先週はWindows関連の動きが少なく、取り上げる話題に窮するかと思っていたが、Microsoftは現地時間2023年7月5日に「Windows 365 Frontline」を発表した。Windows 365はクラウドで動作するWindows 10およびWindows 11の仮想マシンだ。中小企業向けのWindows 365 Business、大企業向けのWindows 365 Enterprise、政府向けのWindows 365 Government(日本では未提供)が存在し、ここにWindows 365 Frontlineが加わった。
Microsoftは公式ブログにて、Windows 365 Frontlineはシフト制従業員とパートタイム勤務の従業員が使用するクラウドPCだと説明しており、短期の勤務時間利用を想定したエディションとなる。確かに、現場のデジタル化を推進するためにスマホアプリを開発・用意するよりも、組織の基幹システムへアクセスが容易なWindowsを用いるほうが自然だろう。
または現場に安価なノートPCを用意してたとしても、Microsoft Intuneによるデバイス管理やセキュリティ対策が必要になる。それならOSもクラウドで実行して、各種管理を簡素化しようというのは自然な流れだ。
Windows 365 Frontlineは、1ライセンスで3台のクラウドPCを利用可能。これなら各従業員の増減に合わせてライセンスを増減すればよい。テナントレベルでも運用できるため、各従業員に利用権を個別割り当てする必要もなく、システム管理者の負担軽減にもつながるだろう。
物理デバイスでWindowsを利用する際に欠かせない更新プログラムの管理も、Windows 365 Frontline向けのWindows Updateで勤務時間外に適用する仕組みを用意している。Microsoftは「コールセンターやヘルプデスクなど現場の受け付けスタッフ向けソリューション」と述べつつ、今後数カ月で各業務向けに調整した機能実装を予定しているようだ。
気になる価格は、最小構成(vCPU×2、4GBメモリ、64GBストレージ)で月額6,560円。1ライセンスで3台のクラウドPCなので、1台あたりの月額は約2,187円だ。Windows 365 Business Basicが1ユーザーあたり月額4,840円であることを考えると、だいぶ安い(提供する機能や構成が異なるので単純に比較はできないが)。
もちろんWindows 365 Frontlineは一般ユーザーも利用可能だが、Windows 10およびWindows 11のEnterprise、Microsoft Intune、Azure AD P1のライセンスが必要になるため、安価なクラウドPCとして利用するのは難しい。やはり業務にPCが必要で利用時間が限定される従業員を持つ企業向けである。
Microsoftは2023年4月に実機の電源投入後からクラウドPCを起動する「Windows 365 Boot」などいくつかの機能を発表し、Windowsのクラウド化を推し進めている。消費者レベルでは今日明日に何かが変わることはないのだが、Microsoftは一般ユーザー向けWindowsのクラウドシフトを計画しているとの話も聞こえてきた。この動きはMicrosoft Office → Microsoft 365を見れば納得できるだろう。
これまでPCは、必要に応じて独自拡張や性能強化、最新マシンへと買い換えることが常だった。しかし、多くの「標準的なPCで十分」と考えるユーザーにとって、Windowsのクラウドシフトは恩恵かもしれない。