クリエイターエコノミーはプロデューサーエコノミーへ進化する

最近アメリカのマーケティング市場では「プロデューサーエコノミー」という概念が新たに提唱されています。プロデューサーエコノミーは、クリエイターエコノミーが近い将来のうちに進化するだろうと、私たちが考えているものです。

クリエイターエコノミーとは、YouTubeやTikTok、Instagramなどのソーシャルメディアの著名人やタレントなどのクリエイターが、何百万ドルもの収益を生み出していることを意味します。しかし、一般的なクリエイターは、その収益の約半分しか得ていません。残りの半分は、それを配信するプラットフォームに流れています。

誤解しないでいただきたいのは、ソーシャルメディアのプラットフォームがクリエイターに対して、素晴らしいサービスを提供していることです。プラットフォームはクリエイターのために視聴者を獲得し、番組制作のためのさまざまな能力を与えています。

しかし、そこでクリエイターは、十分な能力があってコンテンツを定期的に制作できても、視聴者を自分のものにはできません。視聴者はプラットフォームに専有されているからです。

私はクリエイターが、なぜ自分のプラットフォームを持とうとしないかわかりません。もし私がソーシャルメディアのクリエイターなら、自分専用のサイトとアプリを持ち、視聴者に課金したり広告を運用したり、さまざまなデータを集めたりして、より大きな収益を得ることを考えるでしょう。そのほうが、視聴者をYouTubeやTikTok、Instagramに残し、自分以外の誰かのために収益を上げるより、よほど良いのではないでしょうか。

私は、別のプラットフォームを探せと言っているのではありません。自分のプラットフォームを持て、と言っているのです。私たちは「タレントファーストエコノミー」とでも呼ばれるような新たな流れが生まれると信じています。配信が先か、コンテンツが先か、ではなく、それらを実現する才能(タレント)が最初にあるということです。

テレビや映画の世界では、魅力的なコンテンツを持っていたり、あるいは収集したりして、自分たち自身の視聴者を獲得するプロデューサーが存在します。例えば、アメリカのションダ・ライムズは、複数のネットワークで何十本ものテレビ番組を制作しています。彼女にはブランドがあり、多くの人が彼女のことを知っています。もし彼女だけのOTTサービスを立ち上げれば、きっとうまくいくことでしょう。

そこで、YouTubeやNetflixを利用しているクリエイターも、自身がプロデューサーとなって、自分たちの視聴者に直接アプローチできる独自のデジタルチャンネルを持ち、自分たち自身の経済的利益を生み出すことを考えれば良いではありませんか?

これが、「プロデューサーエコノミー」と私たちが呼んでいるものです。私たちは近い将来、クリエイターエコノミーがプロデューサーエコノミーに進化すると考えています。自分たちと視聴者のために実際にコンテンツを作るクリエイターは、一歩踏み出せば、自分たち自身のビジネスチャンスも作り出すことができるのです。

例えば、ミスタービースト(MrBeast)で考えてみましょう。ミスタービーストは、世界有数のYouTuberです。ミスタービーストはYouTubeのビデオを制作し、何百万ドルもの収益を上げています。

ただ、彼がYouTube以外で手がけたサイドビジネスが、最初はハンバーガーショップのチェーン店、次にチョコレートバーの会社だったことについては疑問です。うまくいくかもしれませんが、どちらも本業からちょっと離れた領域なので、YouTuberのサイドビジネスとして適しているとはいえないと思います。

これがもし、彼が自分の定額制OTTサービスを持っていて、3,000万人のYouTubeファンの代わりに、100万人のスーパーファンに月5ドルを支払ってもらう、ということだったとしたらどうでしょう?そうすれば、1年で6,000万ドルのビジネスになります。ハンバーガーやチョコレートバーを売るより、よほど簡単に収益を上げることができるでしょう。