第36期竜王戦(主催:読売新聞社)は、決勝トーナメント準々決勝の永瀬拓矢王座-豊島将之九段戦が7月13日(木)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、150手の熱戦を制した永瀬王座がベスト4進出を決めました。

矢倉対雁木の対抗形

振り駒で先手となった豊島九段が角道を開けて対局が始まります。横歩取りや角換わりの展開も予想される中、本局では後手の永瀬王座が雁木囲いに囲う趣向を見せました。続けて右四間飛車の攻撃陣を敷いた永瀬王座に対し、豊島九段は自玉を金銀四枚からなる銀矢倉の堅陣に収めて戦いの時を待ちます。

ジリジリとした間合いの計り合いが続いたのち、先手の豊島九段が右辺の歩を突き捨てて戦端が開かれます。端で手にした歩を元手に飛車先に継ぎ歩を放ったのは右桂の活用で後手の玉頭を直撃する方針ながら、受けの達人・永瀬王座も丁寧に面倒を見て崩れません。反対に永瀬王座も小駒を駆使した攻めに転じ、局面はさらに激しさを増しました。

永瀬王座が体を入れ替え勝利

盤面全体を使った押し引きが続きます。対局開始から11時間が経過し持ち時間も双方30分を切ったころ、手番を握った豊島九段は銀取りの桂打ちでペースをつかみます。銀を取ったあと再び金取りに桂を打ったこの「おかわりの攻め」が厳しく局面は豊島有利の流れになるかと思われましたが、後手の永瀬王座は直後に勝負手を用意していました。

自玉近くに垂らされた歩を手抜いて反撃を開始した永瀬王座は、先手の玉頭に歩を垂らす秘策を用意していました。飛車金両取りの角打ちがあるため、先手はこの歩を取ることができません。実戦で豊島九段はやむを得ず銀を投入して自玉を守りますが、こうなるとうまく永瀬王座が攻守を入れ替えるのに成功した格好です。

このあとも緩急自在の指し回しで優位を拡大した永瀬王座は豊島九段の粘りを振り切って勝勢を確立。終局時刻は22時55分、最後は自玉の受けなしを認めた豊島九段が投了を告げて永瀬王座のベスト4進出が決まりました。永瀬王座は次局で挑戦者決定戦進出をかけて羽生善治九段-三浦弘行九段戦の勝者と対戦します。

  • 2年前の挑戦者決定戦で藤井聡太二冠(当時)に敗れている永瀬王座は番勝負でのリベンジを目指す(写真は第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局のもの 提供:日本将棋連盟)

    2年前の挑戦者決定戦で藤井聡太二冠(当時)に敗れている永瀬王座は番勝負でのリベンジを目指す(写真は第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)