2.5次元ミュージカルの草分けと言われるミュージカル『テニスの王子様』(通称:テニミュ)が20周年を迎えた。現在はミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン、ミュージカル『新テニスの王子様』という2つのシリーズが上演されており、ますます盛り上がりを見せている。

今回は、ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)vs六角(7月15日〜23日 TACHIKAWA STAGE GARDEN、7月28日〜8月6日 COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール、8月18日〜20日 名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)大ホール、8月26日〜9月3日 日本青年館ホール)、およびミュージカル『新テニスの王子様』The Third Stage(10月6日〜15日 TOKYO DOME CITY HALL、10月20日〜29日 メルパルクホール大阪、11月3日〜11月12日 TACHIKAWA STAGE GARDEN)に跡部景吾役で出演する高橋怜也にインタビュー。

前回出演したミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)vs氷帝の振り返りや、次回のミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)vs六角、ミュージカル『新テニスの王子様』The Third Stageへの意気込み、また20周年という節目のタイミングで跡部景吾を演じ、この先の未来で「僕たちが伝説だと言われていたらうれしい」という思いについても話を聞いた。

  • 高橋怜也 撮影:泉山美代子

    高橋怜也 撮影:泉山美代子

■「やっと氷帝のメンバーに会えた」

――高橋さんは『新テニミュ』で跡部として活躍されて、さらに今年からは『テニミュ』4thシーズン 青学(せいがく)vs氷帝でも跡部として出演されていましたが、どのような感想でしたか?

僕は初めて出演したのが『新テニミュ』だったので、他の『新テニミュ』メンバーも含めて、『テニミュ』のキャストとしては今までにない形だったのかなと思います。『新テニミュ』の中学生は各校からの選抜メンバーで、本役での氷帝メンバーが誰一人いない状態でありながら、跡部としても氷帝としても背負わなければいけないものがあるのが、大変なところでした。

だからこそ、氷帝公演でやっと氷帝のメンバーに会えたということがすごくうれしかったです。メンバーがいると全然違う気持ちになるというか。『新テニミュ』の段階でも、跡部は中学生選抜のリーダー的存在になるところもあるけど、全然違う氷帝というチームの部長として立つのは新鮮な気持ちでした。

ただやっぱり氷帝公演においては難しいところもいろいろあって、僕が先に跡部としてステージに立っていたので、スタートの違いについて最初は悩んだりもしました。でも結果的に、すごく「いいチームだな」と思ったんです。『テニミュ』にはいろんなチームがあって、いろんな色があると思うんですけど、僕は氷帝の色が好きだなと、実際に氷帝として立って改めて感じました。

――それはどういう色でしょうか?

青学(せいがく)には全員の絆やチームの思いを感じるんですけど、氷帝メンバーには一人ひとりが持つ氷帝としてのプライドがあるし、200人の部員の中でレギュラーを勝ち取ったという実力に対して信頼をおいているところが、熱い。青学(せいがく)とまた違った熱さがあるなと、公演を通して感じました。

――その中でリーダーとして立つには、どういう点を意識されていましたか?

これは公演前からずっと言っていたんですけど、僕はあまり人の上に立つのが得意じゃないので、「やって見せるしかない」というところがありました。でも終わってみると、本当に周りに助けられたと思っています。みんな向上心があるし、僕のスタンスも理解した上でついて来てくれたのかなと感じました。だからこそ、自分の中で「もっとやらなきゃいけない」という思いが強くなり、部長として立てるようにしっかり見せようということを考えていました。

稽古では一つひとつのラリーを作っていくんですけど、例えば手塚とのS1(シングルス1)は最初に(山田)健登と2人で作って、その後に全員と合わせながらやるんです。全員で合わせる時は、僕と健登が作ったものを改めて稽古場で披露する場でもあるので、「本気で見せないと」という思いがあって。健登と僕はスタートも『新テニミュ』から一緒だったので、「この試合を見せるだけで、他の全員に本気度を理解してもらえるぐらい、しっかりやろう」という気持ちがありました。

――手塚対跡部の戦いは、歌対決みたいなところもあったんでしょうか?

