軽くて使い勝手の良い14型ノートPC、富士通クライアントコンピューティングの「FMV LIFEBOOK UH90/H1(以下、UH90/H1)」をレビューした。最軽量モデル「FMV LIFEBOOK UH-X」に注ぎ込まれた軽量化のノウハウに大容量バッテリーと高性能CPUを組み合わせ、持ち運びが容易なハイパフォーマンスなモバイルPCに仕上がっている。特に画面の見やすさとキーボードの打ちやすさは想像した以上だった。
軽量かつ長時間使え、そのうえ高性能
軽くて持ち運びやすいことを重視してノートPCを探すとき、富士通クライアントコンピューティング(以下、FCCL)のFMV LIFEBOOK UHシリーズは必ず候補に挙がるだろう。
13.3型で世界最軽量をうたう初代モデルが登場したのは2017年のこと。それ以来、世界最軽量の座を明け渡すことなく(発表タイミングなどでいっとき譲ったことはある)、2020年モデル「UH-X/E3」では約634gを達成。最新モデルでは本体サイズをほとんど変えずに、液晶ディスプレイのさらなるナローベゼル化で画面サイズを14.0型に拡大した。最軽量モデル「UH-X/H1」の重さは約689gだ。
とはいえ、UH-X/H1には泣きどころもある。バッテリー駆動時間だ。スペックシートの駆動時間は約11.0時間と十分なように見えるが、実使用時は公称値から割り引いて見なければ参考にならない。外に持ち出して丸一日使おうとすると、ACアダプターなしではやはり不安になる。ACアダプターを持ち歩けばそのぶん重量がかさむため、せっかくの世界最軽量が相殺されてしまう。
UH-X/H1の軽量性を生かしながら、一日の仕事にしっかり利用できる性能とバッテリー駆動時間を備えたモデル、それがUH90/H1だ。
UH90/H1は最軽量のUH-X/H1よりは重たいものの、約858gは同じクラスのノートPCの中ではまだまだ軽い。バッテリー容量はリチウムイオンの64Wh。駆動時間はスペック値で約29.5時間となっている。
軽ければ「それだけで良い」としない、あくまで実用性を重視しながら軽さを追求したいユーザーの理想的なノートPCともなるだろう。実際にリュックに入れて持ち運んで使ってみると、重さはほとんど気にならない。ノートPCは1kgを切ると持ち運ぶときの「重さ感」がずいぶん変わるが、UH90/H1は一日中持ち歩いても苦にもならなかった。
これまでのUHシリーズとの大きな違いとして、画面サイズのほかに、標準サイズのSDカードスロットがmicroSDカードスロットになったことと、本体内部の冷却ファンがデュアルファンになったことが挙げられる。microSDカードスロットへの変更はUH-X/H1も同様だが、デュアルファンはUH90/H1のみの採用だ。
UH-X/H1のCPUはIntel Core i7-1355Uだが、UH90/H1ではよりパワフルなIntel Core i7-1360Pを搭載している。Core i7-1360PのTDPは最大28W、処理能力重視のP-core(Performance-cores)が4基、省電力性の高いE-core(Efficient-cores)が8基で構成され、処理できるスレッド数は16となる。このCPUパワーを発揮するために、本体内で発生する熱を効率よく排気するデュアルファンが導入されたわけだ。
画面のアスペクト比が16:10になって縦長の文書が読みやすくなった
本体サイズは幅308.8×奥行き209×高さ15.8~17.3mm、重さは先述の通り約858gとなる。メモリは16GB(LPDDR5-6400)、ストレージはSSD 約512GB(PCIe 4.0 x4 NVMe)、グラフィックスはCPU統合のIris Xe Graphicsだ。
14.0型のノングレア液晶ディスプレイは、アスペクト比16:10の解像度1,920×1,200ドットとなり、従来モデル以上のナローベゼル化もあってかなり見やすくなった。筆者は4:3でPCに慣れたクチなので、16:9よりも明らかに落ち着いて画面を見られる。WebブラウザやWordといった縦長の文書は表示スペースが単純に増えるし、複数ウィンドウを開くときもレイアウトしやすい。
4辺のナローベゼルは、上部が6.6mm、左右はそれぞれ3.2mm、下部は3.4mmだ。液晶パネルの強度が犠牲にならぬよう、カーボン素材の天面カバー側で液晶パネルを保持する設計に変更された。なお、底面カバーはマグネシウムリチウム合金で、キーボード面のカバーはマグネシウム合金を採用している。
