2023年7月より第2クールが好評放送中のTVアニメ『シュガーアップル・フェアリーテイル』より、ヒュー・マーキュリー役を演じる前野智昭とキャットことアルフ・ヒングリー役を演じる寺島拓篤が語ったメッセージを紹介する。
角川ビーンズ文庫より刊行中の三川みりによる小説を原作とする本作は、2023年1月よりTVアニメがスタート。衝撃的な幕切れとなった第12話からおよそ3カ月。待望の第2クールが7月より好評放送中。
注目の第2クールが放送の中、ヒュー・マーキュリー役を演じる前野智昭とキャット役を演じる寺島拓篤が対談。自身の演じるキャラクターや第1クールの振り返りのほか、第2クールの見どころなど、本作の魅力を存分に語ってくれた。
●前野智昭と寺島拓篤が語るTVアニメ『シュガーアップル・フェアリーテイル』
──ご自身が演じるキャラクターについて教えてください
前野智昭 ヒュー・マーキュリーは、銀砂糖子爵というすごく偉い立場なのですが、それをひけらかすこともなく、その立場を守りながらも、アンたちをうまくサポートして、力になってくれる、良きお兄さんのような立ち位置のキャラクターです。自分自身もすごく気に入っているのですが、前に出すぎず、引きすぎずという絶妙なポジションで、アンたちにとっては最後の切り札みたいな感じで活躍します。要所要所でアドバイスだったり、厳しめの助言だったり、損得関係なく動いてくれるキャラクターなので、ヒューのことを好きだと言ってくれる方も多いと伺っています。第2クールもそういった活躍が見られると良いなと思っています。
寺島拓篤 キャットことアルフ・ヒングリーは、前野さんが演じるヒューと同じ銀砂糖師なのですが、ヒューとは真逆の感覚で生きている感じがします。アンにとってヒューは、社会的な面ですごく助けになってくれる人ですが、キャットは自ら社会的な地位を捨てて、職人としての領分を大事にして生きている人なので、ヒューとはまた違った面でアンの助けになってくれるキャラクターです。アンが職人として成長する上で大事なことを教えてくれるお兄ちゃん的な存在ですね。ある意味、師匠とも言えるポジションで、当然腕も良く、人柄はちょっとぶっきらぼうですが、自分が作りたいと思った人にしか自分の腕を振るわない、本当に職人気質な人です。第2クールでどういう活躍をするのか、まだ何とも言えませんが、話が進むにつれて、アンは砂糖菓子職人の社会の中でどんどん存在を確立していくので、キャットとは少し離れていく存在にはなります。その中で、どのようにキャットがアンの力になるのか、また力にならずともどういうところで登場して活躍するのか、そのあたりも楽しみにしていてほしいです。
──それぞれの役を演じる上で気をつけているところはありますか?
前野 登場した時点では、敵か味方かわからないような感じで、多少ミスリードを狙うような描写もあったかもしれませんが、そのあたりは特に強く意識はせず、あえて怪しくみせようとかはなかったですね。
寺島 あまりこの作品ではそういうところはないですね。
前野 強いていえばジョナス?
寺島 最初だけね(笑)。
前野 良いやつかと思ったらとんでもなかったりもしましたが、それ以外はあまりないんじゃないでしょうか。
寺島 あえて表面を取り繕うような役作りはしてませんね。
前野 ただ、だいたいの登場人物が、最初に出てくるときは何か怪しい感じで、第2クールも、この人は本当に信じても良いのかなって人がちょいちょい出てきます(笑)。でも、演技として、怪しさを意識するようなことはなかったです。
──お互いのキャラクターについての印象を教えてください
寺島 非常に因縁深いキャラクターですよね。お互いにマーキュリー工房で腕を磨いてきた間柄で、キャットのあだ名をつけたのもヒューですから。キャットからすると、あまり面白くない人ではありますが、職人としての腕はきっと認めているんだろうなという印象はあります。
前野 第1クールで直接的に絡むシーンはなかったんじゃないかなって……間接的に話すようなところはありましたが。
寺島 想像膨らむ関係性ではありますね。キャットと名付けられるまでの経緯とか。
──キャットはさん付けで呼ばれるのを嫌がりますよね
寺島 あれは、単純に猫にさん付けで“猫さん”というのは、子猫ちゃんみたいで嫌なんでしょうね。特に年下に可愛らしく扱われる感じが。キャットと呼ばれること自体はもう諦めているんだと思います。
前野 有名になっちゃってるからね。
寺島 アルフ・ヒングリーよりもキャットの名前のほうが有名なのかも。
前野 でも、アルフ・ヒングリーってすごい人なんだよね。アンが憧れていた砂糖菓子職人なんだから。
寺島 それ以上に、キャットと呼ぶヒューがすごい人なので、そのヒューが呼ぶ名前だから余計に広まっちゃったんだと思います。
──第1クールで印象に残っているシーンはありますか?
