米労働省が2023年7月7日に発表した6月雇用統計の主な結果は、【1】非農業部門雇用者数20.9万人増、【2】失業率3.6%、【3】平均時給33.58ドル(前月比+0.4%、前年比+4.4%)という内容であった。
【1】雇用者数
6月の非農業部門雇用者数は前月比20.9万人増と市場予想の23.0万人増を下回った。政府部門で6.0万人増加した一方、民間部門は小売業の雇用減少などから14.9万人増にとどまり、2020年12月以来の低い伸びを記録。米雇用市場の基調的な動きを見る上で重視される非農業部門雇用者数の3カ月平均の増加幅は24.4万人となり、前月の24.7万人から小幅に縮小した。
【2】失業率
6月の失業率は3.6%となり、市場予想通りに前月から0.1ポイント低下した。一方、フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は、前月の6.7%から6.9%へと上昇した。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は4カ月連続で62.6%だった。なお、働き盛り世代(25-54歳)の参加率は83.5%に上昇して2002年5月以来の高水準となった。
【3】平均時給
6月の平均時給は33.58ドルと前月の修正値33.46ドルから0.12ドル増加した。伸び率は前月比+0.4%、前年比+4.4%で、市場予想は前月比+0.3%、前年比+4.2%だった。米労働者の賃金は順調に増加しており、平均時給の前年比上昇率は消費者物価指数(CPI、5月+4.0%)を上回っている。
まとめ
今回の米6月雇用統計では、非農業部門雇用者数が予想を下回ったことで雇用市場に息切れ感が漂い始めた一方、平均時給が予想を上回る伸びとなり、サービスインフレの根強さを窺わせた。多少、景気を減速させてでもインフレを抑え込む構えの米連邦準備制度理事会(FRB)としては、この雇用統計で改めて利上げの手を緩めるわけにはいかないことを確認したと見られる。FRBが7月25-26日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを再開する見通しが強まったと言えるだろう。そうした中、米6月雇用統計が発表された7日のNY市場では、長期債の価格が下落し金利は小幅に上昇した。株価は利上げ長期化観測を嫌気して小幅に下落。ドルは円や欧州通貨の上昇もあって比較的大きく下落した。米債・米株・米ドルのトリプル安であり、FRBの利上げ長期化によって米国の景気後退が早まるとの懸念を反映したようにも見える市場の動きであった。特に、ドル/円相場については米長期金利との相関を無視して下落したのが印象的だ。3月以降に強まったドル高・円安基調がひとまず終了した可能性も否定できない動きであり、当面の相場展開に注目したい。