埼玉県の清和学園高校は6月27日、文部科学省の「マイスター・ハイスクール」対象校に認定されたことを受け、発足式および第一回運営委員会を実施した。同事業において、私立高校の採択は同校が全国初。CEOにはNTT東日本 埼玉事業部の村上達則氏が選任された。
清和学園高校のマイスター・ハイスクールとは?
埼玉県入間郡越生町にある清和学園高等学校(以下、清和学園高校)は、自動車科、調理科、普通科が設置された通信制の高等学校。通信制高校として全国唯一の、3級自動車整備士、調理師免許などの国家資格が取得可能な学校として知られる。2004年に開校し、生徒数は今年度320名。実技教育を中心に添え、実践力を身につけるための教育を行っている。
同校は6月7日、全国の私立高校・通信制高校として初めて、文部科学省が募集する「マイスター・ハイスクール (次世代地域産業人材育成刷新事業)」の令和5年度対象校に認定された。
マイスター・ハイスクール事業は、アフターコロナ社会における産業構造の変化に向け、職業教育を主とする学科を設置する中学校・高校、産業界、地方公共団体が一体となり、地域の継続的な成長、最先端の職業人材育成、教育課程等の研究開発を行う取り組みだ。NTT東日本をはじめとした支援企業、学術機関等は、清和学園と連携した授業カリキュラムを提供することで、生徒の最新技術習得と課題発見・解決力を養う。
関連する授業は、1年次に週1コマ、2年次以降は2~3コマ程度を予定。自動車科ではConnected Carなどの最新技術や自動車産業動向、調理科では栄養学・漢方学と食の研究、食堂経営などの内容を扱う。また両科共通で、ドローンやロボット、農業ICTなどを活用した地域創生、XRやクラウド、キッティング、サイバーセキュリティなどの最新デジタル技術、地域資源を活用したビジネスプラン策定やファイナンス、WebやSNS等のコンセプチュアルスキルの授業も実施する。
生徒の学びと地域課題の解決を目指す
このマイスター・ハイスクール事業の発足式が、6月27日に清和学園高校で行われた。清和学園高校の校長を務める一川高一氏は、事業の発足について次のように挨拶を行う。
「越生町は埼玉県随一のウメ・ユズ生産地です。また観光振興策として全国初の『ハイキングのまち』を宣言しました。こういった地域の特産品や自然環境を維持・継続することが大きな課題と言えます。このたびの事業では、NTT東日本や自治体、大学機関等と連携し、生徒は先端技術への理解を深めるとともに、地域課題の解決に向けた活動を進めていくことになります」(清和学園高校 一川氏)
同時に開催された第一回運営委員会では、事業概要と事業計画が発表されるとともに、マイスター・ハイスクールCEOの選出を実施。CEOとして、NTT東日本 埼玉事業部 ビジネスイノベーション部の村上達則氏が選任された。参与教頭職に当たるテクニカル・スーパーバイザーとして、同校で3年間勤務する。
「清和学園高校の生徒は、すでに技術的な教育を十分に受けています。マイスター・ハイスクールに関連する授業では、これに加えて生徒が自ら考え、今後の社会変化に対応できるようなスキルを身につけてもらえるようにしたいと思っています」(NTT東日本 村上氏)
NTT東日本としても初の取り組み
産官学金報の連携によって進められるマイスター・ハイスクール。認定までの取り組みを先導した清和学園高校 教育部長の黒岩貴一氏は、採択を受けるために160枚以上の資料・原稿を作成したという。同校は全日制高校に通えない生徒の受け皿という側面も持っているだけに、黒岩氏は強い思いで事業を進めている。
「当校は発達障害や学習障害をお持ちの方が社会で生きていけるよう、『特別支援学校ではなく高等学校の学びを』ということで、2004年に通信制高校として開校しました。マイスター・ハイスクール事業は3年間となりますので、3年後には当校だけで自走できるよう、我々も学ばねばなりません。現在はクラウドファンディングで寄付を募りつつ、自動車科と調理科で支援者へのリターンや地域貢献が行える仕組み作りを考えています」(清和学園高等学校 黒岩氏)
この熱意を受け、清和学園高校とともに事業の中心となったのがNTT東日本 埼玉事業部だ。マイスター・ハイスクールに関する取り組みは、NTT東日本でも初だという。
NTT東日本 埼玉西支店長の丸山猛氏は、「NTT東日本はソーシャルイノベーション企業として、地域のお困りごとをDXで解決するという事業を拡大しています。今回の事業は、まさに当社のビジョンと合致するものです。生徒のみなさん、ご協力いただいている企業のみなさんと一緒に、越生町を盛り上げるための施策を盛り上げていきたいと思います」と、取り組みに対する抱負を語った。