ニコン「Z 8」を使い込んで、撮影性能の高さを改めて確認した落合カメラマン。特に気に入っているのが、シャッターボタン全押し前にさかのぼって記録できる「プリキャプチャ」機能ですが、いろいろなシーンで撮影するごとにちょっとした引っかかりを感じたそう。それは、同種のさかのぼり撮影機能の高さで定評のある「OM-1」の手応えや“撮れ高”が身にしみているからでした。
Z 8は24-200mmとの組み合わせが極上
ワタシのココロは今、千々に乱れておる。Z 8が期待通り・・・いや、想像以上にナイスな仕上がりだったことにクラッときつつも、果たしてここで清水の舞台から飛び降りてもよいものなのか、と。半歩踏み出せば、そのままストンと落ちるところにギリ立っているくせに、その半歩のステップにナゼか躊躇しているのだ。
しかし、Z 8をお迎えする環境は完璧に整っている。ワタシはすでに「NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR」を所有しているのだ。Z 8のキャラクターにまさしくドンピシャな同レンズを、ワタシはこれまで愛用のZ 50で使ってきた。それはそれで、とても快適な使用感が得られていたのだけど、「Z 8+24-200mm」のコンビは、当然のことながらそれ以上のマッチングの良さをブリブリッと発揮。もちろん、「Z 9+24-200mm」のコンビだって悪くはない。でも、「Z 8+24-200mm」は、それよりもはるかにしっくりくるコンビになってくれた。
Z 9には、やっぱりNIKKOR Z 24-120mm f/4 Sあたりがお似合いなんだろう。所有者の自己満足感もそっちの方が高いような気がする。でも、個人的には、Z 9+24-120mmより、24-200mmを装着しているZ 8の方が圧倒的にイイ写真を撮ってくれそうな気がしている。だって、気負わず身近に置いておけるのはどっち? と聞かれたならば、答えはやっぱり・・・ねぇ?
使い心地のよいプリキャプチャに潜んでいた欠点
それでも購入を躊躇しているのはナゼか? ワタシがそもそもZ 8推しなのはプリキャプチャの使い心地がよいからだ。シャッター全押しよりも過去にさかのぼって“写真が撮れる”同種の機能は、他社機の一部にも搭載があり、決して「Z専売」のモノではない。しかし、Zのそれは直感的な設定が可能である点と、何よりフルサイズセンサーの余裕を活かしつつさかのぼり撮影ができる点に多大なる魅力が備わると実感。本件は、Z 9で醸成された機能がZ 8に引き継がれているカタチなので当然、Z 9でも同じ効能を得ることはできるのだけど、ハンドリングが違う。実はけっこう「レリーズ待ち」が多くなるプリキャプチャ撮影では、カメラ自身が小型軽量であることは、かなり重要な要件なのだ。
でも、Z 8のプリキャプチャには、100パー万々歳ではなく引っかかるところがある。プリキャプチャ時のAFだ。おそらく、明確な制限が存在しているわけではないと思うのだが、Z 8やZ 9のプリキャプチャは、実質「動体にはAFが追従できない」手応えにほぼ終始するのが現実。つまり、せっかく「決定的瞬間」を捉えることができても、その仕上がりを連続写真として活かすことが難しいのである。これは同時に、理想的な瞬間として選び出すことのできるカット数(成功作として選択できる写真の数)に余裕を持てないことにも繋がる。秒間30コマとか60コマとか120コマも撮れるのに、「ピントが合っていない」ことを理由に使えるカットが1~2コマにとどまってしまう現実には、正直ちょっとツラいモノがある。
シャッター速度優先AE(露出モード「S」)で行うZ 8のプリキャプチャ撮影で、かつてのZ 9では見られなかったほどに「ガッツリ絞り込んで撮影しようとするそぶり」が見られるのは、ひょっとしたらその点をフォローする狙いがあるからなのかもしれない。例えば、かつてのZ 9で、1/4000秒のSモード撮影時に「1/4000秒 f4.5 ISO1000」というデータでプリキャプチャ撮影が行われるような条件で、Z 8は、ふと気づくと「1/4000秒 f16 ISO12800」なんていう露出設定でプリキャプチャ撮影しようとしていることがあったりする。最新ファームのZ 9は未確認なので、これがZ 8に特有の動作なのか、現状のZ 9を含めてのものなのかは分からない。しかし、かつてのZ 9では「超高感度設定を厭わぬ極端な絞り込み」を見せることはなかったように記憶している。
ご存じの通り、「S」モード時は、設定されているシャッター速度を基準に「なるべく低感度でカタをつけられる露出設定=開放F値に張り付くことも十分あり得る設定」で撮られることがほとんど。Z 8のプリキャプチャでは、その常識に囚われぬアグレッシブな絞り込みに遭遇することがあるのだ。
とはいえ、必ずそうなるわけではないので、本当のところは正直よく分かっていない。でも、プリキャプチャ時のAF追従、とりわけ撮影距離が近いとき(数センチのピント位置の違いが仕上がりを台無しにしかねない場面)のAF追従に不満が残るのは事実。ここが一番の引っかかりであり、躊躇の原因でもある。
OM-1のプロキャプチャーの仕上がりにはかなわない
そこまでシビアに捉えてしまう原因は明白だ。ワタシはOM SYSTEM「OM-1」の同種機能「プロキャプチャー」の使い心地を知っているからである。OM-1のプロキャプチャーは、レリーズ前後の動体に対する数センチレベルのAF追従にも抜かりがない。しかも、正確、かつ素早い被写体認識の実力をプロキャプチャー撮影時にも遺憾なく発揮しているように感じる。電子シャッター歪みの少なさもZ 9やZ 8と肩を並べる仕上がりであり、描写が不自然になることもない。カメラとしての手応え、EVFの視認性、プリキャプチャ設定のわかりやすさはニコン勢が圧倒的に上回るも、近接撮影時のプリキャプチャ(プロキャプチャー)に特化した使用感と仕上がり打率の高さは、OMが圧倒的に勝るのだ。まぁ、センサーサイズが全然違うので、最初からアウト・オブ・眼中の人には何一つ響きそうにない話ではあるのだけど・・・。
そんなOM-1を所有しているからこそ、ワタシはZ 8に本能的な憧れを抱きつつも、底知れぬ悩みの沼に足を取られているというわけだ。前述の通り、手元にはすがるような目でベストマッチな相手を求めているNIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VRがある。さらに、前編でも触れていたとおり、もしZ 8を手に入れるのならNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sの同時購入は必須であるとも考えている。しかも、そんなことを書いたあとに「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」のデビューが明らかになって大慌て(笑)。「Z 8を買いたい気持ち」が再び別のカタチで盛り上がりつつあるとともに、それを成就させるために必要な予算は、おのずと明らかになっている状態だ。
その一方で、すでにOM-1を所有していることを前提に、受注を再開したM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25× IS PROの購入に同等の資金を投げ込んだほうが我が「写真生活」にはよいのではないか・・・なんてことを考える余地があるのがヒジョーにマズい。とてもヤバい! このままでは有効な結論を出せず、けっきょく両方・・・いやいやいや、そんなことが許される社会情勢ではないだろう。
でも、優柔不断なワタシは、どちらか一方を選べといわれても、とてもじゃないけどそんなことは・・・。あれ? いつの間にか不倫上等のクズ夫みたいなキャラクターになりつつあるようだけど、うーん、もうちょっとゆっくり考えてみます・・・。