市場拡大や開業のしやすさから、近年、「買取業」が注目を集めています。不況に強く、個人でも始められる買取業に挑戦してみたい、と考えている人もいるのではないでしょうか。
では、実際に買取業を始めるには、どのような準備が必要なのでしょうか。この記事では、買取業の始め方について、起業の手順や必要な免許・手続き、どのような資金がどのくらい必要なのかを詳しく解説しています。また、買取業を成功させるポイントもまとめました。
■買取業を開業するときの準備と手順
買取業を始めるには、どのような準備をどの手順で行えばいいのでしょうか。開業の仕方を以下にまとめました。
1.コンセプトを設定する
最初に、これから始める買取業の「コンセプト」を設定しましょう。買取業に限らず、ビジネスを始める際には、このコンセプトの設定が重要です。コンセプトの設定とは、簡単にいうと「どのような買取業をしたいのか」を決めることです。
具体的には、「誰に」「何を」「どのように」をまとめるといいでしょう。つまり、「どのような顧客をターゲットに、どのような商品・サービスを、どのような方法で販売するのか」を決めるのです。
このようなコンセプトを設定しておくと、事業計画や経営方針を立てる際にも役立ちます。また、開業後の運営においても、業務の優先順位などさまざまな判断の基準になりますので、ぜひはじめにしっかりと設定しましょう。
2.開業資金を準備する
コンセプトを設定し事業計画を立てたら、資金計画も策定し、その計画に基づいて必要な資金を調達しましょう。自己資金だけでは足りない分は、融資や助成金・補助金などで工面するのが一般的です。
融資については、まず、政府系金融機関である「日本政策金融公庫」からの融資を検討するといいでしょう。新たに事業を始めたい人を対象とした融資制度があり、銀行から融資を受けるよりハードルが低く、担保や保証人なしで融資が受けられるケースもあります。
また、国や自治体が提供する助成金・補助金の利用もおすすめです。助成金や補助金は、それぞれ利用できる条件や支給される金額が異なりますので、内容をよく理解してから申請を行いましょう。
3.店舗・テナントを確保する
次に、店舗やテナントを探し、営業する場所を確保します。店舗やテナントを借りる際は、立地と費用のバランスをよく見て、費用対効果の高い場所を選ぶようにしましょう。
なお、買取専門店、リサイクルショップなど、買取業の種類に合った広さの物件を選ぶことも重要です。買取専門店の場合、さほど広いスペースは必要ありません。リサイクルショップの場合は、取り扱う商品や商品数によって必要な広さが変わります。
いずれにしても、競合が少なく、できれば駅の近くやショッピングモールのテナントなど、人の集まるところや目につきやすいところを選べれば理想的です。
4.古物商許可を取得し、開業届を提出をする
次に、買取業者として営業するための手続きを行いましょう。買取業を営むために必要な免許は、「古物商許可」のみです。古物商許可については、内容や申請方法を後ほど詳しく解説します。
また、個人事業主として開業する場合は、営業地域の税務署に開業届を提出する必要があります。
5.仕入れルートや販売先を確保する
買取業者として営業するには、仕入れルートや販売先の確保が必須です。たとえば、リサイクルショップを経営する場合、基本的には買取を希望する顧客から商品を買い取りますが、開業前にもある程度の商品を揃えておく必要があるため、以下のような仕入れ先から商品を仕入れておきます。
・古物市場(古物商許可が必要)
・古物の卸業者
・不用品回収業者
・ネットオークション
・メーカーや量販店
また、リサイクルショップ開業後に予想より買取希望者が少なくても、このような仕入れルートがあれば安心できます。
一方、出張買取という形で営業する場合は、買い取った商品を販売するネットワークの確保が重要です。出張買取は店舗を持ちませんので、Amazonや楽天などのECサイト、ネットオークション、フリマアプリなどインターネットを利用した販売方法と相性がいいでしょう。
6.スタッフを採用する
リサイクルショップなど店舗で営業する形態の場合、接客や商品の陳列、売上管理などさまざまな業務が発生するため、1人で全てをこなすのは難しいケースもあります。その場合、開業前にスタッフを採用しましょう。求人サイトへの掲載のほか、自社ホームページやSNSなどで募集するのも効果的です。
一方、買取専門店などの場合、1人でも充分業務をこなすことができます。人件費を考慮し、1人で営業できるスタイルを選ぶのもいいでしょう。
7.宣伝を行い、集客する
開店後、順調に売上を上げるためには、開業前から宣伝を行いましょう。目をひく看板の設置やチラシの配布のほか、インターネットを利用した宣伝には特に力を入れたいところです。
ホームページだけでなく、Twitter、InstagramなどのSNSも開業前に開設しておくと、開店準備とともにスムーズに集客活動が行えます。
■買取業に必要な免許や手続きとは
次に、買取業に必要な免許・手続きについて解説します。先ほどもあったように、買取業を行うために必要な免許は、「古物商許可」のみです。中古品(新品未開封含む)を取り扱う業者として開業する場合、店舗を構える地域の警察署(防犯係)に古物商許可を申請する必要があります。
無許可で営業してしまうと、「懲役3年または100万円以下の罰金」が課せられますので、注意しましょう。古物商許可の申請には、以下の書類が必要です。
1.許可申請書
2.添付書類
【個人許可申請の場合】
・略歴書
・本籍(外国人の方は国籍等)が記載された住民票の写し
・誓約書
・身分証明書
・URLの使用権限があることを疎明する資料
【法人許可申請の場合】
・法人の定款
・法人の登記事項証明書
・略歴書
・本籍(外国人の方は国籍等)が記載された住民票の写し
・誓約書
・身分証明書
・URLの使用権限があることを疎明する資料
なお、申請にかかる手数料は1万9,000円です。許可が下りるまでには40〜60日程度かかりますので、余裕をもって申請しておきましょう。
■買取業を始めるのに資金はどのくらい必要?