『テニミュ』1stシーズンで、城田優さんと加藤和樹さんの「一騎打ち」が伝説と言われていて、僕は『テニソニ』(TAKESHI KONOMI Presents『テニプリ☆ソニック2022-おてふぇす in 日本武道館-』)でおふたりのパフォーマンスを拝見して……その時は『テニミュ』4thシーズンに出るかどうかも決まってなかったんですけど、刺激をもらったからこそ、健登とも「もし手塚と跡部のS1をやることがあったら、僕らも伝説になるくらいのパフォーマンスをしなきゃいけない」「超えなきゃいけない」という話はしていたので、1公演1公演、死んでもいいぐらいの熱量でやっていました。

――熱いですね。次の六角公演はどうなりそうですか?

氷帝の3年生としては、前回の公演で関東大会も終わって、引退するという状態なんですよね。もちろん僕は原作を知っているから、この先の展開は知っているんですが、六角公演の段階で跡部・忍足・向日・ジローという3年生が、テニスに対して、青学(せいがく)に対してどういう思いがあるのか……。難しいところだと思うんですけど、そういった葛藤を特に表現できたらと思っています。

■氷帝メンバーについての印象は?

――六角公演で一緒に出演する氷帝のメンバーについてもぜひ教えてください。忍足侑士役の草地稜之さんはいかがですか?

稜之は、変わってますね(笑)。ことあるごとに(跡部の)「インサイト」をしたがるんですよ!(笑) やっぱりキャスティングがすごいのか、忍足って心を開かないクールな印象があって、稜之も一見クールでドライというイメージで、「忍足っぽい!」と思っていたんです。それなのに実はすごく熱いし努力家で、イメージと違う一面を持っているところがあって、尊敬しています。

――向日岳人役の小辻庵さんは?

庵も、すごく面白い(笑)。僕が言うのもおこがましいですけど、いろんなことに対してセンスがある。その場の空気が読めるのは、周りを良く見ているんだなという感じがして、お芝居でも生かされているんだと思います。あと、めちゃくちゃムードメーカーです! 最初静かだったのに、小屋入りしたぐらいから本性を現しはじめて、盛り上げてくれます(笑)。いつも楽しくしてくれる!

――最後に、芥川慈郎役の横山賀三さんは?

賀三も明るいです。賀三は……なんかもう、ハッピーギャルみたいな(笑)。もしかしたらまだ隠してるところもあるかもしれないと思うんですけど、あの氷帝公演を乗り切った仲なので、みんな素をさらけ出せてるだろうというところでいうと、賀三はけっこう明るめのギャルって感じですね。

――そんなに何回も言うほどなんですか?

元気な時のジローみたいな感じで、はしゃぐときはすごいはしゃぐので(笑)。ただそれだけではなく、キャリアも感じます。氷帝公演ではジローのソロがわちゃわちゃした明るめの曲だったんですけど、今回の六角公演の氷帝の曲でのジローのソロパートについては、初めて歌稽古で賀三が歌ったときに「すごいな」と思いました。山田健登も「いいね、賀三くんうまいね」と、ニコニコした目で言っていて、「本領発揮してきたな」と思いました。

――聞くところによると、「横山賀三ゲーム」というものが流行ったとか。

前回の氷帝公演のどこらへんで始まったか覚えてないんですが、 急に流行り始めて。僕はあんまりやってないんですけど、意味がわからないゲームをやってますね(笑)。何公演か、声出し代わりにやってました。

■『新テニミュ』にも続けて出演

――10月からはミュージカル『新テニスの王子様』The Third Stageにも出演されるとのことで、現時点での率直な感想もぜひお聞かせください。

次は世界へ……どうなるんでしょうね? ドイツのエキシビションマッチで跡部と入江がダブルスを組むんですが……原作での描写は一瞬なんですよね。どこをどう描かれるかわからないですけど、「The First Stage」での試合を経て、跡部と入江でダブルスを組めたらいいなと思っています。それから、今回新たに柳、幸村が出てくるのも新鮮です。

――馬上テニスで話題のフランス代表プランス・ルドヴィック・シャルダールも…。

馬上テニス、どうやるんです!? しかも、かなりグローバルな稽古場になりそうですね。あと熱いのは、もっちー(持田悠生)が不二周助として出演することです。ミュージカル『新テニスの王子様』The First Stageでテニミュボーイズをやっていたもっちーが、不二として新テニミュに帰ってくるのが、熱いなあ。

――演じる上では『新テニミュ』『新テニミュ』『テニミュ』『テニミュ』『新テニミュ』といった流れになると思いますが、どういう感覚ですか?

