなによりも嬉しいですね。

――これまでにも数々のドラマや映画、舞台で活躍されている矢野さんですが、スーパー戦隊シリーズ、および特撮ヒーロージャンルへの出演は初めてなんですね。

最初に出演のお話をいただいたときは僕も驚きました。俳優デビューして10数年になりますが、これまで特撮ヒーローにはまったくご縁がありませんでしたから。

――いろいろな役柄を演じて来られた矢野さんですが、ラクレスのように「一国の王」あるいは「指導者」を演じられたことはありますか?

舞台だと『ヘンリー四世』(2013年)でそういった役を演じたことはあります。松坂桃李くん演じるハル王子の「弟」、ランカスター公ジョン役です。『キングオージャー』でいうギラに近いポジションでしたね。

――松坂さんといえば、新人時代に『侍戦隊シンケンジャー』(2009年)でシンケンレッド/志葉丈瑠を演じて人気となりました。松坂さんから『シンケンジャー』のことを聞いたりしましたか。

桃李くんとは僕のドラマデビュー作『GOLD』でも兄役を演じられていて、これが縁ですごく仲良くさせていただいたんです。桃李くんの家に遊びに行ったとき、部屋に『シンケンジャー』のDVDが置いてあったので、一緒にいくつかのエピソードを観た思い出があります。

――矢野さんが子どものころ、好きだった特撮ヒーローはどんな作品ですか。

幼いころ好きだったのは『激走戦隊カーレンジャー』(1996年)や『電磁戦隊メガレンジャー』(1997年)、それと『ビーファイターカブト』(1996年)とかですかね。ビーファイターのメカを格納する秘密基地の玩具で遊んでいた記憶があります(笑)。『仮面ライダーアギト』(2001年)や『仮面ライダー龍騎』(2002年)とか、仮面ライダーシリーズもよく観ていました。

――『キングオージャー』は、「チキューの5王国」といったファンタジックな世界観で展開する物語です。従来のデジタル合成に加え、LEDウォールによるバーチャルプロダクションといった新技術を導入した撮影について、現場で「通常のドラマ作りとは違うな」と感じたことはありますか。

まず撮影方法が、今まで経験したことのないことばかりでした。具体的には、その場に存在しない物体や風景を想像しながら芝居をしなければならないこと。映像作品を撮っているというよりは、舞台……シェイクスピア劇を演じているような感覚がありました。

――ラクレスの衣装は、まさに王様らしい威厳に満ちた素晴らしいものでした。衣装を初めて着たときのお気持ちはいかがでしたか。

それはもう、俺は王だ!という感じになって気分がアガりましたけど、衣装合わせのときはみんな素の状態で立っているので、ちょっと恥ずかしかったですね(笑)。ラクレスの髪型はどうやって決まったのですかとよく聞かれるんですけど、あれは撮影に入る直前まで、別の作品に出演していて髪型を変えられなかったので、じゃあこの髪の長さで作れる髪型を考えましょうと、ヘアメイクさんに作っていただいたものです。ラクレスの顔の側面にはギラと同じ「二本線」が入っている設定なんですが、最初はこれを前髪で隠すことが決まっていました。

――オオクワガタオージャーに「王鎧武装」されたときは、やはりテンションが高まったのではないですか。

子どものころを思い出して、ものすごく感激しながら王鎧武装しました。まさか、31歳になってヒーローに変身できるとは、夢にも思いませんでしたね。初王鎧武装のシーンでは、あまり現場ではやらないのですが、そのときだけは動画を撮りました(笑)。やっぱり、人生で一度きりの経験だもんな~と、しみじみ思いながら撮影に臨んでいました。

  • 『王様戦隊キングオージャー』でラクレス・ハスティーを演じる矢野聖人

――ラクレスは現在、弟ギラにとって乗り越えるべき最大のライバルという立ち位置ですが、なぜラクレスが4王国の支配を目論むのか、シュゴッダムの民をどのように思っているか、ギラを本当に憎んでいるのかなど、真意がいまひとつ掴めないですよね。ファンの方々はいろいろと「考察」をめぐらせているようですが、矢野さん本人はラクレスを演じる際、どういったことを意識されていますか。

テレビを観てくださっている方たちには、ラクレスが何を考えていたのか、そしてこれから何をしたいのかなど、作品中の動きや言葉からいろいろなことをつかんで、考えてほしいと思いながら芝居をしています。何気ない動きから、ラクレスの人物像が想像できるような演技が理想ですね。撮影をしているときは、子どもたちの目線はそんなに意識はしていません。シチュエーションは非日常ではありますが、普通のドラマと変わりなく、自分のキャラクターをいかに魅力的に表現できるかを考えています。