dynabook G8/Wは、13.3型ディスプレイを搭載したクラムシェルスタイルのノートPCだ。
Dynabookが擁するクラムシェルスタイルのモバイルPCラインナップは、14型のRシリーズとMシリーズ、そして、13.3型のGシリーズ、GSシリーズ、Sシリーズと幅広いタイプをそろえている。
特に、RシリーズとGシリーズは「プレミアムモバイルノート」というカテゴリーに分類されている。
RシリーズとGシリーズの違いについて、ディスプレイサイズ以外のシリーズとしての“性格付け”としてDynabookの開発陣は「CPUの能力をフルに引き出すRシリーズ、軽量であることを最優先にしつつCPUをバランスよく搭載するGシリーズ」と説明している。
(2022年8月8日掲載のインタビュー記事『Core i7搭載の「dynabook G」よりCore i5搭載の「dynabook R」が速いのはなぜなんだ?』」より)
2023年夏モデルとして登場した最新のdynabook Gシリーズでもそれは同様なのか。今回はその上位構成モデルでCPUにCore i7-1360Pを採用したdynabook G8/Wで検証していく。
「おぅ」と声が出るほど軽い13.3型ノートPC
dynabook Gシリーズは、2023年夏モデルにおけるDynabookのクラムシェル型ノートPCとして、本体の重さが最軽量のモデルだ。
2023年6月時点でdynabook Gシリーズの店頭モデルラインナップはCPUにCore i7-1360Pを載せたdynabook G8/Wと、Core i5-1340Pを載せたdynabook G6/Wの2モデルを擁する。
G8/WとG6/WではCPU以外にもシステムメモリ容量(G8/Wで16GB、G6/Wで8GB)、ストレージ容量(G8/Wで512GB、G6/Wで256GB)が異なるが、本体の重さは変わらない。
ただ、本体のカラーリングがオニキスブルーのモデルで約875g、パールホワイトで約879gと、パールホワイトが約4g重くなる。
とはいえ、その差はわずかであり、いずれにしても13.3型ディスプレイ搭載モバイルノートPCとして軽量であることに変わりはない。
実際、本体を片手で持ち上げると「おぅ」と声が出るほどに軽い。あまりにも軽く筐体の質感は「金属でない何か」のように華奢で、その強度に不安を感じるかもしれない。
しかし、本体パネルの素材には、落下に伴う衝撃を受けやすい液晶ディスプレイカバーや本体のベース部分に、マグネシウム合金を採用。
加えて、天面の厚みを薄くしてもリブ加工などで構造的に強度を確保しやすいマグネシウム合金ダイカストを採用することで、堅牢性と軽量化を両立している。
堅牢性を示す指標として使われることが多い米国防総省制定のMIL規格においては、次の9項目をMIL-STD-810Hに準拠した方法で実施している。
- 落下(26方向76cm落下)
- 衝撃(6方向3回)
- 振動(前後左右上下軸1時間)
- 高度(4572m相当気圧まで減圧)
- 高温(30~60度24時間7サイクル)
- 低温(マイナス20度)
- 温度変化(マイナス20~60度6時間)
- 粉塵(6時間吹き付け)
- 太陽光照射(疑似太陽光24時間3サイクル)
また、Dynabook独自のテスト基準として面加圧、キーボード耐久、ヒンジ開閉、静電気などの耐久試験を実施している(ただし、dynabook Rシリーズなどで実施している防滴試験は行っていない)。
画面はフルHD、鮮やかな表示のIGZO液晶を継承
ディスプレイの解像度は1,920×1,080ドットで、これは従来のdynabook Gシリーズと変わらない。
最近のモバイル志向ノートPCでも、横縦比16対10のディスプレイを採用して横2,000ドット台の高解像度モデル、もしくは、横方向1,920ドットでも縦方向を1,200ドットにしたモデルが登場している。
それらと比べると今となっては1,920×1,080ドットという解像度は「ちょっと狭い」と思うかもしれない。ただ一方で、軽量化のために画面サイズを節約したい場合に、16対9のディスプレイパネルは重宝する。
また、ディスプレイサイズが13.3型でもこの解像度ならスケーリングを100%に設定しても、表示されたフォントを無理なく視認できる。
