椀子ワイナリーの「SDGsツアー」の中身が濃い-作り手のガイドで畑を歩き、限定ワインのテイスティングも

日本でのワイン造りが145周年を迎えるメルシャンが、長野県上田市の「シャトー・メルシャン椀子ワイナリー」で、SDGsをテーマにした新たなツアーを開始します。これは同社が取り組んでいる“サステナブルなワイン造り”を、五感で体験してもらうというもの。日本で唯一3年連続で、ワインツーリズムに取り組む世界最高のワイナリーを選出するアワードに選出された同ワイナリーの、新たな目玉となるでしょうか。

広大なブドウ畑から望む椀子ワイナリー

360度を広大なブドウ畑に囲まれた「椀子ワイナリー」。そのブドウ畑が、東京ドーム約6個分の広さを有する椀子ヴィンヤードです。かつて養蚕のための桑畑が広がっていた、ここ丸子地区陣馬台地は、生産者の高齢化にともない、1990年代には遊休荒廃化していました。同社は、陽当たりが良く雨が少なく日較差の大きい、ワイン用ブドウ栽培に適した気候風土のこの土地を、地元の人々の協力を得ながら、垣根仕立て・草生栽培のブドウ畑に転換し、2003年に椀子ヴィンヤードを開園しました。

(右)メルシャン代取締役社長長林道生さん、(左)シャトー・メルシャンゼネラルマネージャー小林弘憲さん

そんなブドウ畑を望む小高い丘の上に椀子ワイナリーが誕生したのが2019年。シラーやシャルドネなどの国際品種を栽培、醸造し、海外コンクールでの受賞実績も多数。さらにワインツーリズムに取り組む世界最高のワイナリーを選出するアワード「ワールドベストヴィンヤード」において、直近の2022年まで3年連続で日本のワイナリーでは唯一選出されています。上田市に初のワイナリーができたことで、ワインと景観を求めて訪れる観光客も増加。生産地の文化や歴史、グルメなどを複合的に楽しむ“ワインツーリズム”がもたらす地域活性効果に、行政も期待を寄せています。

陽当たりが良く、雨が少なく、日較差の大きい気候風土は、ワイン用ブドウ栽培に適している

椀子ヴィンヤードでは、より良いワインを造るために定期的に下草を刈るといった農作業が、良質で広大な草原を回復し、維持することに寄与。繁殖力の強い植物が優勢になることなく、在来種や希少種などの多様な植物が生育できる草原環境を作り出しており、2014年から実施している生態系調査では、絶命危惧種を含む昆虫168種、植物289種が確認されているそう。今年1月には、環境省が推進する「生物多様性のための30by30アライアンス」で、自然共生サイトの認定相当に選定されています。

ここはヴィンヤード近くの塩川小学校の子どもたちが実際に、じゃがいも栽培やぶどうの収穫、植樹をする“学びの場”でもあり、希少種の蝶「オオルリシジミ」の唯一の食草クララをはじめ、多様な植物や昆虫たちを目にすることも。

クララを増やす活動には塩川小学校の生徒も参加、再生場所ではクララを多く見ることができるように

3年生の生徒たちが栽培しているじゃがいも畑

メルシャン創業当時から引き継いでいるDNAが、“地域社会に根差した経営活動”にあると、同社代表取締役社長の長林道生さん。「ワインは農業であり、ワインを通じて地域社会と共生し、産地や地域の課題解決をはかることは、メルシャンのCSV事業そのものです。休耕地を耕すことは自然保全と生物多様性の保持につながり、子どもたちの食育の場や地域の雇用、人材育成にもつながります」と、同社のサステナビリティ戦略について語り、ビジョンに掲げる「日本を世界の名醸地に」の実現に向けた取り組みのひとつとして、椀子ワイナリーの新たなツアー「SDGsツアー」が発表されました。

ブドウの残滓は畑で発酵させて堆肥化している

このツアーは、同社のワインメーカーがガイド役をつとめ、約1時間をかけてヴィンヤードを実際に歩いて回り、草生栽培・垣根仕立てのブドウ畑化による生物多様性への取り組みや循環型農業への取り組み、重力を利用して果実やワインを移動させる「グラビティフロー」をはじめとする“持続可能なワイン造り”を体感するというもの。

「シャトー・メルシャン椀子オムニス」(赤)や「シャトー・メルシャン椀子シャルドネ」(白)など、おすすめのワイナリー限定品を含む計6種がテイスティングできる

ワイン畑の中で、世界のコンクールで受賞している高品質なワイン造りへの想いを直に聞くことができるのも、作り手が自ら案内するガイドツアーならでは。たっぷりと畑を見て歩いた後はお待ちかね、ワイナリーで椀子の気候風土を表現する定番ワインをはじめ、限定品を含む6種をテイスティング……と、なんとも濃密で贅沢な内容となっています。