次に、買取業を始めるにあたって、どのような費用がどのくらい必要になるのか確認してみましょう。かかる費用と金額の目安は、以下の通りです。
・物件取得費…約100~400万円
・店舗内装費…約100万円
・設備費(鑑定ツール、什器、ネット環境など)…約100万円
・初期の仕入れ費…約100万円
・広告宣伝費(看板、チラシ、ホームページ作成)…約100万円
・人件費(人を雇う場合、採用や研修)…約60万円
・軽トラック購入費…約20~30万円
買取業のスタイルや規模などによっても必要な金額は大きく変わりますが、買取業を始めるには、600万円程度はかかることがわかります。この中でも、物件取得費は、地域や立地、店舗の規模によって金額に大きな差が生じますので、営業スタイルに応じて慎重に選びましょう。
また、必須ではありませんが、軽トラックがあると出張買取や仕入れ、購入者への配送を行う際に役立ちます。中古なら、20〜30万円とさほどお金をかけずに手に入れられるようです。
このほかに、運転資金もある程度確保しておきましょう。運転資金には、賃貸料や人件費(人を雇う場合)、買取資金、水道光熱費などが含まれます。運転資金は、営業スタイルによって金額が大きく異なりますが、50万円程度が目安となります。開業からしばらくは売上が安定しないこともありますので、3〜6ヶ月分の運転資金を用意しておくと安心です。
■買取業を成功させるポイント6つ
最後に、買取業を成功させるポイントを6つまとめました。買取業を始めてみようと考えている人は、以下の点を念頭に準備を進めていきましょう。
1.小規模経営から始める
買取業は、小さく経営することが可能なビジネスです。たとえば、買取専門店なら、買い取った商品を販売するスペースが必要ないため、小さい店舗でも営業できますし、スタッフを雇わずオーナー1人でも充分やっていけます。
つまり、家賃が抑えられ、人件費もかからず小さく経営できるのです。安定した経営のためにまずは小規模で始め、事業が軌道に乗ってきたら拡大を目指すといいでしょう。
2.余裕を持った資金調達を行う
買取業を成功させるには、余裕を持った資金調達も欠かせません。開業資金だけでなく、開業後の運転資金も充分確保しておくことが重要です。
資金にあまり余裕のない状態で開業準備を進めてしまうと、初期費用が想定以上にかさんだ場合、資金繰りが悪化し、短期間で廃業に追い込まれるケースも少なくありません。なお、運転資金に関しては、先ほどもあったように、3〜6ヶ月分用意しておくと安心できます。
3.安定した仕入、販売ルートを持つ
買取業の成功には、安定した仕入れ・販売ルートの確保も非常に大切です。たとえば、リサイクルショップが廃業する理由の8割は、「販売商品の枯渇」で占められており、安定的な仕入れルートを持つことがいかに重要かがわかります。先ほどもあったように、古物市場や不用品回収業者など、さまざまな仕入先を確保しておきましょう。
一方、買取専門店では、効率的に買取ができても、高値で売れる販売先がなければ利益が見込めません。一般的な買取専門店では、買い取った商品を古物市場に出品することが多いですが、古物市場は仕入れた商品がさらに別の顧客に転売されるため、販売価格が低くなりがちです。
そこで、ネットオークションやフリマアプリなどの販路を活用すれば、直接顧客に商品を販売することができるため、古物市場よりも高値での販売が可能になります。
4.できるだけ競合がいない地域を狙う
可能な限り、競合がいない、または少ない地域を狙って出店するのもポイントです。近くに競合店があると、価格競争や顧客の分散が起き、成功が難しくなるからです。
買取業を始める前には、出店を予定している地域に競合店がないかしっかり調べましょう。競合店がある場合は、出店地域を見直す、または、自分のビジネスに優位性があるかどうか見極めることが大切です。
5.インターネットを活用する
リユース市場においては、ネット販売の市場規模も拡大しています。店舗型のリサイクルショップであっても、ネットショップを並行して開設すれば、店舗の営業時間外でも商品の販売や買取の受付が可能です。
それに、インターネットを活用すれば、地域の顧客だけでなく、全国の人に利用してもらえる可能性がありますので、店舗だけで営業するよりもはるかに多くの売上を見込むことができるでしょう。
さらに、宣伝広告や集客においても、インターネットの存在は欠かせません。ホームページのほか、TwitterやInstagram、Facebook、LINEなどを駆使して見込み客を集めましょう。
6.利益率を重視する
買取業の成功には、「利益率を重視する」ことも意識しましょう。ただ、利益率を上げるために安く買い取って高く販売するだけでは、顧客から不満が出て評判が落ち、売上が下がる恐れがあります。
反対に、高く買い取って顧客に満足してもらえれば、宣伝や集客にさほど力を入れなくても、リピーターがついたり良い評判が広まったりして、結果的に利益率を上げることができます。また、買い取った商品をインターネットで直接顧客に販売すれば、古物市場などに出品するより高く売れ、利益率が上がります。
■買取業の始め方を知り、準備に取り掛かろう
今回は、買取業を始める際の準備や手順、必要な手続きや資金、そして、成功のポイントについて解説しました。開業までの流れをつかんだら、さっそく準備に取り掛かりましょう。まずは、自分はどのような買取業を展開したいのか、コンセプトの設定から始めます。コンセプトの設定は事業計画や資金計画、資金調達へとつながりますので、時間を作ってしっかり決めていきましょう。