同じサイズのディスプレイで横方向2000ドット台の解像度の場合、スケーリング設定は頑張っても125%や150%となることを考えれば、1,920×1,080ドットという解像度は妥当なラインだといえるだろう。
dynabook G8/WでもIGZO液晶を継承している。そのおかげで、画面表示は明るく色彩表現も従来モデルと同様に鮮やかだ。
タイプ感は軽め。新たにWi-Fi 6Eが利用可能に
キーボードはピッチを19ミリ(キートップサイズは標準で15.5ミリ)、ストロークを1.5ミリ確保している。
タイプの感触は軽く、キートップを力強く押し込むと本体はわずかにたわむ。タイプしたときの音はキャシャキャシャと大きく、キーのレイアウトでは縦方向のサイズが通常キートップの半分しかないカーソルキーのタイプで苦労する。
このあたりも従来モデルと同様だ。このあたりは、軽量化を重視したトレードオフの結果として受け入れられるかどうかが、dynabook G8/Wを選択するか否かの分岐になるだろう。
本体サイズは幅306.0×奥行210.0×厚さ17.9mmと、こちらも従来モデルから変わらない。13.3型ディスプレイ搭載モバイルノートPCとしては平均的なサイズだ。
本体搭載インタフェースとしては、Thunderbolt 4(USB 4 Type-C)を2基、加えて、海外PCの薄型軽量ノートPCでは載せなくなってきた、しかし日本のビジネスシーンで依然として必要とされているインタフェースとして、USB 3.2 Gen1 Type-Aを2基と、映像出力としてHDMI出力、さらに、有線LANで利用するRJ-45まで備えている。
無線接続インタフェースは、6GHzに対応したIEEE802.11axを含むWi-Fi 6Eが利用できるようになった。Bluetoothは5.1を利用できる。なお、評価作業時点においてLTEなどが利用できるSIMスロットを備えた構成は用意していない。
Core i7-1360P搭載の実力は? ベンチチェック
先ほども述べたように、G8/WではCPUに第13世代Intel Coreプロセッサ「Core i7-1360P」を採用した。
なお、システム構成をカスタマイズできるWeb直販モデル(dynabook GZのGZ/HW)でも選択できるCPUはCore i7-1360PとCore i5-1340Pのみとなっている。
Core i7-1360Pは処理能力優先のPコアを4基、省電力を重視したコアを8基組み込んでいる。Pコアはハイパースレッディングに対応しているので、CPU全体としては12コア16スレッドだ。
定格動作時の動作クロックはPコアで2.2GHz、Eコアで1.6GHz。ターボ・ブースト利用時の動作クロックはPコアで5GHz、Eコアで3.7GHzまで利用可能。
TDPはベースで28W~64Wとなる。グラフィックス処理にはCPU統合のIris Xe Graphicsを利用し、演算ユニットは96基で動作クロックは1.5GHz。
処理能力に影響するシステム構成を見ていくと、試用機のシステムメモリはLPDDR5-4800を採用していた。容量は16GBでユーザーによる増設はできない。
ストレージは容量512GBのSSDで試用機にはSamsungのMZVLQ512HCJQを搭載していた。接続バスはNVM Express 1.4(PCI Express 3.0 x4)だ。
dynabook G8/Wの主な仕様 | |
---|---|
CPU | Core i7-1360P |
メモリ | 16GB (LPDDR5-4800) |
ストレージ | SSD 512GB(PCIe 4.0 x4 NVMe、MZVLQ512HCJQ-00B07 Samsung) |
光学ドライブ | なし |
グラフィックス | Iris Xe Graphics(CPU統合) |
ディスプレイ | 13.3型 (1,920×1,080ドット)非光沢 |
ネットワーク | IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax対応無線LAN、Bluetooth 5.1 |
サイズ / 重量 | W306.0×D210.0×H17.9mm / 約875g |
OS | Windows 11 Home 64bit |