前野 やはりジョナス絡みのところがすごく鮮明に残っているのですが、それ以外だと、第6話から第8話までで描かれたフィラックス公の話は非常に印象深かったです。作れと言われて作っても、違う、違う、違うで、何が違うのかもっと具体的に言ってやれよって思ったものです(笑)。普通は大体そこでめげてしまうと思うのですが、そこでめげなかったアンはすごいですよね。
寺島 何かこの話は温度感もちょっと違った気がしますね。ちょっと冷たい感じがするお話でした。
前野 冷たい感じがするけど、最後は浄化されるようなところがあって、フィラックス公も救われたんじゃないかなって。すごく印象的なお話でしたが、やはりここでもジョナスの酷さが(笑)。
寺島 僕はシーンと言うより、完成した砂糖菓子が毎回本当にきれいに描かれていて、それに衝撃を受けました。第2クールに出てくる砂糖菓子も、息を飲むくらいにきれいで、皆さんもビックリすると思います。砂糖菓子の表現がすごすぎて、毎回放送が楽しみでした。僕らが知っているこちらの世界のお菓子よりも、キラキラ度が増していて、本当に芸術的ですよね。
前野 あれはもう食べられない。
寺島 だからこそ、あの世界の銀砂糖師とか砂糖菓子職人は本当にすごい存在なんでしょうね。
──キャットの「誰のことも憧れるな」というセリフも印象的でした
寺島 職人として、本当に人生をかけていることがよくわかるセリフだと思います。自分の人生は自分の人生だし、他人の人生は他人の人生なので、そこに技や経験を重ねてはいけないということを、自分で言いながら、ハッと気付かされるところがありました。やはり多少通ずるところがある職種なので、自分自身が何をなせるかをあらためて考えないといけないなと思いました。
前野 大谷翔平さんも同じようなことをWBCの決勝前に言ってましたよね。「憧れるのをやめましょう」って。アメリカの選手たちに憧れてしまったらそれを越せなくなる。僕らはそれを越えるためにやって来たので、今日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝利のために戦いましょうみたいなことを言っていて。それはキャットが言ったこととちょっと通じるところがあるなって思いました。
寺島 キャットは大谷翔平レベルなんだ。
前野 ちゃんと本質をついていますよね。
寺島 やはりそこは大事だと思います。自分自身、憧れている先輩はたくさんいますが(笑)。
前野 我々も少しハッとさせられるセリフだと、今あらためて感じています。あと、第12話の最後のシーンも印象的でした。回を増すごとにアンとシャルの距離感が徐々に近くなっていくのですが、近くなっていくがゆえに生まれる自己犠牲の精神みたいなものが、より話を面白くしていくのだと思います。視聴者目線で言えば、すごくもどかしくて、共感を覚えるシーンですが、第2クールもそのあたりが丁寧に描かれていきますので、アンとシャルがこれからどうなっていくのかに注目していただきたいです。
寺島 本当に絶妙なバランスだと思います。アンとシャルの2人を軸にして進む物語のラインと、アンがいろいろな人と出会って、職人として、そして人間として成長していくライン。この2つがすごく絶妙なバランスで同時に走っているからこそ、物語が面白くて、広がりもあるのですが、それをミニマムに集中できるつくりにもなっている。それは本当にすごいことだと思っています。
──ちなみに今回のアフレコはどのような感じで行われたのですか?