特筆したいのはバッテリー持ちの良さだ。スペックベースで29.5時間の連続駆動が可能であり、一日持ち歩いてもバッテリー不足の不安がない。ACアダプターを一緒に持ち歩かないと電源が不安になるようでは、本体が軽くても玉に瑕(きず)――と考えるモバイルユーザーには、最適解となるバランスだ。
実際にバッテリー持ちを検証するために、電力消費の大きいYouTubeの4K動画を連続再生させてみたが、12時間半ほどかけて電源が落ちるまでストレスなく再生し続けた。
キーボードが入力しやすいところも美点に挙げたい。特に右下のカーソルキーが独立しているデザインがいい。右Shiftキーを押すつもりでカーソルキーを押すことがないため、入力中にカーソルが意図しない動きをしなくて済む。デザインについてはひらがなの刻印がないのもスマートで好印象だ。
キーピッチは約19mm、キーストロークは約1.5mm。奥にいくほどキーが微妙に手前に傾いていて、指に吸い付くような打ちやすさがある。
キーボードはバックライト付きで暗いところでも確認しやすい。もっとも、キーボードバックライトは好みがわかれると思う。筆者は数字や記号もキーの位置は指が覚えていて、目視しないほうが速く打てる。このため、バッテリーを消費するキーボードバックライトは基本的にオフ(消灯)で使う。ちなみにFCCLの多くのノートPCは、バックライトの明るさや消灯を「Fn」+「スペースキー」で操作する。
電源ボタンは指紋認証センサーを兼ねる。直販モデルではWindows Helloの顔認証と使い分けられるモデルも選択可能だ。ここは店頭モデルでも標準対応して良かったのではないかと思う。
207万画素のWebカメラはフルHD撮影に対応。従来モデルはHDカメラだったのでセンサーサイズが大きくなっているが、カバーやプライバシーシャッターの構造を見直すことでナローベゼルにおさめている。
豊富なインタフェースがさらに充実、Thunderbolt 4にも対応
UHシリーズの伝統的な特長に、豊富なインタフェース類がある。昨今はUSBコネクタをType-Cのみに割り切るモデルも増えているが、UH90/H1はType-AやHDMI、有線LANコネクタを標準で備えている。また、Type-CコネクタはThunderbolt 4にも対応している。
前述の通り、従来のSDメモリーカードスロットはmicroSDメモリーカードスロットに変わった。デジタルカメラの画像をSDメモリーカード経由でコピーすることが多いユーザーは注意が必要だ。
ビジネスシーンに求められる高い描画パフォーマンスを実感
UH90/H1の主なスペックは以下の通り。
- 製品名:FMV LIFEBOOK UH90/H1
- CPU:Intel Core i7-1360P
- メモリ:16GB LPDDR5-6400
- ストレージ:SSD 512GB PCIe 4.0 x4 NVMe
- 光学ドライブ:なし
- グラフィックス:Intel Iris Xe Graphics(CPU内蔵)
- ディスプレイ:14.0型(1,920×1,200ドット、非光沢)
- ネットワーク:1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T、IEEE 802.11ax/ac/a/b/g/n準拠(Wi-Fi 6E)、Bluetooth 5.1
- サイズ/重さ:幅308.8×奥行き209×高さ15.8~17.3mm/約858g
- OS:Windows 11 Home 64ビット版
見過ごしがちだが、OSはUH-X/H1がWindows 11 Pro 64ビット版なのに対して、UH90/H1はWindows 11 Home 64ビット版となっている。Windows 11 Proが必要な場合は注意したい(Microsoft Storeから13,824円でアップグレード可能。2023年7月10日時点)。なお、Microsoft Office Home & Business 2021を始めとするプリインストールソフトは、UH-X/H1とUH90/H1で同じ内容になっている。
ここでCPUとグラフィック周りの簡単なベンチマークテストを紹介しひょう。比較対象として、2022年7月に発売され13.3型として世界最軽量の634gをマークした「FMV LIFEBOOK UH-X/G2」のスコアを併記する。UH-X/G2はCPUに10コア12スレッドのCore i7-1255U、メモリが16GB(LPDDR4X-42660)、グラフィックスがCPU統合のIris Xe Graphicsとなっている。
