藤井聡太王位に佐々木大地七段が挑戦する伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は、7月7日(金)・8日(土)に愛知県豊田市の「豊田市能楽堂」で開幕。対局の結果、横歩取りの力戦を97手で制した藤井王位が王位4連覇に向け好スタートを切りました。
横歩取りの力戦形
振り駒が行われた開幕局は先手となった藤井王位が飛車先の歩を突いてスタート。これを見た後手の佐々木七段が角道を開けて角換わりを避けたのち、本局の戦型は横歩取りに落ち着きました。佐々木七段は飛車先の歩交換を保留したまま駒組みを進めることで青野流と呼ばれる最新定跡形を避ける選択を採ります。
盤上は序盤早々に定跡形を外れ、1日目の午前中から長考合戦が始まっています。藤井王位の打った自陣角は後手から同筋に角を打つ手を防ぐ意味ですが、それ以外の働きに乏しいため善悪は微妙。佐々木七段は角を手持ちに残していることを主張に、自然な駒組を進めます。
藤井王位が押し返し先勝
佐々木七段の記した封じ手が開封されて2日目の戦いが始まります。両者手探りの押し引きが続くなか、佐々木七段による桂頭を狙った飛車寄りで局面が動き出しました。棒銀の要領での攻めを見せられた藤井王位が「動いていきたかったが具体的な手がわからなかった」と振り返るように、局面は徐々に佐々木七段のほうに傾きます。
ともに持ち時間が1時間を切っても長い中盤戦は続きますが、ここで後手の佐々木七段に後悔の一手が出ます。5筋の歩を突いて歩交換を狙ったのがそれで、これによって先手の押さえ込みを誘発することになりました。幸便に銀を繰り出すことに成功した藤井王位は手順に垂れ歩を放って後手陣攻略のきっかけを作ります。
苦境に立った佐々木七段は手筋を駆使して勝負と迫りますが、藤井王位の対応は冷静でした。終局時刻は18時17分、攻防ともに見込みなしと認めた佐々木七段が投了。勝った藤井王位は防衛に向け好スタートを切りました。敗れた佐々木七段は「2日目に細かいミスが出てしまったことが反省点」と振り返りました。
水留 啓(将棋情報局)
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