前野 コロナ対策のため最初から最後まで分散収録で、2クール通して、お会いできなかったキャストもいらっしゃったので、なかなかキャスト同士でコミュニケーションが取りづらい状況ではありました。
寺島 我々は比較的、個人で出てくるシーンがほとんどなので、お互い、アンとミスリルたちがいた収録が多かったと思います。
前野 掛け合いでの収録ができたのは良かったのですが、全容を把握するのがちょっと難しかったです。我々も、廊下ですれ違うとか、ロビーで会うくらいでしたし。
寺島 あとはラジオで一緒になったくらい?
前野 それぐらいかな。ただ、放送は分割2クールになっていますけど、アフレコ自体は続けて行われたので、変に雰囲気が変わらずに収録できたのは良かったです。
寺島 ヒューも同じだと思いますが、キャットはずっと出ているわけではないので、収録のたびに、ストーリーが一気に展開していて、この間に何があったの?と思うことが多かったです(笑)。
──衝撃的な終わり方をした第1クールですが、そこから続く第2クールの注目ポイントを教えてください
寺島 アンには、手をかえ品をかえ、また様々な試練が降り掛かってきます。それを、アンとシャル、ミスリルや仲間たちがどういう風に乗り越えて成長していくのかは、変わらずこの作品の魅力のひとつだと思います。ペイジ工房という新しい工房のメンバーが出てきて、逆に、アンの存在が浮き彫りになってくるので、これまでとは違った視点でアンを見守れるのではないかと思います。
前野 ヒューとしては、第1クールを通して、アン・ハルフォードという人間への理解度が蓄積されて、自分が手助けしてしまうのは簡単だけど、はたしてそれで本当に良いのかどうかを考えられるくらいまでの関係性が築けていると思うので、第2クールでは、銀砂糖子爵としての立ち位置をうまく守りながら、自分ができる範囲で、本当にアンのためになるであろう協力の仕方をするので、すごく縁の下の力持ち感が強いです。そのあたりの、ヒューによる絶妙なパスみたいなものを楽しみにしていただきたいです。
──砂糖菓子がテーマの作品ですが、お二人はスイーツはお好きですか?
寺島 好きです!最近でいうと、ファミリーマートのクレープが好きなんですけど、めちゃくちゃ優秀なんですよ。
前野 美味しそう。
寺島 そもそもクレープが好きなのですが、なかなか食べる機会ってないじゃないですか。特に皮が好きなんですけど、「ファミマ・ザ・クレープ」は、薄いのにもちっとしている感じがすごくて(笑)。食べやすいところもすごく優秀です。
前野 僕は、治一郎のバウムクーヘンがすごく好きで、カットされたものが家にあったりします。現場でも差し入れでいただくことがあって、小腹がすいたら食べてる感じです。
──前野さんは料理をなさると思いますが、自分で作ったりはしますか?
前野 料理はしますけど、お菓子作りは……数えるくらいしかないです。チーズケーキとか、昔はよく作ったんですけど。
寺島 よく?
前野 昔はね。
寺島 僕は自分で作ったりはしませんが、妻がクッキーを作ってくれたりするので、それを楽しみにしていたりします。
──それでは最後に、第2クールを楽しみにしている方へのメッセージをお願いします
前野 第2クールも新たなキャラクターたちが登場して、物語もさらに動いていきますが、その中で、アンとシャルの距離感はもちろん、ヒューの銀砂糖子爵としての物語もいろいろなところで描写されますので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。第1クールと同様、きれいな部分だけではなく、人間のやや醜い部分や目をそらしてしまいそうな部分もかなり丁寧に描写されているので、ぜひいろいろな視点から、楽しんでいただけたらうれしいです。
寺島 2クール目に入り、シャルが戦士妖精である必要性が出てくるなど、ちょっと今までとは違う空気感も新たな刺激になるのではないかと思います。砂糖菓子の描画の美しさもどんどんレベルが上っていきます。観終わった後には何か甘いものを食べたいと思わせる、深夜にはちょっと危険なアニメにもなっていますので、そういった刺激にも耐えつつ、存分に面白く観ていただける仕上がりになっていると思いますので、ぜひご期待ください。
──ありがとうございました
TVアニメ『シュガーアップル・フェアリーテイル』は、2023年7月より、AT-X、TOKYO MXほかにて好評放送中。各詳細はアニメ公式サイトにて。
(C)2023 三川みり・あき/KADOKAWA/「シュガーアップル・フェアリーテイル」製作委員会