UH90/H | UH-X/G2 | |
---|---|---|
PCMark 10 | 5733 | 5368 |
PCMark 10 Essential | 10103 | 10436 |
PCMark 10 Productivity | 7857 | 7371 |
PCMark 10 Digital Content Creation | 5840 | 5460 |
CINEBENCH R23 CPU | 9638 | 7421 |
CINEBENCH R23 CPU(single) | 1820 | 1595 |
CrystalDiskMark 8.0.4 x64 Seq1M Q8T1 Read | 3623.57 | 3594.53 |
CrystalDiskMark 8.0.4 x64 Seq1M Q8T1 Write | 3336.16 | 3349.00 |
3DMark Night Raid | 18759 | 16331 |
FFXIV:漆黒のヴィランズ(最高品質) | 4038「普通」 | 4167「快適」 |
アプリケーションの起動速度、ビデオ会議の処理性能、Webブラウジングの処理性能を測る「PCMark 10 Essential」や、3Dゲーム性能を測る「FFXIV:漆黒のヴィランズ」ではUH-X/G2にわずかに及ばなかったが、ほかはおおむね上回った。
特にCGをCPUで描画することでCPUの性能を見る「CINEBENCH」では2割以上のパフォーマンスの差を見て取れる。グラフィック性能を診断する「3DMark Night Raid」の数値も良好だ。
UH90/H1の高い基本性能やバッテリー持続時間は、ZoomやTeamsなどのWeb会議の機会が多いユーザーには特に注目したいポイントだ。ビデオを使ったWeb会議は、意外とパソコンの性能が必要で電気を食う。出先でWi-Fiを利用して参加する場合は、通信でもバッテリーを消費し、バッテリー残量はみるみる減っていく。
UH90/H1ではビデオ会議に関わる「PCMark 10 Essential」の数値が伸びなかった点がやや気になるが、バッテリー容量の大きさはこれを補って余りある魅力だ。もしビデオの処理が重ければ画質を下げたり、オフにしたり、工夫の余地がある。UH90/H1なら外出先で数時間のWeb会議に突然参加することになっても、余裕を持って対処できるに違いない。
なぜここまでできるのか! 自然もド派手も可能なAIメイクアプリ
ビデオ会議に関しては、おもしろい機能としてオンラインミーティング用のAIメイクアップアプリ「Umore」(プリインストール)にも触れておきたい。これはWebカメラを利用するアプリケーションと連動し、カメラに映る自分の顔を補正するアプリ。内蔵のWebカメラだけでなく、PCに接続したカメラでも機能する。ZoomやTeamsなど会議アプリを選ばず使用可能だ。
女性はもちろん、男性でも使いでがある。操作は簡単で5分も触れば慣れるだろう。「ナチュラル」と「しっかりメイク」の2モードあり、ナチュラルはかなり大人しく、しっかりメイクのほうが効果ははっきりわかる。
肌荒れを抑えて血色を良くしたり、眉を整えたり、小顔にしたり、リップに色を付けたり、効果の強弱も含めて自分の顔をいろいろ調整してみると良い。メイクを直す時間が惜しいとき、テレワーク中でそもそもメイクしたくないとき、寝起きで顔や目のむくみが気になるといったときにも有効だ。
気安く話せる相手なら思い切って変なメイクにしてみても、マンネリ感を抑えられておもしろく使えるかもしれない。
Web会議向けとしては、従来モデルも搭載していたノイズキャンセリング機能も優秀だ。相手から届く声からノイズを取り除いて聞きやすく再生するスピーカーノイズキャンセリングに加えて、自分の声からノイズを除去して送り出すマイクノイズキャンセリングも備えている。打ち合わせスペースなど周囲が多少ざわついていても、音声を快適にやり取りできるのはうれしい。キーボードを叩く音も小さくなっていることがわかり、筆者ならオンライン取材などに役立ちそうだ。
UH90/H1は、軽量性と長時間駆動、さらにはCore i7-1360Pのパワー、見やすい16:10の14.0型ディスプレイ、打ちやすいキーボードなど、見どころの多い製品だ。大手量販店サイトで230,000円前後(ポイント還元を除く。2023年7月10日時点)と、フラグシップモデルらしい高価格帯ではあるが、日々ノートPCを持ち運んで出先や客先で広げる機会の多いビジネスマンなら、愛着を持って長く使えるに違いない。