Core i7-1360Pを搭載したdynabook G8/Wの処理能力を検証するため、ベンチマークテストのPCMark 10、3DMark Night Raid、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark 8.0.4 x64、そしてファイナルファンタジー XIV:暁月のフィナーレを実施した。
なお、比較対象としてCPUにCore i7-1260Pを搭載し、ディスプレイ解像度が2,560×1,600ドット、システムメモリがLPDDR5-5200 16GB、ストレージがSSD 1TB(PCI Express 4.0 x4接続)のノートPCで測定したスコアを併記する。
ベンチマークテスト | dynabook G8/W | 比較対象ノートPC(第12世代) |
---|---|---|
PCMark 10 | 5448 | 4732 |
PCMark 10 Essential | 9665 | 9370 |
PCMark 10 Productivity | 7007 | 6475 |
PCMark 10 Digital Content Creation | 6480 | 4740 |
CINEBENCH R23 CPU | 8244 | 7549 |
CINEBENCH R23 CPU(single) | 1766 | 1398 |
CrystalDiskMark 8.0.4 x64 Seq1M Q8T1 Read | 6839.39 | 6539.61 |
CrystalDiskMark 8.0.4 x64 Seq1M Q8T1 Write | 4770.38 | 4940.85 |
3DMark Night Raid | 16761 | 11262 |
FFXIV:暁月のフィナーレ(最高品質) | 3999 | ― |
結果を見ていくと、第12世代Coreプロセッサを載せた比較対象ノートPCと比べ、全ての項目において順当に高いスコアが出ていることがわかる。
特にコンテンツ制作に関連した処理能力スコア、3DMark Night Raidといったゲームベンチマークテストで大きくスコアを向上させている。
また、今回の評価機が採用しているSSDがSamsungの上位モデルであったことから、CrystalDiskMarkのスコアも比較対象と同等の値となった(実をいうと比較対象のノートPCとはdynabook G8/Vであったりする)。
バッテリー駆動時間を評価するPCMark 10 Battery Life Benchmarkで測定したところ、Modern Officeのスコアは6時間28分(Performance 4945)となった。
ディスプレイ輝度は10段階の下から6レベル、電源プランはパフォーマンス寄りのバランスに、それぞれ設定している。
なお、バッテリー駆動時間は、公式データにおいてJEITA 2.0の測定条件で最大24時間となっている。内蔵するバッテリーの容量はPCMark 10のSystem informationで検出した値は51,251mAhだった。
このほか、外出先で使うときに気になる騒音と、薄型モバイルノートPCで注意したい表面温度を把握するために、電源プランをパフォーマンス優先に設定して3DMark NightRaidを実行。
CPU TESTの1分経過時において、Fキー、Jキー、パークレスト左側、パームレスト左側、底面のそれぞれを非接触タイプ温度計で測定した表面温度と、騒音計で測定した音圧の値は次のようになった。
表面温度(Fキー) | 41.8度 |
---|---|
表面温度(Jキー) | 40.6度 |
表面温度(パームレスト左側) | 29.6度 |
表面温度(パームレスト右側) | 29.5度 |
表面温度(底面) | 40.4度 |
発生音(暗騒音36.7dBA) | 41.8dBA |
軽さと性能のバランスに優れた、そつのない一台
dynabook G8/Wは13.3型ディスプレイ搭載ノートPCとしては軽く、それでいて堅牢性は十分に確保している。
加えて、第13世代Coreプロセッサと上位クラスSSDの採用で、体感的な処理能力も高い。いわば、モバイルノートPCに求められるトレードオフのバランスに優れたモデルということができるだろう。
dynabook Rシリーズのような“華”のあるノートより、そつのないモバイルノートPCに価値を見出すユーザーならこちらを選んで後悔することはないだろう。