第36期竜王戦(主催:読売新聞社)は、決勝トーナメントの三浦弘行九段―佐藤康光九段戦が7月11日(火)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、三浦九段が155手で勝利。羽生善治九段の待つ準々決勝に進出しました。
佐藤流のダイレクト向かい飛車
振り駒が行われた本局は後手となった佐藤九段がダイレクト向かい飛車に組んで幕を開けました。両成りを狙う角打ちで乱戦に持ち込む権利があった先手の三浦九段ですが、ここは自玉の囲いを優先して穏やかな持久戦を選択。中央に腰掛けた右銀を6筋に移動させて玉頭位取りの好形を築きつつ戦いの時を待ちます。
ジリジリとした間合いの計り合いが続くなか、後手の佐藤九段が最初に動きを見せます。左銀を中央に繰り出して揺さぶりをかけてから先手陣深くに角を打ち込んだのが決断の一手。この角はすぐに取られて角金交換の駒損となりますが、代償として2筋の飛車先突破を確実なものにしました。
三浦九段が玉頭戦制する
佐藤九段の猛攻を受けた先手の三浦九段は右辺を明け渡し、双方の玉周辺での戦いに方針を切り替えます。8筋の歩を突き出した直後、追われた飛車を手順にこの地点に差し出したのが玉頭戦ならではの一手。駒損をいとわず拠点を生かしたこの一連の攻めがうまく、形勢の針は徐々に三浦九段の方に触れ始めました。
優位に立ってからの三浦九段の攻めは的確でした。盤上右方に逃げ出す佐藤玉を3筋に作った馬で包囲したのが「玉は包むように寄せよ」の格言通りの決め手。終局時刻は22時59分、最後は自玉の受けなしを認めた佐藤九段が駒を投じて熱戦に幕が下ろされました。勝った三浦九段は次局でベスト4入りをかけて羽生善治九段と顔を合わせます。
水留 啓(将棋情報局)
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