時空が歪んでいて、やばいです(笑)。両方に出ている青学(せいがく)メンバーも大変だと思います。『新テニミュ』で先を演じている上で、『テニミュ』4thシーズンにも出演することが本当に難しいのですが、そこも楽しいところというか。

逆に、氷帝公演で実際に健登が演じる手塚とのS1の試合をやったからこそ、もう1回、『新テニミュ』The First Stageで入江とのS1をやりたいと、改めて思います。もちろん当時も死ぬ気でやったし、原作も読んで挑んだんですが、実際に氷帝公演で試合を体験したら、その後の時間軸で演じる時の気持ちも絶対変わってくると思うんです。

他にも、山田健登が六角までを演じた手塚として、大和とのシングルスを演じるところも観たいなと思って。『テニミュ』を演じた上で、もう1回『新テニミュ』を演じたいというのは、一生言い続けます。

■20周年を迎え、先輩の思いも受け止める

――『テニミュ』は2023年で20周年ということで、そのタイミングで跡部を演じていることについてはいかがでしょうか?

歴史的なアニバーサリーイヤーで、氷帝公演をできたのが……いや待ってください、記念日が4月30日? ギリ氷帝が波に乗れてない!? 悔しいです!(笑)

でも20周年なんて、それだけ続くことはなかなかないと思うと……まず原作のすごさと偉大さがあるのでしょうし、最初の2003年からいろいろなキャスト、スタッフの方々が紡いでつなげてきた思いや情熱があったからこそだと思います。今でこそ2.5次元文化が浸透していますけど、きっと当時は挑戦的なことだったと思うんです。伝説になる公演を皆さんが続けてくださったからこそなので、そういう思いは1番忘れてはいけないのだと受け止めています。

僕も昨年参加した『テニソニ』で加藤和樹さんとお会いして、「和樹さんが伝説を作ってくれたからこそ、今、僕たちが公演をできているのだと思います」と言ったら、「そんなつもりはまったくなくて、その時を全力で生きてたのが、たまたまそうなっただけ」とおっしゃっていたので、「かっこいい!」と思ったんです。だからみなさんの情熱とか愛とか、いろんな全力が根本にあって、20周年という記念すべき年に公演できることを、忘れずにつないでいきたいし、この先『テニミュ』40周年の頃には、僕たちが伝説だと言われていたらうれしいです。

――『テニミュ』出身の方にもインタビューすると、他の現場で会っても卒業生感覚で盛り上がるとか。

それはそうかもしれないです。僕もこの前まで参加していた舞台で『テニミュ』出身者が5人いて、ちょうど20周年の日に稽古に参加していたのは4人だったんですけど、その4人で「おめでとうございます」と写真を撮りました。いろいろな現場で出身者に会えるのは、『テニミュ』が続いているからこそだし、そういう場で“跡部いじり”をされることもあります。例えば眼鏡をあげる仕草があったりしようものなら「おいおいおい!」「インサイトだ!」と言われるので、「いや、そういうつもりないから!」というやり取りがあったりします(笑)

――ちなみにオーディションを受けたいと思ったのはいつからだったんですか?

もともと原作の『テニスの王子様』が好きだったので、20歳くらいの時に音楽活動をしながら「『テニミュ』を受けたい」という話はしていました。その時は音楽事務所だったので、結局オーディションも受けずに終わったんですが、もし当時受けていたら、絶対に跡部にはなっていなかったと思います。誰になってたのかな? そもそも受かっていたのかもわからないです。

――それは縁とタイミングを感じますね。原作の許斐剛先生に対しての思いもぜひお聞かせください。

もう神様です。メールで「お誕生日おめでとうございます」と送らせてもらったりして、やり取りさせてもらっていること自体が、正直「おかしくない?」「僕、いいんですか?」と思うんですけど、それも受け止めてくださる愛の深さ……。愛してくれるからこそ愛されるというのか、いろいろな方が許斐先生を好きな理由も感じています。本当にすごい方です。

■高橋怜也
アーティストとして芸能活動を始め、2020年にミュージカル『新テニスの王子様』The First Stageで初舞台。主な出演作にLive Musical「SHOW BY ROCK!!」-DO根性北学園編-夜と黒のReflection (21年)、RICE on STAGE「ラブ米」~Rice will come~(21年)、『Oh My Diner ~踊るぶんぶん狂想曲~』(22年)、MANKAI STAGE『A3!』シリーズ(22年~)など。