厳しいというよりも"危険な暑さ"が続く今日このごろ。熱中症リスクが高まる中、特に注意すべきは子どもと高齢者です。今回は、子どもと高齢者にやってほしい熱中症対策をはじめ、リスクが高いワケを日本気象協会が推進する「熱中症ゼロへ」プロジェクトの担当者が解説します。
■子ども・高齢者の熱中症リスクが高いのはなぜ?
●子どもの場合
子どもは、体が小さいため、周囲の環境の影響を受けやすく、熱しやすく冷めやすいという体格上の特徴があります。気温が皮膚温よりも高い場合や、地面からの照り返しなどの輻射熱が大きな場所(夏季の炎天下)では、周囲環境の影響を受け、子どもの深部体温は大人よりも大きく上昇し、熱中症のリスクが高くなります。また、体温調節機能が十分に発達していない乳幼児は、大人よりも熱中症にかかりやすいといわれています。
●高齢者の場合
高齢者の方は温度に対する感覚が弱くなるため、室内でも熱中症にかかりやすいといわれています。通常、脳が暑いと判断すると、体は自律的に皮ふの血流量や汗の量を増やして、体内の熱を周囲に逃がそうとします。
しかし、老化が進むとこれらの増加の開始が遅れ、体温上昇に伴う増加の割合も小さくなります。そのため、高齢者の方は若者に比べて体の熱を周囲に逃がす熱放散能力が低く、深部体温が上昇しやすくなるのです。
また、高齢者の方は温度に対する感覚が弱くなり「暑さ」や「のどの渇き」を感じにくくなったり、体内の水分量が減少していたりすることで、熱中症にかかりやすくなってしまうのです。
総務省消防庁によると、2022年5月~9月に熱中症で救急搬送された人は71,029人で、このうち65歳以上の高齢者が占める割合は、54.5%(38,725人)。数値からもわかるように特に注意が必要です。
■熱中症にかかったらどんな症状が出る?
熱中症になると、めまいや立ちくらみ、顔のほてり、筋肉痛や筋肉のけいれん、大量に汗をかく、あるいは全く汗をかかないといった症状があらわれます。そのほか、頭痛、吐き気、けん怠感、高体温なども症状例としてあげられます。
子どもの熱中症は周囲の人が、顔色や汗のかき方を注意してみることで防ぐことができます。子どもの顔が赤く、大量に汗をかいている場合には深部体温が上昇していることが考えられるため、涼しい場所で休み、水分や塩分を補給するようにしましょう。
また、高齢者の方は自分で暑さやのどの渇きに気づきにくい上、体調の変化も我慢をしてしまうことがあります。周りの人が体調をこまめに気にかけましょう。
■児童・中高生の熱中症予防&対策
●登下校編
学校への登下校時にも注意が必要です。帽子をかぶる、日傘をさすことで直射日光を避けるようにしましょう。水筒など飲み物を持ち歩き、のどの渇きを感じる前にこまめに水分をとりましょう。
大量に汗をかいた場合は、適度な塩分補給も忘れないことが重要です。また、学校や家に着いてから熱中症の症状が出る場合もあります。学校到着後や帰宅後はできるだけ涼しい環境で体を休めて、少しでも気分が悪く感じたら、友達や先生など大人にすぐ伝えるようにしてください。状態によっては周りの大人が病院に連れて行きましょう。
●校内編
学校内でも、熱中症対策を行いましょう。プールは水の中にいるため油断しがちですが、運動によって失われる水分をこまめに補給する必要があります。プールサイドも暑くなるため、見学者も熱中症対策を欠かさないようにしましょう。
室内で窓際に座っている場合は、窓から差し込む直射日光にも注意が必要です。体育や部活動などに夢中になると、のどの渇きや気分の悪さなど熱中症のサインに気づくのが遅くなるため、意識的にこまめな水分補給を行いましょう。また体調が悪いときは我慢せず、無理に運動することはやめましょう。
学校によってルールが異なる場合もありますが、可能な範囲で工夫して、対策を実践していくことが熱中症予防につながります。
■高齢者の熱中症予防&対策
高齢者の方は体温の調節機能が落ちてくるため暑さを自覚しにくく、熱を逃がす体の反応や暑さ対策の行動が遅れがちなため、気温・湿度計・熱中症計などを活用し、今いる環境の危険度を知ることが大切です。
室内でも熱中症になる危険があるため、冷房や除湿機・扇風機などを適度に利用し、涼しく風通しのよい環境で過ごしましょう。
また、高齢者の方は体内水分量の減少により脱水状態になりやすく、さらに体が脱水を察知しにくいため、水分補給も遅れがちです。キュウリやナスなどの水分を多く含む食材を食事に取り入れ、のどが渇く前に水分を補給しましょう。寝る前や起床時の水分補給も大切です。
■応急処置
もし熱中症かな?と思うようなサインがあったときは、すぐに応急処置を行い、病院などの医療機関へ連れて行きましょう。応急処置の大切なポイントは、次の3つです。
ポイント1: 涼しい場所へ移動しましょう
まずはクーラーが効いた室内や車内に移動しましょう。屋外で、近くにそのような場所がない場合には、風通りのよい日かげに移動し安静にしましょう。
ポイント2: 衣服を脱がし、体を冷やして体温を下げましょう
衣服をゆるめて、体の熱を放出しましょう。氷枕や保冷剤で両側の首筋やわき、足の付け根などを冷やします。皮ふに水をかけて、うちわや扇子などであおぐことでも体を冷やすことができます。うちわなどがない場合はタオルや厚紙などであおいで、風を起こしましょう。
ポイント3: 塩分や水分を補給しましょう
できれば水分と塩分を同時に補給できる、スポーツドリンクなどを飲ませましょう。ただし、おう吐の症状が出ていたり意識がない場合は、誤って水分が気道に入る危険性があるので、むりやり水分を飲ませることはやめましょう。