半導体不足が緩和されたこともあり、トヨタは販売・生産ともに前年を超えて2022年は世界販売台数で3年連続トップに立っている。国内でも「コンパクト」や「ハイブリッド」といった各カテゴリーでライバルを圧倒しているが、昨年以降にモデルチェンジした人気車の「シエンタ」「ノア」「プリウス」も好評のようで、5月には「ヤリス」と「カローラ」を加えたこれら5台がトップ5を形成した。
今のところ、日産やホンダといったライバルメーカーに大きな動きがないため、気になるのは同じトヨタ同士での順位変動だろう。自販連(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会)が発表した2023年6月の販売台数をもとに、ランキング形式で人気車種の特長を紹介する。
【2023年6月】人気車種販売ランキング
順位 | ブランド通称名 | ブランド名 | 販売台数 |
---|---|---|---|
1 | トヨタ | ヤリス | 17,710 |
2 | トヨタ | カローラ | 12,336 |
3 | トヨタ | シエンタ | 11,909 |
4 | トヨタ | プリウス | 11,008 |
5 | トヨタ | ノア | 10,031 |
6 | トヨタ | ヴォクシー | 8,739 |
7 | 日産 | ノート | 8,535 |
8 | トヨタ | アクア | 8,330 |
9 | 日産 | セレナ | 7,898 |
10 | ホンダ | フリード | 7,248 |
※軽自動車および海外ブランド車を除く
1位:トヨタ「ヤリス」
「ヤリス」はトヨタを代表する5ナンバーサイズのコンパクトハッチバック。かつて国内では「ヴィッツ」の名称で販売されていたが、2020年に発売された現行の4代目から世界名称に統一された。トヨタの世界戦略車としてTNGAプラットフォームを採用し、車体の操縦安定性や安全性、省燃費性、デザインや価格を含め、自動車としてのトータルバランスに優れたモデルだ。
基本モデルは燃費とパワーを両立する3気筒1.5Lハイブリッド仕様のエンジンを備えたハッチバックスタイルだが、SUVブームにあわせてボディを3ナンバー化し、エクステリアも大幅に変更した「ヤリスクロス」も人気モデルとなった。そのほかにもメーカーの威信をかけた世界ラリー選手権で勝利するため、強靭な車体と200kW(272PS)の1.6Lターボエンジンを持つ「GRヤリス」というホットモデルも加えている。
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2位:トヨタ「カローラ」
「ヤリス」よりも長い55年もの歴史を持つトヨタ「カローラ」。国内ユーザーにはデビューから“庶民のファミリーカー”として知られていたが、海外でも知名度は高く、5,000万台という累計販売台数はギネスにも載ったほどのロングセラーだ。2018年に登場した現行モデルはすでに12代目になるが、TNGAプラットフォームを採用して3ナンバーサイズになり、デザインを含めたすべてが刷新された。
「カローラ」は伝統的なファミリーカーとしてのセダンが基本だが、ハッチバックやワゴンのほか、レース参戦を考慮したスポーティなホットモデルもラインナップに加えている。トヨタのスポーツモデルとして展開する「GR」版も市販され、水素燃料の耐久レースカーも登場して話題となった。そのほか「カローラ」の歴史でも初となるSUV版「カローラクロス」も好調だ。
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3位:トヨタ「シエンタ」
扱いやすい5ナンバーサイズのボディに3列7人乗りシートを持つ小型ミニバン。そのカテゴリーの人気モデルがトヨタの「シエンタ」。現行モデルは2022年8月に登場したが、デザインはスポーティだった2代目に比べると初代に近いフレンドリーなものに戻り、幅広い世代やライフスタイルに受け入れられている。
現行モデルではトヨタ自慢のTNGAプラットフォームを採用し、エンジンも新設計の1.5Lとハイブリッドのほか、「E-Four」という電気式4WD仕様も追加している。また、2代目では「FUNBASE」というモデルのみに設定していた2列5人乗り仕様も全グレードで選択可能になった。乗車人数は2名減るが、後席と荷室スペースが広くなることで快適性と利便性をアップさせている。
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4位:トヨタ「プリウス」
『21世紀に間に合いました』というキャッチコピーで1997年にデビューし、今や「ハイブリッドカー」の代名詞にもなったトヨタの「プリウス」。セダンやワゴンとも違い、独特のトライアングル・シルエットと呼ばれるデザインを確立させた2代目、3代目は爆発的なヒットを記録し、2009年は販売台数でトップに立ったほどだ。
4代目のデザインは賛否両論だったが、2023年に登場した5代目ではLEDヘッドライトを使ったトヨタの新しい顔“ハンマーヘッド”を採用し、ティーザー広告でも話題となった。TNGAプラットフォームも第二世代となり、2.0LのPHEVと1.8/2.0のHEVをそろえ、電動4WD「E-Four」を設定するなど、市販電動車のパイオニアとして着実な進化を続けている。
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5位:トヨタ「ノア」
「タウンエース」や「ライトエース」を先祖の持つトヨタの中型ミニバンが「ノア」。それまではエアロ仕様以外の標準モデルは全幅1,700mm以内の5ナンバーサイズを守ってきたが、2022年1月に登場した現行の4代目では「プリウス」や「カローラ」にも使われるTNGA GA-Cプラットフォームを採用し、ついに全グレードが3ナンバーサイズとなった。
3ナンバーサイズ化したボディは室内も広くなり、セカンドシートのロングスライドやアレンジ、ウォークスルーといったユーティリティ性能のほか、振動や騒音を抑える高剛性ボディによって乗り心地や静粛性も向上。エンジンは新型の1.8Lハイブリッドのほか、スポーティな10速シーケンシャルシフトマチックの2.0Lもそろえている。
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2023年6月もトップ10内にトヨタ車が8台もランクインする結果となった。2020年以降はコロナ禍や半導体不足など、自動車業界に大きな影響を及ぼす出来事が続いたが、それでもトヨタは積極的に人気車種のフルモデルチェンジを行ってきた。
小型ミニバン「シエンタ」や、ハイブリッドカー「プリウス」の場合、先代モデルでは賛否両論だったエクステリアも大きく修正され、より多くの人に好まれるデザインで登場した。中型ミニバンの「ノア」と「ヴォクシー」は先代のコンサバティブなイメージを受け継ぎつつも、最新のTNGAプラットフォームによる3ナンバーボディや新型エンジンなどで商品力を高めている。
6月の大きなニュースは、やはり「アルファード」と「ヴェルファイア」のモデルチェンジだろう。大型ミニバンでは一人勝ちとはいえ好き嫌いの分かれるデザインだったため、新型がどのようなデザインになるのか注目されていたが、先代の押し出しの強いフロントグリルを踏襲しつつも、ラグジュアリー色を高めたものになっている。
今のところ最近のトヨタのデザイン戦略は成功しているようだが、そうなってくるとライバルである日産やホンダも苦しいのではないだろうか。
※ブランド通称名とは、国産メーカーの同一車名を合算したものであり、海外生産車を含む ※上位台数は車名別の合算値となり、一部教習車などを含む(例:ブランド通称名 カローラはカローラシリーズ全車種と教習車を含む)